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コタツを出した日 [コメディー]

ネコのミーコが寒そうだったから、コタツを出した。
鍋の支度ももう終わったし、ミーコとのんびり過ごしましょ。

長男が帰ってきて「おお、コタツだ!」と背中を丸めて足を入れた。
「やっぱコタツはいいねえ、お母さん」
普段は何を訊いても「別に」と「ふつう」と「ウザい」しか言わないのに、コタツってすごい。

長女が帰ってきて「コタツ出したんだ」と、嬉しそうに滑り込んだ。
「あったかいねえ、日本人はコタツだねえ」
普段は、スマホから目を逸らしたら魂を奪われると思っているような長女が、スマホそっちのけで暖を取っている。

夫が帰ってきた。
「今日はやけに賑やかだと思ったら、コタツを出したのか」
仏頂面でいつも疲れた顔の夫が、嬉しそうにコタツに入った。
のぼせたミーコがヨロヨロ出てきて、大きなあくびをして、みんなで笑った。

「コタツって本当にいいわね。出してよかったわ。今夜は鍋よ」
「やった! チゲ鍋希望」
「コラーゲン鍋がいいわ」
「お父さんはすき焼きがいいな」
「残念でした。寄せ鍋よ」
「なーんだ」とか「いいじゃん、美味そうだし」とか「写真撮ってインスタあげよう」とか、いつもよりもずっとずっと賑やかな食卓だった。
ああ、コタツって最高ね。

「あー、美味かった」
「あたし絶対太ったわ」
「お母さん、ビールもう一本」

「ちょっとあなたたち、少しは後片付け手伝ってよ」
「あー、無理。俺の下半身コタツ中毒で麻痺してる」
「コタツって、マジ沼だわ。抜けられない」
「お母さん、俺の代わりにトイレ行ってきて」
「うわ、なにそのオヤジギャグ。昭和か」
「コタツって喉乾くな。お母さん、ポカリある?」
「あたしウーロン茶」
「ビールまだ?」
「ニャー(ごはんコタツの中に持ってきて)」

おまえら、いい加減にしろよ。
私はコタツのコンセントを、こっそり抜いた。

****

新しいパソコンを買いました。
自分専用のパソコンが壊れて、家族と共有のものを使っていましたが。。。

パソコンを開くと、この通り
f6093cfc35a52399ef1843869a961f1c5a00041098b86f47e54255c2b3697e0c.0.jpg

寝ているすきにそうっと立ち上げると、気配に気づきやってくる。
KIMG1353.JPG

なぜか私にパソコンをやらせてくれない。
もう背に腹は代えられない。
自分専用の小さなノートパソコンを買いました。
サイズが小さいせいか、あまり邪魔されなくなりました。
ああ、やっとアップできた(笑)


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ハロウィンin渋谷 [コメディー]

「渋谷のスクランブル交差点に行ってみようよ」
ドラキュラが言った。
「ああ、ハロウィンか。そりゃあいいな」
フランケンが言った。
「だろ、みんな仮装してるから俺たち全然目立たない」
「うん。堂々と人混みを歩ける機会なんてないからね」
「いいわね、私もチンケな魔女の仮装見て笑いたいわ」
黒魔女が言った。

「お前も行くだろ」と言われて、僕は渋々うなづいた。
本当は、あまりこいつらと関わりたくはない。
だって僕は、こいつらのようなモンスターじゃないから。
僕は堂々と人混みも歩けるし、友達だっている(もちろん人間の)
だけどまあ、こいつらも陽の当たる場所を歩けない可哀想な奴らだ。
付き合ってやるか。

そんなわけでやってきた、ハロウィンの渋谷。
「へえ、見てよ、意外と本格的な仮装だわ」
「ミニスカナースのゾンビ、そそられるぜ」
「あの魔女、かわいいな」
「ちょっと、本物の美しい魔女がここにいるでしょ」
僕は黙って、後ろを歩いていた。

