飲むな! [ミステリー?]
ひどく喉が渇いていた。
なぜこんなに渇いているのかわからないが、カラカラだった。
僕は公園を歩いていた。早朝で誰も歩いていない。
水飲み場を見つけて走る。
よかった。これで喉がうるおう。
蛇口をひねろうとして手が止まった。蛇口に札がかかっていたのだ。
『飲むな!』
飲むな?飲めない水なのか。汚染されているのかもしれない。
僕は諦めて家に帰った。
冷蔵庫を開けてみたが、中は空っぽだった。なぜだ?
仕方ないので水道の水を飲もうとした。
するとそこにも『飲むな!』の札がかかっていた。
どういうことだ? ここは僕の家だ。誰が札をかけたのだろう。
もしかしたら、この町の水道全てが飲めなくなっているということか?
とにかく喉がカラカラだ。コンビニで買ってこよう。
財布を探したが見つからない。
そんなことをしているあいだに、僕の喉は限界を迎えた。
近所に住む友達の家に走った。
ドンドンと扉を叩くと、迷惑そうに出てきた。
「何だよ。こんな朝っぱらから」
「水くれ!水を飲ませてくれ」
「冷蔵庫に入っているから勝手に飲めよ」
友達はそう言って布団にもぐりこんだ。
冷蔵庫を開けるとペットボトルの水が輝いていた。
手をのばして取ろうとしたら、蓋にまた札がかかっている。
『飲むな!』
「おい、この水、飲んでいいんだよな」
「飲みたきゃ飲めばいいだろう」
友達は面倒臭そうに言って再び寝た。
飲みたきゃ飲め…死んでもいいなら飲め…ということか?
もう限界だ。だけど死ぬのはいやだ。
テーブルに無造作に置かれた小銭を掴んだ。
「ちょっと借りるぞ」寝ている友達にそう言って外に飛び出した。
コンビニに入って水に手をのばした。
まただ!また『飲むな!』の札がかかっている。
全ての飲み物に、『飲むな!』の札がかかっている。
この店は、飲めない水を売っているのか。
そう叫びたかったが、喉が渇きすぎて声が出ない。
コンビニを飛び出すと向かいの奥さんがホースで水を撒いていた。
水だ、水だ、思わずホースに手をのばすと、そこにも『飲むな!』の文字が。
もうだめだ。僕はその場に倒れこんだ。
気が付いたら公園のベンチで寝ていた。
夕べ飲み過ぎて、こんなところで寝てしまったようだ。
喉がカラカラだ。だからあんな夢を見たのだろうか。
僕はのろのろ起き上がり、公園の水飲み場に向かった。
蛇口に手をのばすと、そこにはやはり、『飲むな!』の札がかかっていた。
ああ!何ということだ。夢じゃなかったのか。
僕は頭をかかえてその場にしゃがみ込んだ。
絶望感に心が張り裂けそうだ。もう一生水が飲めないのだろうか。
彼は気づいていなかった。
『飲むな!』の前に、小さく書かれた文字。
『蛇口に口をつけて 飲むな!』
にほんブログ村
なぜこんなに渇いているのかわからないが、カラカラだった。
僕は公園を歩いていた。早朝で誰も歩いていない。
水飲み場を見つけて走る。
よかった。これで喉がうるおう。
蛇口をひねろうとして手が止まった。蛇口に札がかかっていたのだ。
『飲むな!』
飲むな?飲めない水なのか。汚染されているのかもしれない。
僕は諦めて家に帰った。
冷蔵庫を開けてみたが、中は空っぽだった。なぜだ?
仕方ないので水道の水を飲もうとした。
するとそこにも『飲むな!』の札がかかっていた。
どういうことだ? ここは僕の家だ。誰が札をかけたのだろう。
もしかしたら、この町の水道全てが飲めなくなっているということか?
とにかく喉がカラカラだ。コンビニで買ってこよう。
財布を探したが見つからない。
そんなことをしているあいだに、僕の喉は限界を迎えた。
近所に住む友達の家に走った。
ドンドンと扉を叩くと、迷惑そうに出てきた。
「何だよ。こんな朝っぱらから」
「水くれ!水を飲ませてくれ」
「冷蔵庫に入っているから勝手に飲めよ」
友達はそう言って布団にもぐりこんだ。
冷蔵庫を開けるとペットボトルの水が輝いていた。
手をのばして取ろうとしたら、蓋にまた札がかかっている。
『飲むな!』
「おい、この水、飲んでいいんだよな」
「飲みたきゃ飲めばいいだろう」
友達は面倒臭そうに言って再び寝た。
飲みたきゃ飲め…死んでもいいなら飲め…ということか?
