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おとぎ話(笑)23 [名作パロディー]

<シンデレラ>

「お義母さま、お義姉さま、私もお城の舞踏会に行きたいわ」
「おまえなんかが行けるわけないでしょ」
「そうよ。ドレスもないくせに」
「あんたは掃除でもしてな」

シクシク…シンデレラが泣いていると、黒い服の女が現れました。
「シンデレラ、泣くのはおやめなさい」
「もしかして、魔法使い? ドレスと馬車を出してくださるの?」
「いいえ、私は世界ハラスメント協会から参りました。さあ、今すぐ義母と義姉をパワハラで訴えましょう。泣き寝入りはいけません。立ち上がるのです!」

「いや、それよりドレスと馬車を……」


<笠地蔵>

「峠のお地蔵さんが雪まみれだったから、笠をかぶせてあげたよ」
「まあ、おじいさん、それはいいことをしましたね。もしかしたら今夜、お地蔵さんがお礼に来るかもしれませんよ」
「米に野菜に大判小判、いい正月になりそうだ」
「あ、おじいさん、噂をすれば玄関先で物音が!」
おじいさんとおばあさんは玄関の扉を開けました。
そこには、地蔵にかぶせた笠と、わずかばかりのレンタル料が置いてありました。

「ま……毎度あり……」


<みにくいアヒルの子>

『みにくいアヒルは、美しい白鳥になって大空へ飛び立ちましたとさ。おしまい』

「どう? 面白かった?」
「つまり、アヒルだと思っていた鳥は、実は白鳥だったってこと?」
「ええ、そうよ」
「ふうん。そういうことって稀にあるよね」
「……そうね」
「お母さん、実はボク、男に生まれたけど実は女なんだ」
「まさかのカミングアウト!」


<マッチ売りの少女>

少女がマッチを擦ると、炎の中にクリスマスのご馳走が浮かび上がりました。
七面鳥、ローストビーフ、マッシュポテト、アンチョビサラダ。
「うーん、この盛り付けは、才能ナシね」(プレバト見てる人しかわからないネタ)


<おむすびころりん>

おじいさんがおむすびを食べようとしたら、手が滑ってコロコロ転がり穴に落ちてしまいました。
追いかけたおじいさんも、穴に落ちてしまいました。

「おや、ここはネズミの国かい」
「おじいさん、このおむすびの中身はなあに?」
「梅干し? 昆布? おかか? それとも鮭? ツナマヨ?」
「ただの握り飯じゃよ。血圧が高いもんでなあ、塩分は控えているんじゃよ」

「じゃあ、いらな~い」


ネタに困ると登場するこのシリーズも、23作目になりました。
いつまで続くか……。


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神様派遣します [コメディー]

「はい、神様派遣センターです。どちらの神様をご所望でしょうか。はあ、学業の神様ですか。申し訳ございません。学業の神様は3月まで予約が入っておりまして。キャンセル待ちが125人となっております。なにぶん受験シーズンでございますから。安産の神様でしたら空きがございますが。それでは意味がない……。ごもっともでございます」

密着24時間。今もっとも注目される神様派遣業に密着した。
さっそく話を聞いてみよう。

「ええ、全国の神社の神様をご用意しております。今はみなさん、仕事やPTAや趣味で忙しいですからね、買い物もネットでする時代、神社に足を運ばずに神様を参拝できるシステムは、大変好評をいただいています」

センター長の木村は言う。
神様を商売にするなど言語道断との批判もあったが、いくつもの困難を乗り越えて来たという。

「トラブルも、たまにはありますよ。何でもいいから神様お願いっていうお客さまに、疫病神をお送りして叱られたことがあります」

木村は笑った。失敗を糧に、会社は成長したという。
こうした中にも、依頼電話は鳴り続ける。

「はい、神様派遣センターです。縁結びの神様ですか? はい、ちょうど空きがございます。すぐに向かっていただきますので、お名前とご住所を……はい? 家に来られるのは困る。たとえ神様でも他人を部屋に上げるのは嫌だと……。はあ、承知いたしました。では、ネット参拝をご希望ですね。パソコンですか?スマートフォンですか?……」

最近は、このようなネット参拝も増えているという。
神様派遣センターは24時間営業である。
深夜こそアルバイトに任せているが、殆どの時間はセンター長の木村自らが対応しているという。
これだけ依頼が多いと、相当の儲けがあるのではないだろうか。
赤裸々に尋ねてみた。

「儲けなんて全然ありませんよ。本当です。だってここには、貧乏神が常在しているんですよ。貧乏神を希望するお客様などいませんでしょう。何ならあなた、連れて帰ってくれます?」

