小さな宇宙人 [SF]
庭で宇宙船を見つけた。
宇宙船といっても、とても小さい。よくできたプラモデルみたいだ。
中から、宇宙人が出て来た。
宇宙人もとても小さくて、可愛いお人形みたいだ。
何か言っていたけど、声が小さい上に宇宙語だからちんぷんかんぷん。
どうやら宇宙船が壊れてしまったみたい。
宇宙人は、なかなかの美少年だった。
エメラルド色の瞳がとてもステキ。
私は、宇宙人と暮らし始めた。
小さなお部屋にベッドを作り、ミニチュアの椅子や食器を買ってきて与えた。
料理を小さく切り分けてあげたら、あっという間に平らげた。
ペットを飼っているみたいで楽しかったけど、宇宙人はちっとも私に懐かない。
そもそも言葉が違うから、意思の疎通ができない。
少しでも地球の言葉を覚えさせるために、本を読んであげようと思った。
だけど私の部屋にはマンガしかない。
「名探偵コナンとちびまるこちゃん、どっちがいい?」
無視された。
宇宙人は不愛想だけど、ごはんだけはよく食べた。
だから私は、毎日張り切って料理した。誰かのために作るって、楽しいことなのね。
ある日、部屋から宇宙人の泣き声が聞こえた。
自分の星が恋しいのだ。
何とか宇宙船を直してあげたいけれど、私にそんなスキルはない。
専門家に相談しようか。だけど騒がれて世間にさらされたら可哀想。
だけど宇宙人は、毎日泣いている。
もうこれ以上、ここに置いておくわけにはいかない。
私は、宇宙科学研究所に連絡して、極秘に会ってもらった。
小さな研究室で、専門の教授に見てもらった。
「これが宇宙船です。うちの庭に不時着したんです」
「ほう、なるほど。確かに地球の物とは異なるようだ」
「直りますか?」
「いや、物質を調べなければ何とも言えない。ところで、その宇宙人はどこにいる?」
私は、カバンから宇宙人を出した。
「なんて小さい。いや、本当はもっと大きいのかもしれん。重力を軽くするために、体のサイズを変えているのかも。じつに興味深い。君、この宇宙人を詳しく調べたい。私に預けてくれないだろうか」
教授は興奮していた。
「宇宙には、まだ未知のことがたくさんある。さあ、その宇宙人をよく見せてくれ」
教授は、宇宙人を両手で抱えた。
そのときだった。
宇宙人の頭がぱっかり割れて、グロテスクな赤い触角が現れた。
するする延びた触角は、教授の耳に入り込み、ずるずると教授の脳みそを吸い取った。
「えっ、教授大丈夫? どういうこと?」
全て吸い尽くした宇宙人は、元の小さな美少年に戻り、流暢な地球の言葉で話した。
「地球人の高い知能を頂きたかったのさ。あんたじゃダメだ。頭悪そうだから」
宇宙人は、たった今吸収した教授の知能を使い、宇宙船を直し始めた。
「こりゃあ、なかなかの知能だ」
そう言って、宇宙人は宇宙船に乗り込んだ。
「直ったの? えっ? 帰るの?」
「たまたま不時着しただけだ。地球に用はない。あっ、そうだ。あんた、頭悪いけど、料理だけはうまかったぜ」
宇宙人はあっという間に見えなくなった。
私は、焦点の合わない目をした教授と一緒に、いつまでも空を見ていた。
「えへ、料理、褒められちゃった」
SFでいいのか、これ(笑)
宇宙船といっても、とても小さい。よくできたプラモデルみたいだ。
中から、宇宙人が出て来た。
宇宙人もとても小さくて、可愛いお人形みたいだ。
何か言っていたけど、声が小さい上に宇宙語だからちんぷんかんぷん。
どうやら宇宙船が壊れてしまったみたい。
宇宙人は、なかなかの美少年だった。
エメラルド色の瞳がとてもステキ。
私は、宇宙人と暮らし始めた。
小さなお部屋にベッドを作り、ミニチュアの椅子や食器を買ってきて与えた。
料理を小さく切り分けてあげたら、あっという間に平らげた。
ペットを飼っているみたいで楽しかったけど、宇宙人はちっとも私に懐かない。
そもそも言葉が違うから、意思の疎通ができない。
少しでも地球の言葉を覚えさせるために、本を読んであげようと思った。
だけど私の部屋にはマンガしかない。
「名探偵コナンとちびまるこちゃん、どっちがいい?」
無視された。
宇宙人は不愛想だけど、ごはんだけはよく食べた。
