暗殺者の恋

―　あたしはスナイパー。
狙撃命令が出たら、どこへでも行くの。
今回のターゲットは、愛しい彼。
何度も彼の狙撃を依頼されたけど、そのたびにうまく逃げるのよ。
悪い男なの。だけどとてもタフなやつ。いつのまにか、愛してしまった。
一生結ばれない恋だとわかっている。

あたしはスナイパーだから、愛する男でも容赦なく殺す。
それがあたしの使命なの。
殺したいほど愛してる。
出来ることなら、逃げて生き延びてほしい。
だけどあなたは、きっとあたしを待っているでしょう。
あたしたち、あの場所でしか交わることが出来ないのだから。
さあ、時間だわ。行きましょう。―


―　もうすぐ彼女がやってくる。
わかっている。彼女はおれを殺しに来る。
彼女になら、殺されたってかまわない。
いっそ殺してほしい。
おれの愛は命がけだ。
決して交わることのないおれたちだけど、この愛は永遠だ。

彼女が来た。
やはり凄腕のスナイパーだ。
仲間を次々に撃っていく。
さあ、おれの番だぜ。
そのまっすぐな瞳、ゾクゾクするぜ。―


「あ～、すっかり風邪が治ったわ」
「薬が効いたんだな」

彼はウイルス、そして彼女は特効薬。

「はっくしょん」
「あらやだ。私の風邪がうつった？」
「そうみたい。はっくしょん」

―　おれは生きている。ああ、また死に損なったか。―　
―　うまく逃げたようね。さすが私の愛した男だわ。―


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コメント 10

リンさんさん こんばんは
なんと風邪のウィルスと特効薬でしたか。だまされてしまいました。読み返してみると、なるほどでした。
by SORI (2016-02-15 23:46) 

こういう話は、文体をうんとハードボイルドにした方がいいです。
文章を短くした方はハードボイルドっぽくなります。
だいたいが、文章は短くするほうが、強く感じます。

君はバラのように美しい。
君こそバラだ。
君こそバラ。
君がバラだ。
君がバラ。

最初より、5番目の方がより強く感じませんか。

私なりに、冒頭を書き直してみました。

あたしはスナイパー。
狙撃命令が出た。
今回のターゲットは彼。
彼には何度も逃げられた。
彼はタフで悪い。そして、私は彼を愛した。
決して交わらない愛だ。
by 雫石鉄也 (2016-02-16 13:21) 

雫石さんのおっしゃる通り、
女性の言葉をハードボイルド調にした方が、
興味をそそられますね。
男性の台詞は、すでにハードボイルド調だと思います。

ウィルスと特効薬というオチ、とても面白いです。



by カーミン (2016-02-16 15:32) 

ウイルスと特効薬。やっぱりリンさん凄いです。
私なんか素直に読んでドキドキして損しちゃった。
雫石さんの説?に賛成!!

by dan (2016-02-17 13:46) 

＜SORIさん＞
ありがとうございます。
騙せてよかった（笑）
by リンさん (2016-02-19 00:02) 

＜雫石鉄也さん＞
なるほど、俄然よくなりますね。
ハードボイルドとか、特に意識せずに書いていました。
本当に勉強になります。
ありがとうございます。

by リンさん (2016-02-19 00:04) 

＜カーミンさん＞
ありがとうございます。
雫石さんにはいつもアドバイスをいただけて、とてもありがたいです。

ウイルスと薬では、絶対愛し合えないですね＾＾
by リンさん (2016-02-19 00:07) 

＜danさん＞
ありがとうございます。
ドキドキしてもらえて、何よりです＾＾
こんなタフなウイルスに入られないように、注意しましょうね＾＾
by リンさん (2016-02-19 00:11) 

風邪のウイルスに対抗するキャラクターなら、人の体の免疫細胞と言う手もありますね。
免疫細胞が風邪薬を武器に戦うなんてね。
by 海野久実 (2016-02-21 12:08) 

＜海野久美さん＞
ありがとうございます。
免疫細胞ととウイルス＾＾
壮絶なバトルが体内で繰り広げられるんですね＾＾
by リンさん (2016-02-24 15:10)