祭りのあとの街 [ファンタジー]
10月になると、ショーウィンドウはハロウィン一色です。
どこもかしこもオレンジ色のお化けカボチャが並んでいます。
街角のデパート。お化けカボチャたちのおしゃべりが聞こえてきます。
「あー、今日はいよいよハロウィンだな」
「この大通りを、仮装した人間たちがぞろぞろ歩くんだ」
「いいなあ。一度でいいからあのパレードに加わってみたい」
「じゃあさ、抜け出しちゃう?」
「そうだな。今夜なら、誰にもバレないぞ」
「仮装パレードに混ざって歩くんだ。最後の夜だ。楽しもうぜ」
「そうだな。明日には俺たち、倉庫行きだもんな」
夜になり、人出が増えて来ました。
お化けカボチャたちはショーウィンドウを抜け出して、パレードの中に紛れ込みました。
「うひゃー、楽しい。テンション上がるぜ」
「人間の仮装すげーな。俺たちぜんぜん目立たない」
魔女やゾンビや流行りのキャラクター。何でもありのハロウィンパーティ。
お化けカボチャたちは踊りながら歩き続けました。
お祭り騒ぎは夜通し続きます。
飲んで騒いで踊りまくる人間たち。
お化けカボチャも負けてはいません。見るものすべてが楽しくて仕方ありません。
朝になり、人間たちは、ぽつりぽつりと家に帰っていきます。
「朝日が昇って来たぞ」
「ああ、もう終わりか。楽しかったね」
「名残惜しいな。まだショーウィンドウに帰りたくないよ」
そのとき、大通りにたくさんの人間たちが集まってきました。
「あれ、また何か始まるのか?」
「楽しそうだな。混ぜてもらおうぜ」
人間のひとりが近づいてきて言いました。
「仮装したお化けカボチャさんたち、ゴミ拾いを手伝ってください」
「ゴミ拾い?」
見ると、大通りはたくさんのゴミであふれています。
「ゴミ拾いだって」
「人間って、楽しいだけじゃないんだな」
「仕方ない。拾うか」
「ああ、お化けカボチャさんたち、ちゃんと分別してくださいよ。缶は缶、瓶は瓶、紙は紙」
「ぶんべつ?」
「そんなこともするのか。人間って大変だな」
すっかりきれいになった大通りを眺めながら、お化けカボチャたちは、ショーウィンドウに帰りました。
「あれれ、ショーウィンドウが、クリスマスになってる」
「いつの間に?」
「夜中から作業してたのか?」
「人間って大変だな」
赤と緑のツリーの前に座り込んだお化けカボチャたちを、業者が来てひょいと持ち上げました。
「カボチャ3体、ここにありました。引き揚げます」
お化けカボチャたちは車に乗せられて、来年の秋までゆっくり眠ります。
夕べの騒ぎが嘘みたいに、早朝の街は静かです。
あくびをしながら運転する業者さん。
夜勤明けのサラリーマン。
デパートの開店前に働く清掃員。
「みなさん、おつかれさまです!」
どこもかしこもオレンジ色のお化けカボチャが並んでいます。
街角のデパート。お化けカボチャたちのおしゃべりが聞こえてきます。
「あー、今日はいよいよハロウィンだな」
「この大通りを、仮装した人間たちがぞろぞろ歩くんだ」
「いいなあ。一度でいいからあのパレードに加わってみたい」
「じゃあさ、抜け出しちゃう?」
「そうだな。今夜なら、誰にもバレないぞ」
「仮装パレードに混ざって歩くんだ。最後の夜だ。楽しもうぜ」
「そうだな。明日には俺たち、倉庫行きだもんな」
夜になり、人出が増えて来ました。
お化けカボチャたちはショーウィンドウを抜け出して、パレードの中に紛れ込みました。
「うひゃー、楽しい。テンション上がるぜ」
「人間の仮装すげーな。俺たちぜんぜん目立たない」
魔女やゾンビや流行りのキャラクター。何でもありのハロウィンパーティ。
お化けカボチャたちは踊りながら歩き続けました。
お祭り騒ぎは夜通し続きます。
飲んで騒いで踊りまくる人間たち。
お化けカボチャも負けてはいません。見るものすべてが楽しくて仕方ありません。
朝になり、人間たちは、ぽつりぽつりと家に帰っていきます。
「朝日が昇って来たぞ」
「ああ、もう終わりか。楽しかったね」
「名残惜しいな。まだショーウィンドウに帰りたくないよ」
そのとき、大通りにたくさんの人間たちが集まってきました。
「あれ、また何か始まるのか?」
「楽しそうだな。混ぜてもらおうぜ」
人間のひとりが近づいてきて言いました。
「仮装したお化けカボチャさんたち、ゴミ拾いを手伝ってください」
「ゴミ拾い?」
見ると、大通りはたくさんのゴミであふれています。
「ゴミ拾いだって」
「人間って、楽しいだけじゃないんだな」
「仕方ない。拾うか」
「ああ、お化けカボチャさんたち、ちゃんと分別してくださいよ。缶は缶、瓶は瓶、紙は紙」
「ぶんべつ?」
「そんなこともするのか。人間って大変だな」
すっかりきれいになった大通りを眺めながら、お化けカボチャたちは、ショーウィンドウに帰りました。
「あれれ、ショーウィンドウが、クリスマスになってる」
「いつの間に?」
「夜中から作業してたのか?」
「人間って大変だな」
赤と緑のツリーの前に座り込んだお化けカボチャたちを、業者が来てひょいと持ち上げました。
「カボチャ3体、ここにありました。引き揚げます」
お化けカボチャたちは車に乗せられて、来年の秋までゆっくり眠ります。
夕べの騒ぎが嘘みたいに、早朝の街は静かです。
あくびをしながら運転する業者さん。
夜勤明けのサラリーマン。
デパートの開店前に働く清掃員。
「みなさん、おつかれさまです!」
2022-10-21 18:57
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コメント(6)
見るものすべてが楽しくて仕方ない、
そんな思いができて良かったです^^
それでも華やかな舞台の裏には
地味な仕事があり、
成り立っているのですよね。
来年までゆっくりしてね^^
by 青山実花 (2022-10-22 08:23)
ははは、、、まさか展開が、ごみ拾いにいくとは、予想外で笑ってしまいやした。
ロマンチックでは終わらせない、時世をふくめる、さすがリンさんさんだなあと、感服しやした!
by ぼんぼちぼちぼち (2022-10-25 19:27)
リンさんさん おはようございます。
驚きの展開のハロウィン・ファンタジーです。楽しませていただきました。
by SORI (2022-10-27 06:51)
<青山実花さん>
ありがとうございます。
楽しい思い出ができてよかったですね^^
私の夫も、割と裏方の仕事をしています。
夜中に働くこともたまにあります。
by リンさん (2022-10-27 17:29)
<ぼんぼちぼちぼちさん>
ありがとうございます。
パーティとか楽しいけど、後片付けをする人は必ずいますものね。
そういう人たちにスポット当ててみました。
by リンさん (2022-10-27 17:41)
<SORIさん>
ありがとうございます。
ハロウィン、今年は盛り上がりそうですね。
by リンさん (2022-10-27 17:42)