お歳暮こわい [コメディー]
高い垣根に囲まれた一軒家。こういう家は入りやすいと聞いた。
音を立てずに窓ガラスを割る方法は、先輩から教わった。
この家の住人が夕方まで帰らないのは調査済みだ。
慎重に、そろりと中に忍び込んだ。
空き巣なんて、本当はやりたくない。
だけど仕事はないし、親兄弟には頼れない。金がないんだ。
取り急ぎ、現金を探すが、なかなか見つからない。
現金を家に置かない主義か?
ピンポ~ン 玄関のチャイムが鳴った。
「宅配便でーす」
無視しようと思ったが、ちらりと覗いたら目が合っちまった。
「い、今行きます」
仕方がないので、住人のふりをして受け取ると、それはお歳暮だった。
お歳暮なんて、一度ももらったことがない。贈ったこともないけど。
「おお、ビールだ。いいな」
この家には現金がなさそうなので腹いせにビールをご馳走になることにした。
ぷはー、うめえな。このところ、酒も飲めなかったからな。つまみが欲しいところだが、贅沢は言えんな。
ピンポ~ン 玄関のチャイムが再び鳴った。
「宅配便でーす」
おお、またお歳暮だ。今度は佃煮の詰め合わせじゃないか。
ちょうどいいつまみだ。うん、なかなかイケる。
ピンポ~ン 玄関のチャイムがまた鳴った。
「宅配便でーす」
またお歳暮だ。よくお歳暮が来る家だな。
今度はワインじゃないか。俺はワインにはちょっとうるさいぜ。
うん、こりゃあいいワインだ。香りもいい。
佃煮とは、ちょっと合わないがな。
ピンポ~ン 玄関のチャイムがまた鳴った。
「宅配便でーす」
またお歳暮か。おお、なんてタイミングがいいんだ。今度はチーズの詰め合わせだぞ。
まるで俺のためにお歳暮が届くみたいだ。
色んな種類のチーズがある。しゃれてるな。
やっぱりカマンベールがワインに合うな。
ピンポ~ン 玄関のチャイムがまたまた鳴った。
「宅配便でーす」
いったいどれだけお歳暮が来るんだ。
今度は焼酎だぞ。ここの家主は酒好きなんだな。
やっぱりお湯割りか。お湯をもらうぜ。
ピンポ~ン 玄関のチャイムがまたまた鳴った。
「宅配便でーす」
おいおい、なんてことだ。今度は梅干しが来たぞ。
そうそう、焼酎のお湯割りには梅干しを入れなくちゃね。
なんだかここ、居酒屋みたいだぞ。次はご飯ものが欲しいところだな。
玄関のドアが開いた。次は何だ?
「ちょっと、どういうこと? 鍵が開いてるわ」
あっ、住人が帰ってきた。いつの間にか夕方だ。
「ど、どろぼう? あなた、人の家で何してるのよ!」
「いや、その…」
「警察呼ぶわよ」
「その前に奥さん、〆のお茶漬けを……」
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音を立てずに窓ガラスを割る方法は、先輩から教わった。
この家の住人が夕方まで帰らないのは調査済みだ。
慎重に、そろりと中に忍び込んだ。
空き巣なんて、本当はやりたくない。
だけど仕事はないし、親兄弟には頼れない。金がないんだ。
取り急ぎ、現金を探すが、なかなか見つからない。
現金を家に置かない主義か?