もう限界だ。だけど死ぬのはいやだ。
テーブルに無造作に置かれた小銭を掴んだ。
「ちょっと借りるぞ」寝ている友達にそう言って外に飛び出した。
コンビニに入って水に手をのばした。
まただ!また『飲むな!』の札がかかっている。
全ての飲み物に、『飲むな!』の札がかかっている。
この店は、飲めない水を売っているのか。
そう叫びたかったが、喉が渇きすぎて声が出ない。
コンビニを飛び出すと向かいの奥さんがホースで水を撒いていた。
水だ、水だ、思わずホースに手をのばすと、そこにも『飲むな!』の文字が。
もうだめだ。僕はその場に倒れこんだ。
気が付いたら公園のベンチで寝ていた。
夕べ飲み過ぎて、こんなところで寝てしまったようだ。
喉がカラカラだ。だからあんな夢を見たのだろうか。
僕はのろのろ起き上がり、公園の水飲み場に向かった。
蛇口に手をのばすと、そこにはやはり、『飲むな!』の札がかかっていた。
ああ!何ということだ。夢じゃなかったのか。
僕は頭をかかえてその場にしゃがみ込んだ。
絶望感に心が張り裂けそうだ。もう一生水が飲めないのだろうか。
彼は気づいていなかった。
『飲むな!』の前に、小さく書かれた文字。
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2013-10-24 18:05
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コメント(13)
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昔 いました いました
蛇口に口をつけて 水道のお水飲んじゃってる人(-"-)
最近はそうそう見かけませんが
見てて うわぁ‥と子ども心に思ったものです~
by みかん (2013-10-25 20:55)
あ~んいじわる~。
by さきしなのてるりん (2013-10-25 23:06)
飲み過ぎには気を付けないといけませんね。
最後の最後まで「ミステリー」な気持ちで読んでいました。「コメディ」でしたね。やられた~。
by かよ湖 (2013-10-26 00:57)
面白~いです。夢オチかと思ったら、現実で、それも見落とし。(笑)
ずっとミステリー感で、読んでいました。
この作品の朗読をお願いしてもいいですか。よろしくです。
by haru (2013-10-26 09:55)
追伸 りんさんの返事を待たずして朗読・動画にしてしまいました。
ちょっと声が出づらいので、かすれ声ですがごめんね。勝手にスミマセン。
by haru (2013-10-26 12:49)
最後まではらはらしながら、それでもその手には乗らないと
思いながら読んでたのに、またやられました。悔しいっ!!
by dan (2013-10-26 19:00)
おお?!
りんさんには珍しい不条理系?
と思いました。
最後の最後まで。
でもなんと、小学校時代を思い出させるかわいいオチがちょこんとついているという感じでした。
いやいや結構好きですけど、不条理好きの僕としては不条理のまま、というか、もっと不条理な状況で終わると言うのも捨てがたいですね。
by 海野久実 (2013-10-27 10:31)
<みかんさん>
いましたねえ^^
今は公園の水を飲む人が少ないでしょうね。
水は買って飲む時代ですもの。
by リンさん (2013-10-27 20:46)
<さぎしなのてるりんさん>
ふふふ^^
ちょっと可哀想だったかしら^^
by リンさん (2013-10-27 20:47)
<かよ湖さん>
オチをいくつか考えて、最終的にコメディになりました。
シリアスにすることも考えたんですけどね。
ホント、飲みすぎには注意しましょうね^^
by リンさん (2013-10-27 20:52)
<haruさん>
朗読ありがとうございました。
すごくよかったです。
ミステリーっぽい読み方が、haruさんの声によく合ってますよね。
またよろしくお願いしますね^^
by リンさん (2013-10-27 20:54)
<danさん>
ありがとうございます。
へへ^^ してやったり、って感じですか^^
これからもdanさんを驚かせたいですね^^
by リンさん (2013-10-27 20:56)
<海野久実さん>
ありがとうございます。
漂流中の船の上で目覚めるというオチも考えたんですよ。
本当に水がないというオチ。
だけどこちらのコメディっぽい方を選びました。
私的にはこちらの方が好きだったので^^
by リンさん (2013-10-27 21:00)