「あれ、タカシじゃね?」
声をかけてきたのは、大学の友人だった。
ゾンビの仮装をしていてもすぐに分かった。
今日は出来れば会いたくなかった。

「おまえの仲間、すげーな。本格的だな」
……そりゃあそうだろ。本物だからな。
「おまえは仮装しねえの?」
「ああ、うん、まあ」

その時、雲が切れて月が出た。
やべえ、今日は満月だった。
僕の手に、黒い毛が生え始め、服が破け、体中を覆った。
牙が生えて、目が光り、四つん這いになって吠えた。

「お、ついに出たな、狼男」
「それでこそ仲間だ」
「変身した彼、すごくセクシーね」
ああ、いやだいやだ。こんな体質。人間のほうがずっといい。
それよりも、大学の友人にバレちまったじゃないか。
どうしよう。

「タカシ、おまえの仮装、すげーな。ねえねえ、どうやったの? 本物の毛みたいだな。触っていい?」
あれ? まさか、バレてない?

渋谷のハロウィン、何でもアリだな。
来年も来よう。

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黒い財布と3人の男 [コメディー]

午前中の診療が終わった病院の待合室。
会計を待つ3人の患者が、ぽつりぽつりと座っている。

通りかかった看護師が、黒い財布を拾い上げた。
大金が入っていそうな太った財布だ。
「どなたか、財布を落としませんでしたか」
財布をかざすと、「俺のだ」と男が手を上げた。
その後ろで、別の男が手を上げた「いや、俺のだ」
2列離れた席にいた別の男も手を上げた。
「俺の財布だ」

「ひとつの財布に持ち主が3人? みなさん、本当に自分のですか? 鞄やポケットに財布、入ってませんか?」
「ないよ。だってそこに落としたんだ」
「落としたのは俺だ。さっき会計をしたときに落としたんだ」
「いや、俺のだ。間違いない」

「うーん、仕方ないですね。じゃあ、中身を確認します。保険証とか入っているかもしれないでしょう。いいですね、開けますよ」
看護師が財布を開けると、金は一円も入っていない。
レシートとクーポン券がどっさり入った財布だった。
それを見た3人の男は、「俺のじゃなかった」と口々に言った。
「よく探したらあったよ。似てたから間違えちゃった」
3人は、金が入っていないと分かった途端、白々しく笑った。

看護師は、財布を見ながら目を潤ませた。
「可哀想ですね。この財布の持ち主さん。だって一円もないんですよ。病院の費用を払ったらお金が無くなってしまったんだわ。可哀想。病気なのに、明日の食費にも困っているんじゃないかしら」
看護師はポロポロと泣きながら、ポケットから自分の千円札を出して財布に入れた。
「私にはこのくらいのことしか出来ないけれど、この財布の持ち主のために千円寄付します。だって取りに来たときに、ないと思っていたお金が入っていたら嬉しいじゃないですか。きっと生きる希望になるはずよ。そう思いませんか?」
3人の男は顔を見合わせた。
「看護師さん、あんた優しいな。そうだよな。人間は助け合って生きるもんだ。俺も千円入れてやる」
3人の男は自分の財布から千円を出すと、黒い財布に押し込んだ。
「ありがとうございます。財布の持ち主が現れたら、みなさんのこと、話しておきますね」
「いやいや、こういうことは黙ってやるから価値があるんだ。ああ、いいことをしたら気分がいいな。どうです、みなさん、この先に昼からやってる小料理屋があるんですが、一杯やりませんか」
「いいですな。血圧も正常だったし、行きますか」
「賛成。塩分控えめの食事ばかりでウンザリだったから、たまにはいいか」
3人は意気投合して帰っていった。

看護師はナースステーションに戻ると、後輩のナースに声をかけた。
「三千円ゲットしたからランチ行かない?」
「先輩、またやったんですか。いい加減、捕まりますよ」
「いいじゃない。みんないい気分で帰るんだから。これも治療の一環よ」
看護師は笑いながら、黒い財布をポケットに入れた。

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アンチエイジングセールス [コメディー]