だから私は、毎日張り切って料理した。誰かのために作るって、楽しいことなのね。
ある日、部屋から宇宙人の泣き声が聞こえた。
自分の星が恋しいのだ。
何とか宇宙船を直してあげたいけれど、私にそんなスキルはない。
専門家に相談しようか。だけど騒がれて世間にさらされたら可哀想。
だけど宇宙人は、毎日泣いている。
もうこれ以上、ここに置いておくわけにはいかない。
私は、宇宙科学研究所に連絡して、極秘に会ってもらった。
小さな研究室で、専門の教授に見てもらった。
「これが宇宙船です。うちの庭に不時着したんです」
「ほう、なるほど。確かに地球の物とは異なるようだ」
「直りますか?」
「いや、物質を調べなければ何とも言えない。ところで、その宇宙人はどこにいる?」
私は、カバンから宇宙人を出した。
「なんて小さい。いや、本当はもっと大きいのかもしれん。重力を軽くするために、体のサイズを変えているのかも。じつに興味深い。君、この宇宙人を詳しく調べたい。私に預けてくれないだろうか」
教授は興奮していた。
「宇宙には、まだ未知のことがたくさんある。さあ、その宇宙人をよく見せてくれ」
教授は、宇宙人を両手で抱えた。
そのときだった。
宇宙人の頭がぱっかり割れて、グロテスクな赤い触角が現れた。
するする延びた触角は、教授の耳に入り込み、ずるずると教授の脳みそを吸い取った。
「えっ、教授大丈夫? どういうこと?」
全て吸い尽くした宇宙人は、元の小さな美少年に戻り、流暢な地球の言葉で話した。
「地球人の高い知能を頂きたかったのさ。あんたじゃダメだ。頭悪そうだから」
宇宙人は、たった今吸収した教授の知能を使い、宇宙船を直し始めた。
「こりゃあ、なかなかの知能だ」
そう言って、宇宙人は宇宙船に乗り込んだ。
「直ったの? えっ? 帰るの?」
「たまたま不時着しただけだ。地球に用はない。あっ、そうだ。あんた、頭悪いけど、料理だけはうまかったぜ」
宇宙人はあっという間に見えなくなった。
私は、焦点の合わない目をした教授と一緒に、いつまでも空を見ていた。
「えへ、料理、褒められちゃった」
SFでいいのか、これ(笑)
2024-05-24 15:23
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コメント(8)
SFです!
ブラックユーモアで、怖いけど、ユーモラスですね。
脳みそを吸い取って自分の能力にする冷酷さと、宇宙船が直れば地球に用はないというドライさのバランスも面白いです。
そのくせ、料理をほめてくれるというさりげなくイケメンな心配り……。
存外、SFじゃなくて、道で拾ったイケメンを家に入れたら金を取られたけど、別れ際に優しい言葉をもらったから憎めない、みたいな状況かも。
by しろまめ (2024-05-24 17:17)
リンさんさん おはようございます。
驚きの展開の宇宙物に感動しました。宇宙人あってみたいです。
by SORI (2024-05-25 03:11)
ユーモラスでありつつも、怖いお話しでやすね!
主人公の女性、お料理だけは褒めてもらえて、ちょっと良かったでやすね!
by ぼんぼちぼちぼち (2024-05-26 08:56)
SF。これでいいんです。
by 雫石鉄也 (2024-05-27 13:19)
<しろまめさん>
ありがとうございます。
しろまめさんの例え話、面白い。
まさにその通りですね(笑)
by リンさん (2024-05-31 11:16)
<SORIさん>
ありがとうございます。
宇宙人、怖いけど会ってみたいですね。
脳みそを吸われないように気を付けなければ^^
by リンさん (2024-05-31 11:17)
<ぼんぼちぼちぼちさん>
ありがとうございます。
そうですね。この女はノー天気だけど、教授にしてみたらたまったもんじゃないですよね(笑)
by リンさん (2024-05-31 11:18)
<雫石鉄也さん>
ありがとうございます。
SFでよかったですね。ホッとしました^^
by リンさん (2024-05-31 11:19)