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忘れるための薬 [とぼけた話]

全てを忘れる薬を作った博士。
試しに飲んでみた。

「どうです?博士。実験は成功ですか?」

「はて?わたしは何をしていたのかな?」

どうやら実験は成功のようだ。

「よかった。成功ですね。じゃあ本格的に作りましょう」

「いや…薬の作り方を忘れてしまった」

というわけで、今度は全てを思い出す薬を作った。
試しに飲んでみた。

「どうです?博士。思い出しましたか?」

「思い出した!3年前の3月4日に君に貸した50円をまだ返してもらってないぞ。それから6年前の10月22日に君に貸した本を返してもらってないぞ」

「…またどうでもいいことを思い出しましたね。まあ、とにかく実験は成功ですね。では忘れる薬の作り方も思い出したのですね」

「うん、思い出した。しかし私にはもう薬は必要ない。だから作らない」

「なぜです?」

「忘れる薬を作ろうと思った理由を思い出したのだ」

「理由って何です?」

「うん、私は君の奥さんに恋をしていたんだ。辛い辛い恋だった。
だからそれを忘れる為に、薬の開発に取り組んだのだ。
しかしもう必要ない。だって君たちは去年離婚したんだから。
もう忘れなくていいんだ。だから薬はいらない」

「そんな!博士、お願いです。全てを忘れる薬を作ってください、わたしのために。
元妻のことが忘れられなくて辛いんです」

「いやいや、離婚したことまで忘れられては困る。なにしろ彼女は私ともうすぐ再婚するんだから」

「えええ??」

ますます全てを忘れたい助手くんだったが、思い出と共に生きていくのもいいのかも…と溜息をつくのであった。

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コメント 4

めりー

この話を読む前に このカテゴリーの[とぼけた話]で
なぜか私のツボに入りました(笑)^^
>なにしろ彼女は私ともうすぐ再婚するんだから
あはは^∇^ おもしろい♪ ^^b
by めりー (2010-03-23 20:40) 

リンさん

<めりーさん>
カテゴリーって、難しいときがありますよね。
何に入るんだろう、この話って悩んだときはこれにしちゃいます。
楽しんでもらえてよかった^^
by リンさん (2010-03-27 21:09) 

愛輝

助手さんに幸あれ、ですねw

博士のうっかりさん?が楽しかったです。
by 愛輝 (2010-03-29 22:25) 

リンさん

<愛輝さん>
こんな薬を作っちゃう人なのに、博士は本当にうっかりさん、ですね。

by リンさん (2010-03-31 21:48) 

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