営業の基本は、まず相手を褒めること。
「お若く見えますね」は魔法の言葉。
男性は、多少年上に見られた方が貫禄があっていい、なんて人もいますけど、女性はとにかく若く見られたいものです。
褒めて褒めて褒めまくって、化粧品を売るのです。

ピンポーン
「こんにちは、奥様。ABC化粧品です。ただいまこの地域にお暮しの、30代の女性を対象にサンプルを配っておりますの。……あらまあ、奥様50代? とても見えませんわ。てっきり30代後半かと。まあ驚いた。週一でエステとか通ってるんですか? 何もしてないって、まあ信じられませんわ。このサンプル、30代限定なのですが、特別に30代に見える奥様にも差し上げますわ。ぜひ使ってみて下さいね。これを使ったらますます若返って、20代に見えてしまうかもしれませんわよ」

「お母さん、ただいま。あら、お客様?」

「まあ、お嬢さまですか。学生さんかしら。えっ、32歳? まあ、とても見えませんわ。てっきり20代前半かと。なんとまあ可愛らしい。職場でもモテモテでしょう。あら、結婚なさっているの? お子さんまで? まあ、なんてお若いママ。その若さと美貌を保つために、ぜひABC化粧品をお使いください。ただいま無料サンプルをお配りしていますの。これを使ったら、ピチピチの女子高生に見えてしまいますわよ。あら、ピチピチなんて、古いですわね。ホホホ」

「ママ、おばあちゃん、ただいま」

「あら奥様、お孫さんですか。可愛いですね。年中さんくらいかしら。えっ、8歳? 小学生なの? てっきり4歳くらいかと。まあ、お若く見えますわね。ABC化粧品は、無添加なのでお子様にもお使いいただけるんですのよ。これを使えば、ますます若返って3歳くらいに見えてしまいますわ。あら、やだ、どうして泣くの? 8歳だもんって、ええ、わかっていますよ。でもね、たとえ子どもでも、年齢より若く見られるのは嬉しいでしょ。世の中の女性はみんなそうよ。えっ、男の子? 男の子なの? あらあ、貫禄がありますこと。9歳くらいに見えますわ」

***
先日、化粧品のセールスの電話がありました。
「奥様ですか。とてもお若い声ですが、30代ですか?」
と聞かれたので、「はいそうです」と答えました(笑)

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飼いネコ養成スクール [コメディー]

えー、みなさん、飼いネコ養成スクールへのご入学、まことにおめでとうございます。
ここでは、みなさんが飼いネコになるための心構え、人間の特性、生活習慣などを学んでいきます。
講師はわたくし、飼いネコ歴10年のベテラン飼いネコが務めさせていただきます。

まず初めに、飼い主となった人間は、あなたたちに名前を付けます。
名前がないと不便だし、意思の疎通がしづらいですからね。
ここでどんな名前を付けられても、たとえそれが嫌な名前でも、異議を唱えることは出来ません。
ご存じの通り、ネコはニャーと鳴くだけなので、人間は「わあ、喜んでいるわ」くらいにしか思いません。
ちなみに、わたくしの名前は「ニボシ」です。
はい、そこ笑わない。笑うところじゃありませんよ。
食べ物系の名前はたくさんあるのに、なぜニボシなのか。
わたくしも最初はちょっと嫌でしたよ。ショコラの方がいいな、とか思いましたよ。
でもね、慣れたらこれがなかなかいい響きなんですよ。
そんなものです。

次に、食べ物についてですが、ネコにはネコ専用の食べ物が与えられます。
種類はいくつかありますが、なかなかに美味です。
だからみなさん、くれぐれも人間の食べ物を欲しがったり盗み食いをしてはいけません。
今まで優しかった人間が、鬼のような顔で怒りますよ。
「こら、それはあなたの食べ物じゃないでしょう!」と、つまみだされます。
ですからみなさん、このように考えてください。
人間の食べ物は恐ろしくマズい。ひとつもおいしくない。
ああ、人間は、あんなマズいものを無理して食べているんだな。かわいそう。
その点、私たちネコのごはんはこんなに美味しい。ありがたや、ありがたや。
ね、そう考えたら、人間のごはんなど、食べたくなくなるでしょう。

