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盆帰り [男と女ストーリー]

盆休みが終わったら、君が家を出て行く。
それは最初から決まっていたこと。
夕暮れの鐘が鳴る。午後5時なのに、日差しは容赦ない。
「もう少し、涼しくなってからにしたら?」
僕の提案に、君は小さく首を振った。
「これ以上はムリ。あなただって、私に居座られたら困るでしょ。新しい彼女がいるくせに」
「いや、だからそれは誤解だって」
「いいのよ。あなたの望み通り、私はもう消えるから」
君は静かに立ち上がり、部屋をぐるりと見て回った。
「捨てていいのよ。私のマグカップ」
「そうだね。何度か捨てようとしたけど、やっぱり勿体なくてさ」
「貧乏性。あんまりせこいと彼女に振られるわよ」
「だから誤解だって」

君は「じゃあ行くわ」と背を向けた。
僕は慌てて追いかけて、君を車に乗せた。
「送っていくよ」
「ありがとう。この車にも、彼女は乗った?」
「乗ってないよ。あのさ、何度も言うけど誤解だよ。彼女はただの同僚。しかも結婚してるし」
「やだ、ダブル不倫?」
「違うってば。君は昔から嫉妬深くて早とちりで、おまけに気が強くて泣き虫で」
「悪かったわね」
「君のようにインパクトがある女性を、3年やそこらで忘れられると思う?」
「出来れば一生忘れないで欲しいけど」

車は駐車場に着いた。
夕焼け雲が、高台の墓地をきれいに染めた。
僕の手には、手桶と花と線香。
君は白い顔で小さく笑って、ふわりと墓に帰って行った。
「来年のお盆に、また迎えに来るよ」
たぶん、この先もずっと、僕はひとりだ。

「だめだよ。私がめちゃくちゃ嫉妬するような彼女を見つけなさいよ。そうじゃないと張り合いがないわ」
線香の柔らかい煙の向こうから、君の声が聞こえた。
お盆で帰るたびに嫉妬されたらかなわないな。
僕はちょっと笑いながら、夕陽の階段をゆっくり降りた。

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コメント 8

SORI

リンさんさん おはようございます。
これは最後までそうぞ出来ない展開でした。そう言えばタイトル「盆帰り」でしたね。気づけなかったのは残念ですが、すばらしいストーリーです。
by SORI (2019-08-18 10:03) 

ぼんぼちぼちぼち

リンさんさんの優しさがめいっぱい詰まったお話だと思いやした。
お盆っていうと=お年寄りモノ っていうイメージ抱きがちでやすが
こういう若々しいお盆話もありでやすね。
by ぼんぼちぼちぼち (2019-08-18 16:16) 

dan

素直で優しくてほんわか。dan好みふふふ。
心が洗われたように清々しい。
いつものリンさんと少し違う気がするのですが。

君があちらから会いにきた彼女だとすぐ分かったし、
お互いにかけがえのない人だということも。
ストリーも最後の夕景も思った通り。嬉しいな(得意満面)


by dan (2019-08-19 11:47) 

リンさん

<SORIさん>
ありがとうございます。
そういえば、タイトルで気づいてしまいますね。
うっかりでした。
by リンさん (2019-08-24 06:36) 

リンさん

<ぼんぼちぼちぼちさん>
ありがとうございます。
やきもちをやきながらも、彼の幸せを望んでいる。
若くして亡くなってしまった妻は、きっとこうだろうと想像しました。
by リンさん (2019-08-24 06:39) 

リンさん

<danさん>
ありがとうございます。
あらら、すっかり読まれてしまいましたね。
お盆って不思議ですね。
迎えに行って送って行って。数日間は一緒に過ごすんですものね。
本当にこんな風に過ごせたら素敵ですね。


by リンさん (2019-08-24 06:45) 

九子

ほっこり!(^-^)
by 九子 (2019-10-25 00:33) 

リンさん

<九子さん>
ありがとうございます。
ちょっと寂しいけど、いい夫婦ですね。
by リンさん (2019-10-26 16:49) 

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