木村は笑う。丁重にお断りした。
依頼電話は鳴り続ける。

「「はい、神様派遣センターです。あ、先ほどのお客様。学業の神様を予約なさいますか? 126人目のキャンセル待ちになりますが……はい? この際だから安産の神様でいい? 左様でございますか。では、安産の神様を手配いたします。お名前とご住所を……」

困った時の神頼み。どんな要望にも応えると、木村は笑った。

「だって、お客さまは神様ですもの」

密着24時。
神様派遣センターは、今日も眠らない。


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成人の日

一人娘の里奈が成人式を迎えた。
「振袖いらないからさ、その分のお金ちょうだい」
などとほざいて妻を激怒させたドライな娘だ。
結局観念して、里奈は妻が用意した振袖を着て出かけていった。

成人式は午前中に終わるが、バイト仲間と遊びに行くから帰らないという。
「昔は親戚が集まってお祝いしたものだけどな」
「いつの話? 今はそのまま同窓会に行ったり、彼氏とデートしたりするものよ」
「ふうん」
朝も着付けだ、ヘアメイクだと言って早朝に出かけたから、ろくに顔も見ていない。
父親なんてそんなものか。
ごろんと横になり、そのまま眠ってしまった。

ふと気配を感じて起き上がると、赤い振袖を着た里奈がいた。
「なんだ、バイト仲間と遊びに行ったんじゃないのか」
「え? 何言ってるの。工場で働いているのにアルバイトなんかしたらクビになっちゃうわよ」
笑ながら振り向いたのは、里奈ではなかった。
妹の陽子だ。とっくに死んだ妹の陽子が振袖を着て笑っている。
これは夢か。
「お兄ちゃん、この振袖、すごく評判良かったよ。無理させちゃってごめんね」
僕たちには父親がいなかった。
裕福ではなかったけど、母と金を出し合って陽子に振袖を買ってあげたのだ。
「私、この振袖を一生着るわ」
「バカだな。結婚したら振袖は着れないんだぞ」

陽子は、結婚しないまま25歳で逝った。
久しぶりに陽子の夢を見た。そういえば里奈は、少し陽子に似ている。

目が覚めたら1時半だった。昼飯も食わずに眠っていたようだ。
「お父さん、やっと起きた」
「夜眠れなくても知らないからね」
里奈がいた。赤い振袖を着ている。
「里奈、バイト仲間と遊びに行くんじゃないのか」
「中止になったの。急にみんな都合悪くなって。訳わかんないけど、あたしも何となく家に帰った方がいいような気がして」
「そうか」
生意気な里奈が、化粧のせいかやけにきれいに見える。
「今から3人で食事に行かない? 家族でお祝いしましょう」
「うん。じゃあ、着替えるか」
「お父さん、早くしてよね。お腹ペコペコ」
立ち上がり、もう一度里奈を見た。
「この振袖は、もしかして……」
「陽子ちゃんの振袖よ。よく似合っているでしょう」

あの夢の続きを思い出した。
「バカだな。結婚したら振袖は着れないんだぞ」
「じゃあ、お兄ちゃんが結婚して女の子が生まれたら、この振袖をあげる」
「ずいぶん先の話だな」
「そのときはみんなでお祝いしようね」

そうか。陽子が、里奈を家に帰してくれたのか。
どこかで陽子も祝ってくれているのかな。

3人で歩く街は、何だか少し照れくさかった。


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いつか、ママのように [公募]

鏡はうそつきだ。鏡にうつるわたしは、本当のわたしじゃない。
だって、パパもママもおばさんたちも、みんなわたしを「かわいい」というけれど、鏡にうつるわたしは、ちっともかわいくない。
鏡の中の世界は、うそばっかりだ。


私がそんなふうに思っていたのは幼稚園までで、小学校に入学すると、さすがに現実を思い知る。
私は決して、可愛い方ではなかった。
「かわいい」は、子ども全般に当てはまる言葉であり、それは顔ではなく仕草や言動に対するものだと知る。

ママは美人で、パパはハンサム。
美男美女のふたりから生まれたのに、なぜか私は全然似ていない。
腫れぼったい一重の目も、横に広がった丸い鼻も、何ひとつ似ていない。
「ママは美人なのにね」と陰で言う女子たちや、「おまえ、母ちゃんに全然似てねえな」と直接言ってくる無神経な男子たちに傷つき、その度私は鏡を見ながら泣きそうになる。