次に、トイレです。これ、大事です。テストに出ます。
トイレは、人間が用意してくれた砂のところを使用します。
あちこちで用を足すと、すぐに嫌われてしまいます。
人間も、根気強い優しい人ばかりではありませんからね。
人間は『トイレしつけ済み』という言葉が好きです。
『○○限定』や『残り○個限り』という言葉にも弱いです。
あ、すみません。余談でした。
ですから、トイレの場所は速やかに覚えてください。
年端のいかない子ネコも、例外ではありませんよ。
たまに失敗しちゃったときは「えへ、やっちゃった」と可愛く鳴けば許してくれます。
「別にいいじゃん。放尿に自由あれ!」などと叫んだら、つまみ出されます。

チリンチリン♪ 「ニボシ~、どこなの~?」

おっと、昼ご飯の時間です。
今日の講義はここまでとします。
次回は、去勢手術の是非について、お話しします。
では、解散!

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消えた町内会費 [コメディー]

町内会の臨時招集って、いったい何?
連絡事項はメールでOKってことになっているのに、平日の夜に集まりなんて何があったの?

「すみません。遅くなりました。香川です」
駆け込むと、公民館の一室は険悪な雰囲気が流れていた。
会計の松岡さんを囲むように、神妙な顔で座っている。
「あの、何があったんですか?」
「松岡さんが、町内会費を使い込んだのよ」
「ええ?」
「使い込んだなんて……。失くしてしまっただけよ」
松岡さんは、俯きながら小さな声で言った。
「いくらですか?」
「30万よ」
30万といえば、住人から集めた会費全額だ。
「集めた会費は、すぐに銀行に預ける決まりですよね」
「行く暇がなかったのよ。フルタイムで働いているんだもの。だから私、会計は無理だって言ったわよね。それなのにみなさんが押し付けるから」
松岡さんは涙目で訴えた。「逆切れかよ」と誰かが言った。

「あの、失くしたってどういうことですか。家に置いていたのに失くなったんですか。泥棒にでも入られたんですか?」
「わからないわよ。テーブルに置いたはずの封筒がなかったのよ。私だって知らないわよ」
「息子さんが使い込んだんじゃないの? イケメンで優秀な進学校に行っていても、裏じゃ何してるかわからないわよ」
「ご主人じゃないの? スマートなエリート官僚でも、実は何かの不祥事でお金が必要だったとか」
「やめて。息子も主人もそんなことしないわ」
「じゃあ、あなたが使ったのね。最近、肌の艶がいいけど、エステでも行った?」
「その服もバッグもセンスがいいけど、ブランド品かしら」
「髪だって年齢の割につやつやで、絶対何かしてるわよね」
「やめて。肌も髪もセンスの良さも生まれつきよ。私、芸能事務所からスカウトされたこともあるのよ」
「あら、どこで? 原宿? うちの娘もこの間…」

ちょっと、ちょっと、話の趣旨がズレてるって。
「あの、話戻しませんか。そもそも、どうしてテーブルにお金を置いたりしたんですか」
「香川さん、いいところに気がついたわ。そうよ、大金をテーブルに置くなんて、ガサツすぎるわ」
「今日こそ銀行に行こうと思ったのよ。やっと仕事が一段落したので、忘れないようにテーブルに置いたの」
「じゃあ、朝からの行動を思い出してみたらどうですか?」
「香川さん、探偵みたいね。じゃあ、松岡さん、思い出してみて」

スムージーとグラノーラの朝食を終えて、夫と息子を送り出して、ルンバを回しながら英字新聞読んで、あ、そうだ、回覧板を回さなければと思って、手近にあったプラダの紙袋に回覧板を入れて香川さんの家に行きました。
だけど香川さんはお留守だったので、郵便受けに入れました。そして帰ってきたら、封筒がなかった、ということです。

