霊感レストラン [ミステリー?]
仕事に行き詰った俺は、深夜のファミリーレストランに行った。
「いらっしゃいませ。ようこそ〇〇へ」
深夜なのに、ずいぶん若い女の子が働いていた。
「お客様、2名様ですか?」
「は?ひとりだけど?」俺は思わず後ろを見た。もちろん誰もいない。
「あ、すみません。また見えちゃったみたい」
な…何が? 何が見えるの?
「お席にご案内しま~す」
若いウェイトレスは、俺を席に案内すると、そそくさと奥に消えた。
いったい何が見えたんだ。
水を持ってきたのは、さっきと違うウェイトレスだった。
やはり若い女の子だ。
ウェイトレスは水を2つ持ってきた。
「あの、俺ひとりなんだけど」
「あ、すみません。いやだわ、また見えちゃった」
な…何が?何が見えるって言うんだ。
「ご注文が決まりましたらボタンでお知らせ下さい」
ウェイトレスは早口で言うと、奥へ消えた。
思わず、前の席を見た。もちろん誰もいなかった。
ボタンを押すと、また違うウェイトレスが来た。こんな深夜に何人いるんだ?
「海老ドリアとドリンクバー」
ウェイトレスは、機械に注文を打ち込みながら復唱した。
「海老ドリアとドリンクバーと生ビールでございますね」
「生ビールはたのんでないけど」
「でも、お連れさまが… あ、そうか、また見えちゃったんだわ。すみません」
だから、何が?何がいるの?
ウェイトレスは、「少々お待ち下さい」と言って奥に消えた。
ドリンクバーでコーヒーを淹れて戻ると、また別のウェイトレスが俺の席の前に立っていた。
「何?」
「あ、あの、お連れさまが喫煙席に変えて欲しいとおっしゃるのですが」
「連れはいないよ。ひとりなんだ」
「あら、いやだ、また見えちゃったわ。失礼しました」
ウェイトレスは顔を赤くして奥に消えた。
間違いなく何かがいるんだろう。俺の前の席に。
****
コーヒーを3杯飲んでも、海老ドリアは来なかった。
催促しようと周りを見ると、店長らしき男がこちらに向かって歩いてきた。
「いらっしゃいませ」
「海老ドリアがまだなんだけど」と言うと、店長は慌てて注文票を見た。
「失礼しました。海老ドリアでございますね。ただいまお持ちいたします」
立ち去ろうとする彼に、俺は聞いてみた。
「ねえ、あんたには見えないの?」
「何がでございますか?」
「俺の前に座ってる幽霊さ」
店長は前の空席をちらりと見た。
「見えませんが…。もともと霊感はないので、そういうのは全く見えません」
ああ、よかった… 俺はちょっとホッとした。
「海老ドリア、早くしてね。もうずいぶん待ってるんだ」
「申し訳ありません。深夜は人手不足なもので」
「人手不足って、女の子4人もいたじゃないか」
「いいえ、フロアには私ひとりでございます」
「……」
「ああ、もしかして、見えてしまいましたか?
集団自殺した女子高生が、最後の晩餐をしたのがこの店でして。どうやら地縛霊になって、たまに悪戯するらしいんです。
あ、よそで言わないで下さいね。お客さん減っちゃいますから」
視線の先で、半透明のウェイトレス4人が手を振っていた。
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「いらっしゃいませ。ようこそ〇〇へ」
深夜なのに、ずいぶん若い女の子が働いていた。
「お客様、2名様ですか?」
「は?ひとりだけど?」俺は思わず後ろを見た。もちろん誰もいない。
「あ、すみません。また見えちゃったみたい」
な…何が? 何が見えるの?
「お席にご案内しま~す」
若いウェイトレスは、俺を席に案内すると、そそくさと奥に消えた。
いったい何が見えたんだ。
水を持ってきたのは、さっきと違うウェイトレスだった。
やはり若い女の子だ。
ウェイトレスは水を2つ持ってきた。
「あの、俺ひとりなんだけど」
「あ、すみません。いやだわ、また見えちゃった」
な…何が?何が見えるって言うんだ。
「ご注文が決まりましたらボタンでお知らせ下さい」
ウェイトレスは早口で言うと、奥へ消えた。
思わず、前の席を見た。もちろん誰もいなかった。
ボタンを押すと、また違うウェイトレスが来た。こんな深夜に何人いるんだ?
「海老ドリアとドリンクバー」
ウェイトレスは、機械に注文を打ち込みながら復唱した。
「海老ドリアとドリンクバーと生ビールでございますね」
「生ビールはたのんでないけど」
「でも、お連れさまが… あ、そうか、また見えちゃったんだわ。すみません」
だから、何が?何がいるの?
