おじいちゃんの結婚 [短編]
おじいちゃんの結婚話を聞きつけて、伯父さんと伯母さんがやってきた。
「親父が結婚したってどういうことだよ!」
一郎伯父さんが、鼻を膨らませて言った。
「20歳の年の差だって?いい年して色恋に狂ったか」
二郎伯父さんが呆れたように言った。
「年の差婚が流行ってるからって…その女に騙されてるんじゃないの?」
三子伯母さんが眉間に皺を寄せて言った。
「だいたい何で事前に連絡しないんだ。親父が結婚して、今新婚旅行に行っている…って、なんだそりゃあ」
「四郎、おまえは一緒に暮らしていて反対しなかったのか」
「あんたって昔からボーっとした子だったわ」
パパは、みんなに責められても何も言わずに笑って頭を掻いている。
8年前におばあちゃんが亡くなった時、ひとりになったおじいちゃんの世話を誰がするかで揉めた。
伯父さんと伯母さんは都合のいいことを言って逃げたらしい。
「私たちは、それぞれ子供の学校があるでしょう。転校させるのも大変なのよ。四郎の子供はまだ3歳だし、この家に引っ越しても何の支障もないんじゃない?」
そう言って、末っ子であるパパにおじいちゃんを押し付けた。
おじいちゃんはちょっと頑固だから、ママは苦労もしたけど何とかうまくやってきた。
「あんたたちがお父さんを邪険に扱うから、再婚なんか考えたんじゃないの?」
伯母さんの嫌味に、ママはため息をつく。
金は出さないけど口は出す小姑が、いちばん厄介なのかもしれない。
「なあ四郎、その女に親父の財産を全部吸い取られたら、たまらんだろう」
「そうだ。絶対に財産目当てだ」
「そうよね。好き好んで68歳のじいさんを相手にするとは思えないわ」
「そこでだ、俺たち話し合ったんだけど、親父が元気な今のうちに、財産分与をしてしまおうじゃないか」
「四郎にはこの家があるからいいだろう?だから親父が今持っている貯金を俺たち3人で分けたいんだ」
「どこの馬の骨がわからない女に取られるくらいなら、今欲しいわ」
そこで、パパが初めて口を開いた。
「…今財産分与をするってことは、遺産はいらないってこと?」
「そうだよ。どうせその女にいいように使われちまうんだ。その前に欲しいと言ってるんだ」
「…わかったよ。父さんに言ってみるよ」
「そのかわり、私たちはお葬式の費用は一切出さないわよ」
「…いいよ。そういうのは僕がやるから」
「四郎って物わかりが良くて助かるわ」
「…でもさ、こういうことは、きちんと書類にして残した方がいいと思うんだ。あとで父さんと相談して、書類を作るよ。お金はなるべく早く渡せるように話してみるよ」
「四郎、おまえ意外と頼りになるな」
「じゃあ、頼んだぞ」
伯父さんと伯母さんは、いくらかすっきりした顔で帰って行った。
「はあ…やっと帰ったわね」
「うん。早いとこ父さんと連絡とって書類を作ろう」
パパとママは顔を見合わせて笑った。
ねえ、パパ、ママ、伯父さんたち何か勘違いしているみたいだけど、本当のこと言わなくていいの?
おじいちゃんの結婚相手が、20歳年下じゃなくて、20歳年上の88歳だっていうこと。
そしてその人は、大財閥のひとり娘であること。
その人が亡くなったら、その財産はすべておじいちゃんの物になるっていうこと。
「ねえ、お金が入ったら、この家リフォームしたいわね」
「そうだね」
パパとママはすごく幸せそうに笑った。
*****
敬老の日に因んだ話を書こうと思ったら、こんな話になっちゃいました^^
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「親父が結婚したってどういうことだよ!」
一郎伯父さんが、鼻を膨らませて言った。
「20歳の年の差だって?いい年して色恋に狂ったか」
二郎伯父さんが呆れたように言った。
「年の差婚が流行ってるからって…その女に騙されてるんじゃないの?」
三子伯母さんが眉間に皺を寄せて言った。
「だいたい何で事前に連絡しないんだ。親父が結婚して、今新婚旅行に行っている…って、なんだそりゃあ」
「四郎、おまえは一緒に暮らしていて反対しなかったのか」
「あんたって昔からボーっとした子だったわ」
パパは、みんなに責められても何も言わずに笑って頭を掻いている。
8年前におばあちゃんが亡くなった時、ひとりになったおじいちゃんの世話を誰がするかで揉めた。
伯父さんと伯母さんは都合のいいことを言って逃げたらしい。
「私たちは、それぞれ子供の学校があるでしょう。転校させるのも大変なのよ。四郎の子供はまだ3歳だし、この家に引っ越しても何の支障もないんじゃない?」
そう言って、末っ子であるパパにおじいちゃんを押し付けた。
おじいちゃんはちょっと頑固だから、ママは苦労もしたけど何とかうまくやってきた。
「あんたたちがお父さんを邪険に扱うから、再婚なんか考えたんじゃないの?」
伯母さんの嫌味に、ママはため息をつく。
金は出さないけど口は出す小姑が、いちばん厄介なのかもしれない。
「なあ四郎、その女に親父の財産を全部吸い取られたら、たまらんだろう」
「そうだ。絶対に財産目当てだ」
「そうよね。好き好んで68歳のじいさんを相手にするとは思えないわ」
「そこでだ、俺たち話し合ったんだけど、親父が元気な今のうちに、財産分与をしてしまおうじゃないか」
「四郎にはこの家があるからいいだろう?だから親父が今持っている貯金を俺たち3人で分けたいんだ」
「どこの馬の骨がわからない女に取られるくらいなら、今欲しいわ」
そこで、パパが初めて口を開いた。
「…今財産分与をするってことは、遺産はいらないってこと?」
「そうだよ。どうせその女にいいように使われちまうんだ。その前に欲しいと言ってるんだ」
「…わかったよ。父さんに言ってみるよ」
「そのかわり、私たちはお葬式の費用は一切出さないわよ」
「…いいよ。そういうのは僕がやるから」
「四郎って物わかりが良くて助かるわ」
「…でもさ、こういうことは、きちんと書類にして残した方がいいと思うんだ。あとで父さんと相談して、書類を作るよ。お金はなるべく早く渡せるように話してみるよ」
「四郎、おまえ意外と頼りになるな」
「じゃあ、頼んだぞ」
伯父さんと伯母さんは、いくらかすっきりした顔で帰って行った。
「はあ…やっと帰ったわね」
「うん。早いとこ父さんと連絡とって書類を作ろう」
パパとママは顔を見合わせて笑った。
ねえ、パパ、ママ、伯父さんたち何か勘違いしているみたいだけど、本当のこと言わなくていいの?
