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河原でバーベキュー [コメディー]

むかしむかしのお話じゃ。
10人の男女が、河原でバーベキューをしておった。
当時「合コン」と呼ばれる行事があってな、これもその一種じゃ。
男女の出会いの場というわけじゃ。

男たちは、ふだんはゲームばっかりしてるのに、いかにも慣れた手つきで水を汲んだりテントを立てたり「君たちは危ないから見てて」などとカッコいいことを言ったりするんじゃ。
女は女で、ふだんは母親任せのくせに、ここぞとばかり野菜を刻んだりするんじゃ。
「いつもやってます。お料理好きなんで」とか言いながら、上手く切れないと包丁のせいにするんじゃ。

腹も満たされ、数人のカップルも出来て、いい感じになってきたときじゃった。
突然雨が降って来たんじゃ。
そりゃあもう、バケツをひっくり返すような雨じゃった。
バケツと言うのは、水を汲んだりする道具じゃな。
おじいさんやおばあさんの家にはまだあるかもしれんから、今度行ったら見せてもらうとよいじゃろう。
さて、話を戻そう。
雨のせいで、川の水はみるみる増える。
わずか10分ほどで、10人は川の中州に取り残されてしまったんじゃ。

見よう見まねで立てたテントはあっという間に流され、勢いよく流れる川は、まるで恐ろしい宇宙怪獣のようにすべてを飲み込むんじゃ。
10人は木につかまって何とか耐えたが、足元まで水が迫ってきたんじゃ。
当時の人間にはテレパシーがなかったから、スマートフォンというツールを使って助けを呼んだんじゃ。しかし助けはなかなか来ない。
強風でヘリが飛ばせない上に、川の流れが早すぎて、近づけないんじゃ。
瞬間移動すればいいのにって? だから言ったじゃろう。
当時の人間には、テレパシーがないんじゃよ。

取り残された10人の男女は、もうカッコつけていられない。
自分だけでも助かりたくて、木に登る男。
こんな時でもブランドバッグだけは守ろうと必死で抱える女。
こんな時でも動画を撮ってネットにあげるやつ。「こりゃあ、百万再生いくぞ」と興奮しとったそうじゃ。

みんながそんなふうだから、ようやく救急隊員がやってきて
「女性から先に救助します」と言ったとき、
「なんだよ、男女平等って言いながら、女が先かよ。こんなときばかり」
「ぼく、体調が悪いので一番先じゃダメですか」
「お前らうるせえ。神代の昔から女の方がかよわいって決まってるんだよ。お前らみたいな小さい男と、二度と合コンするもんか」
まあ、なんというか。修羅場じゃな。
そういった様子を録画した動画が、歴史ライブラリーに保管してあるから、今度見に行くといいじゃろう。男女の本質がよくわかる。

さて、無事に助け出された10人は、それから二度と逢うことはなかったそうじゃ。
しかし女は逞しいもんじゃのう。
その数日後に、再び合コンをしたそうじゃ。
相手は、あの時助けてくれた5人の救急隊員だったそうじゃ。
めでたしめでたし。

さあ、わしの話はこれで終わりじゃ。
みんな気を付けて帰りなさい……はや!もういない。
味気ないな。テレポーテーション。
さて、伝統語りべ教室も終わったし、異星人交流パーティでも行くか。
天の川でバーベキューだ。可愛い子いるかな。
あ、時代は変わっても、やってることは変わらないかも。


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