ウェイトレスは、「少々お待ち下さい」と言って奥に消えた。
ドリンクバーでコーヒーを淹れて戻ると、また別のウェイトレスが俺の席の前に立っていた。
「何?」
「あ、あの、お連れさまが喫煙席に変えて欲しいとおっしゃるのですが」
「連れはいないよ。ひとりなんだ」
「あら、いやだ、また見えちゃったわ。失礼しました」
ウェイトレスは顔を赤くして奥に消えた。
間違いなく何かがいるんだろう。俺の前の席に。
****
コーヒーを3杯飲んでも、海老ドリアは来なかった。
催促しようと周りを見ると、店長らしき男がこちらに向かって歩いてきた。
「いらっしゃいませ」
「海老ドリアがまだなんだけど」と言うと、店長は慌てて注文票を見た。
「失礼しました。海老ドリアでございますね。ただいまお持ちいたします」
立ち去ろうとする彼に、俺は聞いてみた。
「ねえ、あんたには見えないの?」
「何がでございますか?」
「俺の前に座ってる幽霊さ」
店長は前の空席をちらりと見た。
「見えませんが…。もともと霊感はないので、そういうのは全く見えません」
ああ、よかった… 俺はちょっとホッとした。
「海老ドリア、早くしてね。もうずいぶん待ってるんだ」
「申し訳ありません。深夜は人手不足なもので」
「人手不足って、女の子4人もいたじゃないか」
「いいえ、フロアには私ひとりでございます」
「……」
「ああ、もしかして、見えてしまいましたか?
集団自殺した女子高生が、最後の晩餐をしたのがこの店でして。どうやら地縛霊になって、たまに悪戯するらしいんです。
あ、よそで言わないで下さいね。お客さん減っちゃいますから」
視線の先で、半透明のウェイトレス4人が手を振っていた。
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2010-06-06 15:37
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コメント(12)
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このタイトルを見た時、
清水健太郎の「失恋レストラン」かと思ってしまいましたあ(古っ!)
そんなわけで、
このまま話が進んでいったら、もしかして、この『俺』自体幽霊で、
そして、店長もまた幽霊。
そもそも、ここには店舗の廃墟があるだけ・・・・・!
とかだったら・・・・・・ちょっとしつこすぎますかね?(笑)
おりんさん、次はついにタイムスリップタクシーですか?
と、強引にタクシーに押し込んで、逃げます!
by ヴァッキーノ (2010-06-06 18:33)
恐くなってきました。
ちょっと苦手なもので。。。^^;
by ナビパ (2010-06-07 05:36)
<ヴァッキーノさん>
あら、お若いかと思ったけど、ずいぶん古い歌を…(笑)
なるほど、そういう展開もおもしろいですね。
あんまり読者を怖がらせてもマズイし(私も怖がりなの~)
タイムスリップタクシー、思いついたら…ね^^
by リンさん (2010-06-07 16:32)
<ナビパさん>
怖かったですか?
最後に手を振ることで、怖さを和らげました。(いちおうね)
by リンさん (2010-06-07 16:33)
見えちゃっていたのは「俺」の方だったんですね。
見えない連れは、幽霊には見える幽霊。
幽霊のランクが違うのかとか想像しちゃいました(^^;
by あきえもん (2010-06-07 20:34)
3人でお店に入ったら、ウェイトレスが4人分・・・空席にもお冷やを置く話ってありますね。ああ、怖い。
僕はちょっと怖い話を書くんですけど、怖い話や映画が苦手なんですよ。
時々ホラー映画を友だちに勧められますが、大抵スルーです。
次はアレですか、タイムスリップ・・・しつこくてゴメンナサイ!(逃!)
by 矢菱虎犇 (2010-06-07 21:00)
面白かったでやす\(◎o◎)/
意外なラストに 笑いつつも背中が寒くなりやした。
by ぼんぼちぼちぼち (2010-06-07 23:11)
< あきえもんさん>
そうなんです。霊感があったのは自分だったんですね。
見えない連れは、霊たちの悪戯で、本当は何もいないって事だったんですけど、もしかしたらいたかも…
幽霊にしか見えない幽霊が(。。;)
by リンさん (2010-06-08 18:20)
<矢菱さん>
私もホラーはダメです。
でも怖いもの見たさで、テレビの心霊写真特集とか見ちゃって、見なきゃ良かった~って後悔したり(笑)
タイムスリップタクシー…はい、頑張ってみます。
by リンさん (2010-06-08 18:24)
<ぼんぼちぼちぼちさん>
ありがとうございます。
めったに書かない怖い話を書いてみました。
喜んでいただけてよかった(^0^)v
by リンさん (2010-06-08 18:26)
さ・・さむ~ xox
こんなレストランがあったら
すぐに教えて下さいwww
by めりー (2010-06-08 20:49)
<めりーさん>
あ、もしかして怖いの好きですか?
私は霊感ないので、このレストランに行っても普通に食べて帰ってくると思います(笑)
by リンさん (2010-06-08 23:24)