「そのあいだに盗まれたの? 鍵はかけた?」
「かけたわ。しかもほんの2,3分よ。盗まれたとは思えないわ」
「じゃあ、隙間にでも落ちてるんじゃないの? よく探した?」
「落ちてたらルンバが止まって発見するはずよ」
「ところで香川さんはどこに行ってたの? 朝からお出かけなんて珍しいわね」
「今日は実家に行っていたんです。母の具合が悪くて。出先で臨時招集の知らせを受けたので、そのまま直行しました」
「あら、忙しかったのね。本当にいい迷惑よね」
「あの、そんなわけで私、夕飯の支度もしてないんです。二人の子どもが待っています。今日のところは一旦解散しませんか。後日また集まるということで」
「そうね。じゃあ次回までに、解決策を考えてきてね。松岡さんが弁償するのか、1軒1万円ずつ徴収するか」
「そりゃあ松岡さんの弁償でしょう」と9割がたが思いつつ、臨時会議は終了となった。

急いで家に帰った。松岡さんには気の毒だけど、1万円を払うのは厳しい。
松岡さんはお金持ちだし、30万くらい出せるでしょう。
「ただいま。ごめんね。遅くなって」
「あ、ママ、何度も電話したんだよ」
「ごめん。ちょっと込み入った話だったから電源切ってた。何かあった?」
「郵便受けにお金が入ってたの。30万」
「何ですって?」
「回覧板と一緒に入ってた。ねえ、これ警察に届ける?」
「持ち主が見つからなかったら、うちのものになるの?」
「見つかっても1割もらえるんじゃないの」
「1割って、3万円! ねえママ、回らないお寿司行けるね」
3万円、回らないお寿司……ああ、ダメダメ。松岡さんに電話しなきゃ。

「はい、松岡でございます。あら、香川さん。まあ、お宅の郵便受けにお金が? やだ、回覧板と一緒にポストに入れちゃったのね。あはは。ごめんなさいね。明日から家族でワイキキの別荘に行くので、帰るまで預かってくださる?」

あーあ、ご飯作るの面倒になってきた。回転ずしでも行くか。

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SNSファミリー [コメディー]

ああ、明日から10連休だ。
楽しみだな。
遊園地に映画、温泉行って潮干狩り。
渋滞だって怖くない。
だって休みがたくさんあるんだもん。
子どもたちともたっぷり遊ぶぞ。
写真もたくさん撮って、フェイスブックにアップしよう。
イクメンパパをアピールするんだ。
休み明けに、俺の好感度、急上昇まちがいなし!
ああ、楽しみだな、10連休。

「ちょっと、あなた、早く起きないと遅刻するわよ」
「え? 遅刻ってなんだよ。今日から10連休だろ」
「もう、何寝ぼけてるの? もう終わったわ。今日から仕事よ」
「うそだろ。遊園地は?映画は?温泉は?」
「行ったじゃないの。遊園地も温泉も、お花がきれいな公園も。フェイスブックで確かめてみたら?」
「そうだっけ。あ、アップされてた。いいねが増えてる」
ああよかった。フェイスブックやってて。
やってなかったら、思い出が消えちゃうところだったよ。
子どもたちの楽しそうな表情。風景もばっちりだな。
俺、すげーいいパパだな。

「あなた、早く行きなさいよ。遅刻するわよ」
「あれ、朝飯食ったっけ?」
「もう、食べたでしょ。フェイスブックで確かめてみなさいよ」
「あ、本当だ。ちゃんと食べてる。やっぱり朝は和食だよな」
「さあさあ、早く出かけてちょうだい」
「じゃあ、行ってきます」

「いってらっしゃい。あーあ、依存症だな、あの人。さてと、連休も終わってやっと自由になったわ。って、ツイートしよ」

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桜の木の下 [コメディー]

花曇りの朝、愛犬のエリザベスと散歩に出ました。
公園の桜の花が見事に咲いて、思わず足を止めました。
すると、エリザベスが木の根元に向かって吠え始めました。
ワンワンワンワン。
めったに吠えないエリザベスが、やけにワンワン吠えるのです。
もしかして、これは……
花咲かじいさんのお話が浮かびました。
犬が吠えたところを掘ったら、大判小判がごっそり出てきた話です。

私はちょうどシャベルを持っていたので、桜の木の根元を掘りました。
ここ掘れワンワン♪ と歌いながら掘りました。
さて、何が出てきたと思います?

