大人VS12歳 [男と女ストーリー]
小6の夏休みは散々だ。楽しいことなど何もない。
1か月前から、パパが家に帰って来なくなった。
会社の近くの小料理屋の女と仲良くなって、そのまま小料理屋に住み着いたんだって。
「性悪女に胃袋つかまれた」ってママは言ってた。
無理もないと思う。
だってパパは毎日仕事で帰りが遅くて、冷え切った料理を自分でチンして食べてた。
それなら会社の近くで温かいご飯を食べた方がいい。
そしてお気に入りの小料理屋を見つけて、たちまち胃袋をつかまれたんだ。
パパは家に帰らないけど、パパの給料はママが握っているから、困ることはない。
だけどママはこの1か月、昼からお酒を飲んで、グダグダとパパの悪口ばかり。
「絶対離婚はしないから。料理が上手いだけの性悪女に負けるもんか」
ママは泣いてばかりいるけど、一番の被害者はあたしだよ。
12歳の成長期に、カップ麺と菓子パンとコンビニ弁当の夏休み。
あたしも誰かに胃袋つかまれたいよ。
そんな時、小料理屋の女が訪ねて来た。
ママは「会いたくない」と出かけちゃうし、仕方ないからあたしが相手をした。
「そう、奥さんいないのね。仕方ないな。お嬢さんにこんなこと言いたくないんだけど、正直迷惑なのよ。そろそろ迎えに来てくれないかしらね、お父さんのこと」
「はあ? 何ですか、それ」
「こっちもね、2,3日だと思ったのよ。私もね、そういうの、久しぶりだったらじゃない。最初は楽しかったのよ。張り切って朝ごはんなんか作っちゃってね。でもねえ、そろそろ鬱陶しくなってきて。それにほら、あんたのお父さん、キャッシュカード奥さんに握られてるでしょ。金もない男にタダ酒飲まれてさ、もういい加減嫌になって」
「だったら追い出せばいいじゃないですか」
「それがね、客としてはいいのよ。楽しい酒だし、会社の人いっぱい連れて来てくれるし、何より料理をすごく褒めてくれるからね。だからさあ、そっちから迎えに来てよ。あの人もね、何だかんだ娘が可愛いのよ。迎えを待ってるんじゃないかしら」
ああ、どいつもこいつも、大人って本当に勝手だな。
「おばさん、あたし、関係ないです」
「そんなことないでしょ。娘なんだから」
「あたし、パパの子どもじゃないから。ママが不倫して出来た子だから」
「えっ、うそ。だって……」
「本当です。この前ママが酔っぱらって言ったんです。パパとあたしは血がつながってないんです。だからどこで何をしようと関係ないです。パパ、いや、12歳まで育ててくれた赤の他人さんに、そう言ってください」
「わかったわ」と、小料理屋の女は、複雑な顔で帰って行った。
その夜、パパが1カ月ぶりに帰って来た。
「ちょっとあんた、どの面下げて帰って来たのよ」
ママのグーパンチに、すかさずパパが反論した。
「ミクが、俺の子じゃないってどういうことだよ」
「はあ? 何言ってるの? あんたの子に決まってるでしょう。顔も性格もそっくりじゃないの。まったく腹が立つほどそっくりよ」
そう、パパとあたし、誰が見ても親子とわかるほどそっくり。
DNA鑑定しなくても、何の疑いもなく親子。
小料理屋の女も、うすうす気づいたはず。
だけど追い出すきっかけになればと思って伝えたんだ。マジで性悪。
「ところであんた。1カ月も女のところに入り浸ってどういうつもり」
「いや、それは、その、住み込みで料理の修業をしてたんだ。定年後におまえと居酒屋でもやろうと思って」
「ほらね、うそつきなところも、ミクとそっくり」
あーあ、こんなパパとそっくりなのはマジで嫌だけど、始業式の前に解決してよかった。これで安心して学校に行けるよ。
給食、楽しみだな。
1か月前から、パパが家に帰って来なくなった。
会社の近くの小料理屋の女と仲良くなって、そのまま小料理屋に住み着いたんだって。
「性悪女に胃袋つかまれた」ってママは言ってた。
無理もないと思う。
だってパパは毎日仕事で帰りが遅くて、冷え切った料理を自分でチンして食べてた。
それなら会社の近くで温かいご飯を食べた方がいい。
そしてお気に入りの小料理屋を見つけて、たちまち胃袋をつかまれたんだ。
パパは家に帰らないけど、パパの給料はママが握っているから、困ることはない。
だけどママはこの1か月、昼からお酒を飲んで、グダグダとパパの悪口ばかり。
「絶対離婚はしないから。料理が上手いだけの性悪女に負けるもんか」
ママは泣いてばかりいるけど、一番の被害者はあたしだよ。
12歳の成長期に、カップ麺と菓子パンとコンビニ弁当の夏休み。
あたしも誰かに胃袋つかまれたいよ。
そんな時、小料理屋の女が訪ねて来た。
ママは「会いたくない」と出かけちゃうし、仕方ないからあたしが相手をした。