そして私は疑い始めた。もしかしたら、私はパパとママの本当の子どもではないのではないか。
どこかからもらわれたか、拾われて育ててもらっているのではないか。
「ママ、私は本当にパパとママの子どもなの?」
ついにママに尋ねたのは、小学三年生のときだった。ママは笑いながら言った。
「あなたは正真正銘、パパとママの子どもだよ。足の指を見てごらん。ママとそっくりでしょう」
言われた通り、わたしの足の指は、細くて長くて、ママの足の指とそっくりだった。
「凛々しい眉毛は、パパにそっくりね」
太い眉毛は似たくはなかったけれど、確かにそっくりだ。とりあえずはホッとした。

「ねえママ、それじゃあ、私も大人になったらママみたいな美人になれる?」
「もちろん、なれるわよ」
ママは、わたしの髪を撫でながら言った。
「だけどね、そのためには内面を磨かないとね。たくさん勉強して、いろんなことを学ぶの。人には優しく、他人を羨まない、そして無駄遣いをしないこと」
ママはそう言ってウインクをした。
それはきっと、大人が子供を躾けるための魔法みたいな言葉だ。
だけど私は信じた。ママのような美人になりたかったから。

それから私は、一生懸命勉強をした。たくさんの知識を身に着けて、成績はいつも一番だった。
友達にも優しくした。人が嫌がることも進んでやった。
おかげで私の容姿をバカにする子はいなくなって、学級委員や生徒会役員に、いつも推薦された。
言いつけを守って無駄遣いもしなかった。
正直、それが美人になることと関係あるのか疑問だったけれど、お年玉は全部貯金した。
高校は、地元一の進学校に進み、一流の大学に入り、そしてこの春、誰もが羨む一流企業に就職をした。

ママの言いつけを守りながら、私は毎朝毎朝、鏡を見た。
「今日はきれいになっているかな? 突然目が二重になっていないかな? 鼻がすらりと細くなっていないかな?」と。
だけど鏡に映っているのは、いつものさえない私だった。
どんなに内面を磨いたって、ちっとも変わらない。
メイクをするようになって少しはマシになったけれど、ママのような美人には程遠い。

研修を終えて希望の部署に配属された。
新入社員の中では仕事が出来る方だけど、課長のお気に入りは可愛い女子社員だ。
男性社員の接し方にも差があるような気がする。
仕事を頼むときの態度が、あの子と私とでは微妙に違う。
人を羨んではいけないと言い聞かせても、ため息ばかりの毎日だ。

入社して初めて行われた同期の飲み会に、私は誘われなかった。
誘われたのは可愛い女の子ばかりで、私は当然のようにその中には入れない。
胸の中の何かが爆発したように、私はママに泣きついた。

「ママの嘘つき。言いつけを守っても、ちっとも美人にならないわ」
 ママは、子どもの頃のように私の髪を優しく撫でた。
「言いつけを守ったから、いい会社に入れたでしょう? お給料もいいしボーナスもちゃんと出る。貯金もすぐに貯まるわ」
「お金ばかり貯まってもしょうがないよ」
「あなたの貯金が百万円になったら、いいお医者さまを紹介してあげるわ」
「お医者さま?」

「いい、一度にやっちゃだめよ。少しずつ、少しずつ直していくの」
「……ママ?」
 完璧に整った顔で、ママが微笑んだ。
一瞬ママの顔が、百万円に見えた。

++++++++++

公募ガイド「TO-BE小説工房」の落選作です。
課題は「鏡」でした。
現実離れした話が多かったようです。
そういえば、前回お知らせした百物語の本に、阿刀田先生のお話も入っています。


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掲載のお知らせ

あけましておめでとうございます
今年もよろしくお願いします

お正月、いかがお過ごすですか。
私は温泉に行ったり買い物に行ったり、日本経済を回してまいりました。
わが家の経済は破綻するかもしれませんが(笑)

新年早々、嬉しいお知らせがあります。
文溪社より発売された児童書
『5分ごとにひらく恐怖のとびら百物語⑤ 奇妙のとびら』
に、私の作品が載っています。

KIMG0843.JPG

1巻から5巻までのシリーズで、1冊に20話ずつ全部で百話の怖い話が載っています。
プロの作家さんと、一般公募の作品が一緒に載っています。
私の話は最後の5巻に載ったので、ようやく発売になりました。

筆名は変えてありますが、第84話のレクイエムという作品が私の物語です。
あまり怖くありませんので、怖いのが苦手な方も大丈夫。
よかったら読んでください。

地方の本屋には売ってないだろうなと思いながら、地元の本屋をのぞいたら
売ってた!!!
思わずちょっと目立つところに平積みしてきちゃった(笑)

みなさん、よかったらぜひぜひ、感想をお寄せください。
よろしくお願いします。


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