死体……と思ったあなた、ミステリー小説の読みすぎです。
タイムカプセル……と思ったあなた、青春ドラマの見すぎです。
土の中には、瓶がありました。
アンティークのおしゃれな瓶を想像したあなた、ロマンス小説の読みすぎです。
それは、海苔の佃煮の瓶でした。
蓋が錆びついて、ラベルが剥がれた汚い瓶でした。
何とか蓋をこじ開けたら、一枚の紙が入っていました。
熱烈な恋文だと思ったあなた、恋愛ドラマの見すぎです。
未来からの手紙だと思ったあなた、SF小説の読みすぎです。
それは、一枚の宝くじでした。

これが当たって大金持ち……と思ったあなた、人生ゲームのやりすぎです。
とっくの昔に期限切れでした。
これを埋めた人の背景には、どういう物語があるのでしょう。

1、 当たって、億万長者になるのが怖くて埋めた。
2、 外れてやけになって埋めた。
3、 いたずらで盗んだ宝くじが当たってしまって、換金できずに埋めた。

「私は3番だと思うんだけど、エリザベスはどう思う?」
「ワン」
「えっ、1番? そうかなあ」
「ワンワン」
「2番? うーん、埋める必要なくない?」
「ワンワンワンワン」
「ええ、4番があるの? なになに?」

まあ、考えても仕方ないことなので、私はまた瓶を埋めました。
さあ、お散歩を続けましょう、エリザベス。
こんな刺激的なお散歩も、たまにはいいものですね。

しかし翌日の新聞に、私、卒倒しました。
『〇〇公園の桜の木の下に1億円』という見出しです。
記事を読んでみると、まさに私が掘った桜の木の下に、1億円の現金が埋まっていたと書いてあったのです。
嘘でしょう? 期限切れの宝くじだったわよね?
ねえ、エリザベス。

「ワンワンワンワン」
(だから4番って言ったでしょ。4番はね、瓶はただの目印。その下に、大金が埋まっているの。公園の桜はたくさんあるから、忘れないように目印を埋めたの。海苔の瓶に外れくじを入れてね。すぐにわかるように、浅く掘って土をかぶせたの。あなたが見つけたのは、その瓶だったのよ。もっと深く掘れば1億円だったのよ。せっかく教えてあげたのにね)

「さあ、エリザベス。今日もお散歩に行きましょう。いいお天気ね」
ワンワンワンワン!
(まあ、ご主人さまは幸せそうだから、別にいいか)

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氷河期がきた [コメディー]

氷河期がきた。
気温は常にマイナス40度。
どんなに着込んでも、たちまち全身が凍える。
ダウンジャケットを買わなければ。
夫と子供と私の、とびきり暖かいダウンジャケットを。

寒さに凍えながら、ショッピングモールにやってきた。
ここは暖房が効いて暖かい。氷河期を忘れる。
店には春物の服が並んでいる。
こんなブラウス、欲しかったのよね。
あっ、いけない。ダウンジャケットを買いに来たんだった。

「えっ、ダウンジャケット売ってないの?」
「はあ、もう春物に入れ替えちゃいました。もうすぐ3月なんで」
「だって、氷河期なのよ」
「そう言われましても、冬物はバーゲンで売り尽くしました。それよりお客様、この花柄のワンピースはいかがです? 色が白いからとても似合いますよ」
「あら、そう? じゃあ着てみようかしら」

ああ、結局春物買っちゃった。外は死ぬほど寒いのに春物買っちゃった。
テレビをつけたら、トップニュースは氷河期。
『マイナス40度だと、バナナで釘が打てますね』
と笑った女子アナの衣装はノースリーブ。真夏か!

