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ハムレター [コメディー]

天国へ行ったハムスターから、手紙が来た。
秋の空をふわふわ舞いながら、わが家の庭に落ちてきた。

拝啓
スズキ家の皆様、お元気でお過ごしであろうか。
生前はずいぶんと世話になった。
部屋の適度な温度調節、バランスの良い食事、こまめなトイレ掃除など、感謝の念に堪えない。
ところで、風の噂で聞いたのだが、ネコを飼い始めたそうではないか。
いや、まさか、私が死んでひと月も経たないうちにネコを飼うなんて、スズキ家の面々がそのような薄情なことをするわけがないと耳を疑ったが、ふと思い出したのだ。
母親が電話で
「えー、ネコ? あー、飼いたいけど、うちにはハムスターがいるからな~」
と、残念そうに言っておったのを。
そういうことか、私が死んだから、これ幸いとネコを飼ったのか。
末娘など、あんなに泣いておったのに、今ではネコに首ったけだそうだな。
しかも、私には「ゴンタ」などという古めかしい名前をつけたくせに、ネコの名前は「ショコラ」だと?
まあよい。死人に口なし。死んだハムスターにも口なしだ。

ところで、私は生前の行いが大変良かったということで、かねてより願い出ていた人間への生まれ変わりを許可された。
私は切に願った。スズキ家の家族になりたいと。
じきに長女が身ごもるであろう。去年親の反対を押し切って、ミュージシャンと結婚した長女だ。
恐らく自分たちだけでは養えず、実家に転がり込むであろう。
私は、その長女の子供として生まれ変わるのだ。
もちろん、前世でハムスターだったことなどすっかり忘れている。
しかし本能というのは厄介なものである。
砂遊びが好きだったり、水を怖がったりするであろう。
そして何よりネコとは相性が悪い。
これから生まれる長女の子供に、ネコは近づけちゃいかん。出来ればネコは、どこかよその家に引き取ってもらうことも視野に入れてはもらえぬだろうか。
可愛い孫のため、いや、私のために。
以上、私からの切実なる願いである。
敬具


ふうん。ハムスターからの手紙か。
なるほど、ハムスターの生まれ変わりの赤ん坊がやってくるのね。
おもしろくなりそうだわ。

「ショコラ、お庭で何してるの? あら、なに? その紙、ビリビリに破っちゃって読めないじゃないの。もう、いたずらっ子ね」

ニャ~(たっぷり可愛がってあげる)

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うちのハムちゃんは元気です。



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