ピンポ~ン 玄関のチャイムが鳴った。
「宅配便でーす」
無視しようと思ったが、ちらりと覗いたら目が合っちまった。
「い、今行きます」
仕方がないので、住人のふりをして受け取ると、それはお歳暮だった。
お歳暮なんて、一度ももらったことがない。贈ったこともないけど。
「おお、ビールだ。いいな」
この家には現金がなさそうなので腹いせにビールをご馳走になることにした。
ぷはー、うめえな。このところ、酒も飲めなかったからな。つまみが欲しいところだが、贅沢は言えんな。
ピンポ~ン 玄関のチャイムが再び鳴った。
「宅配便でーす」
おお、またお歳暮だ。今度は佃煮の詰め合わせじゃないか。
ちょうどいいつまみだ。うん、なかなかイケる。
ピンポ~ン 玄関のチャイムがまた鳴った。
「宅配便でーす」
またお歳暮だ。よくお歳暮が来る家だな。
今度はワインじゃないか。俺はワインにはちょっとうるさいぜ。
うん、こりゃあいいワインだ。香りもいい。
佃煮とは、ちょっと合わないがな。
ピンポ~ン 玄関のチャイムがまた鳴った。
「宅配便でーす」
またお歳暮か。おお、なんてタイミングがいいんだ。今度はチーズの詰め合わせだぞ。
まるで俺のためにお歳暮が届くみたいだ。
色んな種類のチーズがある。しゃれてるな。
やっぱりカマンベールがワインに合うな。
ピンポ~ン 玄関のチャイムがまたまた鳴った。
「宅配便でーす」
いったいどれだけお歳暮が来るんだ。
今度は焼酎だぞ。ここの家主は酒好きなんだな。
やっぱりお湯割りか。お湯をもらうぜ。
ピンポ~ン 玄関のチャイムがまたまた鳴った。
「宅配便でーす」
おいおい、なんてことだ。今度は梅干しが来たぞ。
そうそう、焼酎のお湯割りには梅干しを入れなくちゃね。
なんだかここ、居酒屋みたいだぞ。次はご飯ものが欲しいところだな。
玄関のドアが開いた。次は何だ?
「ちょっと、どういうこと? 鍵が開いてるわ」
あっ、住人が帰ってきた。いつの間にか夕方だ。
「ど、どろぼう? あなた、人の家で何してるのよ!」
「いや、その…」
「警察呼ぶわよ」
「その前に奥さん、〆のお茶漬けを……」
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2018-12-04 20:40
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コメント(10)
リンさん、こんばんは。
お歳暮がどういうオチになるのか、いろいろ想像しながら読みました。
何となく、こうなるかなぁって思ってたけれど、それでもラストの言葉はウケたよ(笑)
何だか可愛らしいどろぼうさんだったけれど、でも現実はやっぱりコワイ。
特にこの時期は気をつけなきゃね!
by まるこ (2018-12-04 23:38)
リンさんさん おはようございます。
これは楽しいお話です。はまっちゃいました。素晴らしいです。
by SORI (2018-12-05 02:31)
これは面白かったです。
落語にしたら良さそうです。
7代目笑福亭松喬師匠は、松喬襲名前の三喬時代は、泥棒三喬といって、泥棒の噺をよくやっておられました。
https://blog.goo.ne.jp/totuzen703/e/08f6cad1ce9dab75201bd75d2a267399
その松喬師匠にやってもらいたいような作品です。
私が落語に書き直したいぐらいです。
by 雫石鉄也 (2018-12-05 14:34)
あはは、まさに落語のオチでやすね(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2018-12-06 21:40)
面白い。次に来るお歳暮のことばかりつい考えていました。
年の暮れ空き巣にご用心!
by dan (2018-12-07 11:53)
<まるこさん>
ありがとうございます。
近所に空き巣が入ったとき、現金がなかったので腹いせに家じゅうを。散らかしていったそうです。
どんなマヌケでも、空き巣は怖いですね^^
by リンさん (2018-12-08 15:34)
<SORIさん>
ありがとうございます。
楽しんでいただけて嬉しいです^^
by リンさん (2018-12-08 15:35)
<雫石鉄也さん>
ありがとうございます。
この話を思いついたとき、私も落語みたいと思いました。
書いてて楽しかったです。
雫石さんは本当に落語がお好きなんですね。
そんな雫石さんに褒められると、自信がつきます^^
by リンさん (2018-12-08 15:46)
<ぼんぼちぼちぼちさん>
ありがとうございます。
おあとがよろしいようで(笑)
by リンさん (2018-12-08 15:54)
<danさん>
ありがとうございます。
やっぱり〆はお茶漬けですね(笑)
空き巣には、気を付けましょう。
by リンさん (2018-12-08 15:55)