行列の女 [男と女ストーリー]
信号待ちの車の中から、ラーメン屋の行列を見ていた。
人気のラーメンに、20人ほどが並んでいる。
その中に、サキがいた。思わず「ウソだろ」とつぶやいた。
サキは僕の元カノで、行列が大嫌いだった。
「ラーメン食べるために並ぶなんてバカみたい。絶対に嫌よ。行列に並ぶくらいならカップ麺を食べるわ」
そう言っていたサキが行列に並んで、楽しそうに笑っている。
隣にいるのは新しい彼だろうか。背の高い男と寄り添っている。
クラクションを鳴らされて、車を発進させた。
別れて3年。僕たちはとてもうまくいっていたけど、突然フラれた。
行列も人混みも嫌いなサキに合わせて、デートはもっぱら家。
テレビで行列の店やイベントを見て「うんざりするわ。バカみたい」と顔をしかめたサキに、「本当にそうだね」と一緒に笑った。
そんなサキが、あんなに楽しそうに行列に並んでいたなんて。
人って変わるんだな。
その日をきっかけに、サキを見かけることが多くなった。
サキはいつも行列に並んでいた。
人気スイーツの店、テーマパークのアトラクション、ショッピングモールのくじ引き。
男と一緒の時もあれば、ひとりの時もある。
いつでもサキは楽しそうに並んでいた。
そしてとうとう、サキが僕に気づいた。
人気のホットドック売るキッチンカーに並んだ時、僕の前にサキがいた。
「あれ? やだ、久しぶりね」
「3年ぶりだね」
「あっ、そうか。ここ、あなたの会社の近くだったね」
「うん。たまに買いに来るんだ。サキはどうして?」
「彼の家がこの近くなの」
「ふうん、そうなんだ。前に見かけたことあるよ。背の高い人だね」
「うん。すごいイケメンなの。5人待ちだったの」
「5人待ち?」
「そう、やっと順番が来たの。待った甲斐があったわ。今はすごく幸せ」
「待つの、嫌いじゃなかった?」
「たくさん待つからこそ、本当に欲しいものに出会えるの。あたし、それが解ってから待つのが楽しくて」
「へえ」
「簡単に手に入るものってつまらないし、飽きるのよ。物も男もね」
「へ、へえ」
「今の彼は2年も待ったのよ」
「2年・・・」
かつてサキは言っていた。
「レストランの予約が2年先まで埋まってるなんて信じられない。そんな先のことわからないわよねえ。本当にバカみたい」
人って変わるな。
「あたし、今すごく頑張ってるの。6番目に彼を取られないようにしなくちゃね」
サキはキラキラしていた。きれいになった。
チリドックを2個買って、楽しそうに帰って行った。
ひとりで食べたチリドックは、並んだ割にたいして美味しくなかった。
人気のラーメンに、20人ほどが並んでいる。
その中に、サキがいた。思わず「ウソだろ」とつぶやいた。
サキは僕の元カノで、行列が大嫌いだった。
「ラーメン食べるために並ぶなんてバカみたい。絶対に嫌よ。行列に並ぶくらいならカップ麺を食べるわ」
そう言っていたサキが行列に並んで、楽しそうに笑っている。
隣にいるのは新しい彼だろうか。背の高い男と寄り添っている。
クラクションを鳴らされて、車を発進させた。
別れて3年。僕たちはとてもうまくいっていたけど、突然フラれた。
行列も人混みも嫌いなサキに合わせて、デートはもっぱら家。
テレビで行列の店やイベントを見て「うんざりするわ。バカみたい」と顔をしかめたサキに、「本当にそうだね」と一緒に笑った。
そんなサキが、あんなに楽しそうに行列に並んでいたなんて。
人って変わるんだな。
その日をきっかけに、サキを見かけることが多くなった。
サキはいつも行列に並んでいた。
人気スイーツの店、テーマパークのアトラクション、ショッピングモールのくじ引き。
男と一緒の時もあれば、ひとりの時もある。
いつでもサキは楽しそうに並んでいた。
そしてとうとう、サキが僕に気づいた。
人気のホットドック売るキッチンカーに並んだ時、僕の前にサキがいた。
「あれ? やだ、久しぶりね」
「3年ぶりだね」
「あっ、そうか。ここ、あなたの会社の近くだったね」
「うん。たまに買いに来るんだ。サキはどうして?」
「彼の家がこの近くなの」
「ふうん、そうなんだ。前に見かけたことあるよ。背の高い人だね」
「うん。すごいイケメンなの。5人待ちだったの」
「5人待ち?」
「そう、やっと順番が来たの。待った甲斐があったわ。今はすごく幸せ」
「待つの、嫌いじゃなかった?」
「たくさん待つからこそ、本当に欲しいものに出会えるの。あたし、それが解ってから待つのが楽しくて」
「へえ」
「簡単に手に入るものってつまらないし、飽きるのよ。物も男もね」
「へ、へえ」
「今の彼は2年も待ったのよ」
「2年・・・」
かつてサキは言っていた。
「レストランの予約が2年先まで埋まってるなんて信じられない。そんな先のことわからないわよねえ。本当にバカみたい」
人って変わるな。
「あたし、今すごく頑張ってるの。6番目に彼を取られないようにしなくちゃね」
サキはキラキラしていた。きれいになった。
チリドックを2個買って、楽しそうに帰って行った。
ひとりで食べたチリドックは、並んだ割にたいして美味しくなかった。
2024-05-03 23:04
nice!(11)
コメント(8)
映画のワンシークエンスみたいだなあと、思いやした!
サキの台詞も、映画に使ったらキマりそう!って思いやした!
by ぼんぼちぼちぼち (2024-05-05 09:49)
サキさんが楽しそうで、
幸せそうなので、
無問題ですね^^
元カレと別れたのが
3年前ですから、
2年待った今の彼とは、
被ってもいないし。
ただ、そんなに変わってしまった
サキさんに、
元カレはショックでしょうけれど^^;
by 青山実花 (2024-05-07 06:57)
最後のしめの一行が良かったです。
by 雫石鉄也 (2024-05-07 13:29)
リンさんさん おはようございます。
淡々と流れる物語なのに、不思議な雰囲気が伝わってくる魅力てきな物語に読み入ってしまいました。
by SORI (2024-05-10 05:22)
<ぼんぼちぼちぼちさん>
ありがとうございます。
サキのように、男が傷つくようなことをサラっと言っちゃう女性、いますよね。
「私はさっさと次に行ってます」みたいな^^
by リンさん (2024-05-16 11:52)
<青山実花さん>
ありがとうございます。
彼女は、今まで自分に合わせてくれる人とばかり付き合っていたのでしょうね。
だからうまくいかないことが分かって、今は必死になってる。
6番目に取られないようにしないとですね^^
by リンさん (2024-05-16 11:57)
<雫石鉄也さん>
ありがとうございます。
並んで手に入れても、おいしくないものもあるって思いたかったんでしょね。
by リンさん (2024-05-16 11:59)
<SORIさん>
ありがとうございます。
あちこちで、行列出来てますよね。
私は食べ物の行列には並びません。
早く食べたいから(笑)
by リンさん (2024-05-16 12:31)