おじいちゃんの結婚相手が、20歳年下じゃなくて、20歳年上の88歳だっていうこと。
そしてその人は、大財閥のひとり娘であること。
その人が亡くなったら、その財産はすべておじいちゃんの物になるっていうこと。
「ねえ、お金が入ったら、この家リフォームしたいわね」
「そうだね」
パパとママはすごく幸せそうに笑った。
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2012-09-10 21:38
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コメント(10)
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親の面倒は見たくなくて、財産だけは欲しい。というのが本音でしょうか。
殺伐とした時代ですね。
これは、いっぱい食わせてお仕置きですね。
20歳年上の大財閥の一人娘とわかったら、どんな反応を示すのでしょうか。
外野は、放っておいて、新婚旅行に出かけたおじいちゃんヤルねー!
お幸せにね。(^^♪
by haru (2012-09-10 22:23)
いやー なんか・・・なんとも・・・。
フツーに地味ーに生きていって、フツーにさっぱり死ぬのがいいと思いマシタ。
ま おじいちゃんたちが幸せならいいですよね。
人って突然お金持ちになっても変わらないんですって。
人はそんなに変われない。
変わったように思うのはその人の本当の姿が見えてくるだけなんだそうですよ。
さぁ 怖いのはお金?人?どっち?
by もぐら (2012-09-10 23:10)
うーん。
みんな、同じ穴のムジナ。。。だったんですね。
でも、もぐらさんのおっしゃるとおり
おじいちゃんが幸せならいいですよね。
それに、このおじいちゃんにしても
こういう兄弟を育てた親なら。。。
生きてるうちに財産全部使い果たすくらいのこと。。。
やっちゃいそう。。。なぁんて。( *´pq`)クスッ
面白かったです。楽しみました。
いつも、ありがとっ♪
by 春待ち りこ (2012-09-10 23:54)
さんざいやらしく伯父伯母を描いて、どこまでもお人好しに末っ子夫婦を描いてて、それでいいの?なんて思ったら、そこ逆から来たあー!りんさん、一本!
・・・しっかし88歳と68歳の夫婦ってのがスゴイ。
んなの、リアルにありそうなのって黒柳徹子さんくらいのもんですねぇ。なんてリアルで考える必要がどこにある?
あ、りんさん、姑小姑ってリアルにやっぱアレですか?(笑)
by 矢菱虎犇 (2012-09-11 03:19)
今話題の歳の差婚ですね。
なかなか楽しい展開でした。
そういえば先日ラジオで言っていたのですが、高齢の男性から結婚相談所に申し込みが増えているそうです。
そして希望は、20代~30代の女性を希望しているとか。
芸能人に影響されてるもかな?
そして、収入等を聞くと年金収入だけだとか。
お金が全てではないと思うんですが、我々一般人には芸能人のようなことは・・・
by こっちゃん (2012-09-11 14:19)
<haruさん>
世知辛い世の中ですね。
私は無欲なので(ホントです)親の遺産なんてどうでもいいです。
負の遺産だけは勘弁してほしいけど、そういうのはなさそうなので^^
おじいちゃん、きっと豪華な新婚旅行なんでしょうね。
元気でいいんじゃないですか^^
by リンさん (2012-09-12 19:00)
<もぐらさん>
そうそう。下手に財産があるとトラブルの素ですよ。
突然大金持ちになったらって、考えたりすることありますよね。
人が変わってしまう前に、寄付でもした方がいいかも。
by リンさん (2012-09-12 19:05)
<りこさん>
88歳で結婚するくらいのおばあちゃんだから、120歳くらいまで生きるかもしれませんよ。
財産が四郎さんに回ってくるのは、ずっと先かもしれません。
地道に働きましょう^^
by リンさん (2012-09-12 19:07)
<矢菱さん>
物語でも、末っ子って兄弟にバカにされながら最後に得しますよね。
今回は、そんなことをモチーフに書きました。
このおばあさんは大金持ちだから、88歳でもきれいだったのかも。
美容をお金で買ってね^^
姑ですか。…はあ…(ため息)(爆!)
by リンさん (2012-09-12 19:13)
<こっちゃんさん>
ええ~?そんな若い子と結婚しても話合わないんじゃないかな。
年の差婚をする女性って、きっとお金目的だけじゃないと思います。
なにか魅力がないとダメですよね。
カトちゃんとか、一緒にいて面白そうだもん。
by リンさん (2012-09-12 19:20)