「ママ、アイス食べたい」
「まあ、氷河期なのにアイス?」
「寒ーい時に暖かい部屋で食べるアイスはサイコーでしょ」
「まあ、言われてみればそうね」

親子でアイスを食べていたら、夫が帰ってきた。
「う~、寒かった。手も足もカチンコチンだ」
「すぐにお風呂沸かすわね」
「ビールある?」
「ないわよ」
「じゃあ、ひとっ走り買ってくるよ。風呂沸かしといて」
「この氷河期に、よくビールなんか飲むわね」
「アイス食ってる人に言われたくないよ」
「あははは。たしかに」

テレビのニュースは、芸能ネタに変わっている。
へえ、この人不倫してたんだ。氷河期なのによくやるわ。

『ここで、速報が入りました。この氷河期は、巨大な宇宙勢力が太陽の光を妨害したためだということがわかりました。地球政府が、ただちに抗議して交渉に向かう予定です』

「へえ、宇宙勢力だって。どうせまた金で解決するんだろ」
「私たちの税金が使われるのね。やってられないわ」
「おいおい、それ、俺のビール」

『さて、続きまして、今日の特集です』
ノースリーブにミニスカートのタレントが元気いっぱいに登場した。
『今日の特集は、氷河期でも遊べるテーマパークです』

「ママ、ここ行ってみたい」
「極暖のダウンジャケットが買えたらね」
春物のワンピースを買ったことは、家族にはナイショよ。ふふふ。

危機感ないな~、地球人、大丈夫か?

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神様派遣します [コメディー]

「はい、神様派遣センターです。どちらの神様をご所望でしょうか。はあ、学業の神様ですか。申し訳ございません。学業の神様は3月まで予約が入っておりまして。キャンセル待ちが125人となっております。なにぶん受験シーズンでございますから。安産の神様でしたら空きがございますが。それでは意味がない……。ごもっともでございます」

密着24時間。今もっとも注目される神様派遣業に密着した。
さっそく話を聞いてみよう。

「ええ、全国の神社の神様をご用意しております。今はみなさん、仕事やPTAや趣味で忙しいですからね、買い物もネットでする時代、神社に足を運ばずに神様を参拝できるシステムは、大変好評をいただいています」

センター長の木村は言う。
神様を商売にするなど言語道断との批判もあったが、いくつもの困難を乗り越えて来たという。

「トラブルも、たまにはありますよ。何でもいいから神様お願いっていうお客さまに、疫病神をお送りして叱られたことがあります」

木村は笑った。失敗を糧に、会社は成長したという。
こうした中にも、依頼電話は鳴り続ける。

「はい、神様派遣センターです。縁結びの神様ですか? はい、ちょうど空きがございます。すぐに向かっていただきますので、お名前とご住所を……はい? 家に来られるのは困る。たとえ神様でも他人を部屋に上げるのは嫌だと……。はあ、承知いたしました。では、ネット参拝をご希望ですね。パソコンですか?スマートフォンですか?……」

最近は、このようなネット参拝も増えているという。
神様派遣センターは24時間営業である。
深夜こそアルバイトに任せているが、殆どの時間はセンター長の木村自らが対応しているという。
これだけ依頼が多いと、相当の儲けがあるのではないだろうか。
赤裸々に尋ねてみた。

「儲けなんて全然ありませんよ。本当です。だってここには、貧乏神が常在しているんですよ。貧乏神を希望するお客様などいませんでしょう。何ならあなた、連れて帰ってくれます?」

木村は笑う。丁重にお断りした。
依頼電話は鳴り続ける。

「「はい、神様派遣センターです。あ、先ほどのお客様。学業の神様を予約なさいますか? 126人目のキャンセル待ちになりますが……はい? この際だから安産の神様でいい? 左様でございますか。では、安産の神様を手配いたします。お名前とご住所を……」

困った時の神頼み。どんな要望にも応えると、木村は笑った。

「だって、お客さまは神様ですもの」

密着24時。
神様派遣センターは、今日も眠らない。


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