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子供過保護法 [風刺]

「いってきま~す」
太郎は元気に家を出た。

「こちらA地点、太郎くん、家を出ました」
「了解」

「こちらB地点、太郎くん、薬局の角を曲がりました」
「了解」

「こちらC地点、太郎くん、犬が怖くて立ち止まりました。どうしますか?」
「つないであるのか?」
「はい。頑丈な鎖でつながれています」
「なら問題ない。動物とのふれあいも大切だ。そのまま見守るように」
「了解」

「こちらD地点、太郎くん、大通りに出ます」
「車両は通行止めにしてあるのか?」
「はい、抜かりありません」

「こちらE地点、太郎くん、小学校の門の前にやってきました。
先生が迎えに来ました」
「間違えなく先生だな」
「はい、認識装置で確認しました」
「よし!任務修了だ。ご苦労であった」

******************

これは近未来の話。
子供手当てを駆使しても、少子化の波は止まらず、政府はついに新しい法案を定めた。

『子供過保護法』である。
今いる子供を危険から守るというもので、学校の行き帰りを大人が見張ることになった。

ただし子供の自主性を損なわないために、「はじめてのおつかい」方式をとることになった。
つまり、通行人や道路工事の作業員になりすまし、子供を見守るのである。

もちろん学校にも、用務員になりすましたSPが配備され、あらゆる場所で子供たちは守られている。

*************

「あなた、太郎は無事に学校に着いたらしいわ。今ケイタイにメールが来たわ」

「子供過保護法が出来てから子供の事故が減ってるみたいだな」

「そうなの。本当に助かるわ。ねえあなた、今度ゆっくり旅行でも行かない?」

「そうだな。まとまった休みがとれたら、海外にでも行くか」

「いいわね」

「だけど太郎は学校休めないだろう」

「太郎は大丈夫よ。だってよその大人が見ていてくれるもの」

「それもそうだな」

子供過保護法は、大人も過保護にしていた。

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コメント 8

ぼんぼちぼちぼち

近未来に現実におこりそうなだけに シニカルな笑いを感じやした。
by ぼんぼちぼちぼち (2010-04-27 19:50) 

めりー

一番最後に ぴりっときた感じです☆^^
by めりー (2010-04-27 22:37) 

シュシュ

太郎君が大きくなって彼女ができたらメールされちゃうのかな(笑)
by シュシュ (2010-04-28 20:34) 

リンさん

<ぼんぼちぼちぼちさん>
ありがとうございます。
こんな法則が出来たら、ゆとり教育同様、失敗で終わりそうですね(笑)
by リンさん (2010-04-29 21:22) 

リンさん

<めりーさん>
最後にちょっと、皮肉を込めてみました(^0^)
by リンさん (2010-04-29 21:23) 

リンさん

<シュシュさん>
「太郎くん、ただいま告白しました」
なんて、報告されちゃったりしてね。(笑)

by リンさん (2010-04-29 21:26) 

津々井茜

なんだか本当にありそうですよね。

アメリカなんかでは14歳以下の子供をひとりで家に置いておくと「虐待」でしょ?
14歳にもなっていたら、ひとりにしてくれ~ほっといてくれ~って言いそうですのにね。

そのうち日本もそうなってきそうで怖いです。
事実はSFよりも奇なり、って。


by 津々井茜 (2011-12-20 16:14) 

リンさん

<津々井茜さん>
ありがとうございます。
私もこれ、久しぶりに読みました。
こんなの書いてたんだな~(笑)

へえ、アメリカってそうなんですか。
治安が悪いからでしょうかね。
日本も、昔みたいに暗くなるまで遊ぶ子供が減りましたね。
私も毎日バス停まで娘を迎えに行ってます。
by リンさん (2011-12-20 18:39) 

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