SSブログ

孫は来て良し、帰って良し

夏休みがもうすぐ終わる。ああ、長かった。
嫁がフルタイムで働いている間、孫たちを預かっている。
小学3年生と2年生の男の子ふたり。
ひとりだったらテキトーに済ませる昼食もちゃんと作る。
孫は可愛いけれど、毎日来られるとちょっとねえ~。

嫁は預けるのが当たり前のように、迎えに来ても手土産のひとつもない。
「お義母さん、お世話様。ちゃんと宿題やらせてくれました?」
ほぼ毎日、第一声がこれ。
「やってたわよ。この子たち、1日中机に向かっているのよ。もっと遊んだほうがいいんじゃないかって心配になっちゃうわ」
「それからお義母さん、おやつはほどほどにしてくださいね。晩ご飯食べなくなっちゃうから」
それはあなたが作る料理が不味いからでしょ。
なんてことは思っても言わない。
この年になって嫁姑バトルは避けたいもの。

私たち世代って、つくづく損だ。
姑に仕えて嫁いびりに耐えて、自分が姑になったときは、嫁の方がずっと強い。

「あなたたち、もう夏休みは終わりだけど、宿題は終わっているの?」
「残っているのは絵だけだよ」
「僕たち、おばあちゃんの絵を描くからモデルになって」
「まあ、私の絵を描くの?」
「うん、夏休みの思い出を描くんだけど、僕たちずっとおばあちゃん家にいたでしょう。だからね、夏休みの思い出はおばあちゃんなの」
やだ、何だか泣ける。
息子も嫁も忙しいから、どこにも連れて行ってもらえなかったのだろう。
「じゃあ、今からどこかへお出掛けする? 動物園か日帰り温泉でも行く?」
「いいよ。僕たち、この家がいい。ね、お兄ちゃん」
「うん。おばあちゃんの家が好きだよ。居心地がいいもん」
まあ、なんていい子たちでしょう。
ということは、嫁よりも私の方が好きってことかしら。
悪い気はしないわね。ちょっと優越感。

「おばあちゃん、動かないで。絵を描いてるんだから」
「はいはい。きれいに描いてちょうだいね」

孫たちは、ひいき目に観ても上手いと言えない絵を描いた。
全然似ていないけれど嬉しかった。
「ねえ、おばあちゃんの家、そんなに好き?」
ママよりおばあちゃんの方が好き? というニュアンスを込めて訊いてみた。
「うん、だってさ、ゲームやり放題だもん」
「ゲーム?」
「おばあちゃん、机に向かっていれば勉強してると思ってるでしょ」
「ママにはすぐにバレちゃうけど、おばあちゃん気づかなかったでしょ」
「冷房効いた部屋でゲーム三昧なんて、最高だよ」
ああ、そういうこと。
「ママには内緒だよ」
言えないわよ。あなたたちの成績が下がったら、わたしのせいにされちゃうわ。

長い夏休みが終わった。
「お義母さん、長い間ありがとうございました。これはほんの気持ちです。お友達と温泉でも行ってください」
嫁が旅行券をくれた。あら、意外と気が利くじゃないの。
「ありがとう。いいの? こんなにたくさん」
「ええ、冬休みの分も入ってますから」
ちゃっかりしてるね、相変わらず。

ああ、孫が帰ったら、何だか急に寂しくなっちゃった。
早く冬休み来ないかな。

にほんブログ村 小説ブログ ショートショートへ
にほんブログ村
nice!(9)  コメント(8)