「そう、奥さんいないのね。仕方ないな。お嬢さんにこんなこと言いたくないんだけど、正直迷惑なのよ。そろそろ迎えに来てくれないかしらね、お父さんのこと」
「はあ? 何ですか、それ」
「こっちもね、2,3日だと思ったのよ。私もね、そういうの、久しぶりだったらじゃない。最初は楽しかったのよ。張り切って朝ごはんなんか作っちゃってね。でもねえ、そろそろ鬱陶しくなってきて。それにほら、あんたのお父さん、キャッシュカード奥さんに握られてるでしょ。金もない男にタダ酒飲まれてさ、もういい加減嫌になって」
「だったら追い出せばいいじゃないですか」
「それがね、客としてはいいのよ。楽しい酒だし、会社の人いっぱい連れて来てくれるし、何より料理をすごく褒めてくれるからね。だからさあ、そっちから迎えに来てよ。あの人もね、何だかんだ娘が可愛いのよ。迎えを待ってるんじゃないかしら」
ああ、どいつもこいつも、大人って本当に勝手だな。
「おばさん、あたし、関係ないです」
「そんなことないでしょ。娘なんだから」
「あたし、パパの子どもじゃないから。ママが不倫して出来た子だから」
「えっ、うそ。だって……」
「本当です。この前ママが酔っぱらって言ったんです。パパとあたしは血がつながってないんです。だからどこで何をしようと関係ないです。パパ、いや、12歳まで育ててくれた赤の他人さんに、そう言ってください」
「わかったわ」と、小料理屋の女は、複雑な顔で帰って行った。
その夜、パパが1カ月ぶりに帰って来た。
「ちょっとあんた、どの面下げて帰って来たのよ」
ママのグーパンチに、すかさずパパが反論した。
「ミクが、俺の子じゃないってどういうことだよ」
「はあ? 何言ってるの? あんたの子に決まってるでしょう。顔も性格もそっくりじゃないの。まったく腹が立つほどそっくりよ」
そう、パパとあたし、誰が見ても親子とわかるほどそっくり。
DNA鑑定しなくても、何の疑いもなく親子。
小料理屋の女も、うすうす気づいたはず。
だけど追い出すきっかけになればと思って伝えたんだ。マジで性悪。
「ところであんた。1カ月も女のところに入り浸ってどういうつもり」
「いや、それは、その、住み込みで料理の修業をしてたんだ。定年後におまえと居酒屋でもやろうと思って」
「ほらね、うそつきなところも、ミクとそっくり」
あーあ、こんなパパとそっくりなのはマジで嫌だけど、始業式の前に解決してよかった。これで安心して学校に行けるよ。
給食、楽しみだな。
2024-09-05 10:37
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コメント(10)
娘さん目線から見た物語なのでやすね。
この娘さん、今回の一件で、またひとつ大人に近づけやしたね。
そう、大人の世界って、キレイじゃないもんね、ウソだらけだもんね!
by ぼんぼちぼちぼち (2024-09-06 11:41)
主人公のミク。おもしろいですね。
この子の成長がたのしみです。
by 雫石鉄也 (2024-09-06 13:51)
お嬢さん、あんまりウソが上手だと、将来は作家になっちゃうよ!
by しろまめ (2024-09-06 21:32)
浮気しているつもりでも、
案外、相手は、
面倒くさいと思っているパターンがあるのですね^^
噓も方便ですね、
それで全てが丸く収まるなら^^
by 青山実花 (2024-09-07 09:56)
リンさんさん こんにちは
普通は、こじれてしまう流れでしたが、12歳の娘さんの機転で解決してしまいましたね。素晴らしい流れを考得てしまうところが、リンさんさんですね。
by SORI (2024-09-07 15:34)
<ぼんぼちぼちぼちさん>
ありがとうございます。
親がダメダメだと、子どもはしっかりするんでしょうかね^^
あまり大人になるのも困りものですね^^
by リンさん (2024-09-12 11:38)
<雫石鉄也さん>
ありがとうございます。
12歳にしてなかなかの策略家ですね。
どんな大人になるのでしょう。
by リンさん (2024-09-12 11:40)
<しろまめさん>
ありがとうございます。
そうですね。
芥川賞を取るかもしれないです(笑)
by リンさん (2024-09-12 11:41)
<青山実花さん>
ありがとうございます。
結局、ひとりの方が気楽ってことですね。
2,3日ならいいけどって、旅行と同じかな(笑)
by リンさん (2024-09-12 11:45)
<SORIさん>
ありがとうございます。
この子は、自分が安心して学校に行けるように頑張ったんですね。
親がしっかりしないとダメですよね~
by リンさん (2024-09-12 11:46)