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おとぎ話(笑)36コラボ編 [名作パロディー]

<おむすびころりん × 金の斧・銀の斧>

「さて、昼飯にするか」と包みを開けて、おむすびを取り出したおじいさん。
しかし食べようとしたら、手が滑ってしまった。
おむすびはそのまま、ころころ転がり、湖にポチャンと落ちてしまった。
「ああ、わしのおむすびが!」
おじいさんがガッカリしていると、湖からおむすびを持った女神が現れた。

「あなたが落としたのは、この、金のおむすびですか?」
「それはわしのおむすびだ。だけど金じゃない。中味は梅干しだ」
「金ではないのですか?」
「違うと言ってるだろう。腹が減ってるんだ。早く返してくれ」
「そうですか」
女神は、持っていたおむすびをおじいさんに渡して、首をかしげながら湖に帰った。

おじいさんは、無事に戻って来たおむすびを、パクリとひと口で平らげた。
「むむ、何か堅いものを飲み込んでしまった」
慌てて食べたので、梅干しの種を飲み込んでしまったのだと、おじいさんは思った。
「まあ、いいか」

家に帰ると、おばあさんがオロオロしながら待っていた。
「どうしたんだ、ばあさん」
「朝から私の指輪がないんですよ。おむすびと一緒に握っちゃったのかしら。おじいさん、おむすびの中に、入っていませんでしたか?」
「えっ、指輪?」
「そう、金の指輪」
金……のおむすび?
思わず、腸の辺りをさするおじいさん。
このあたりに、あるかも。



<桃太郎 × かぐや姫>

桃から生まれた桃太郎は、立派な若者になりました。
そろそろお嫁さんが欲しいなと思ったところに、おじいさんが言いました。
「桃太郎や、西の国に、竹から生まれた美しい姫がいるそうじゃ。どうやら結婚相手を探しているらしい。行ってみたらどうじゃ」
「竹から生まれた姫か。それは興味深い」
桃太郎はさっそく、かぐや姫のところに向かいました。

ずらりと並んだ花婿候補。
みんな身なりはいいけど、イマイチぱっとしません。
そんな中、桃太郎がやってきました。
「桃太郎です。職業は、鬼退治です」
「まあ、鬼退治?」
「鬼から奪った金銀財宝が、家にたんまりありますよ。そしてもれなく、かわいいサルと犬とキジがついてきます」
「素晴らしいですわ。だけど私、もうすぐ月に帰らなければいけませんの。実は私、月の姫なんです」
「おお、それはいい。地球の鬼は殆ど退治しちゃったから、そろそろ宇宙に進出しようかと思っていたんですよ」
「一緒に月に行ってくださるの?」
「もちろんです。そうだ。家来にウサギも加えましょう」
「あらステキ」

おじいさんとおばあさんは、月を見上げて思います。
「かぐや姫は元気かな」
「桃太郎は達者でやっているだろうか」


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台風と太陽 [名作パロディー]

台風が過ぎた翌日、大きな水たまりが、道いっぱいに広がっていました。
そこに、ひとりの女性が通りかかりました。
白い日傘に白いワンピース。サーモンピンクの新しい靴を履いています。
「いやだわ。どうしましょう」
女性は水たまりの前で立ち止まりました。
何しろ道の端から端まで水たまりがあって、よけることもできません。

途方に暮れる女性を、空の上から台風と太陽が、腕組みをして見ています。
「台風さん、あなたが大雨を降らせたせいで、あの女性が困っていますよ」
「あそこは、もともと水はけが悪いんだよ。まあ、俺もちょいとやり過ぎたが」
「お気の毒に。ワンピースも靴も濡らしたくないでしょうな」
「おしゃれして、デートかな?」
「どうでしょう、台風さん。ひとつ勝負をしませんか?」
「勝負とは?」
「あの女性が、水たまりの向こう側に行けるように手助けをするのです」
「おもしろい。やってやろうじゃないか」

台風は、とんでもない強風を吹かせて、女性を日傘ごと飛ばせて、向こう側に連れて行こうとしました。
「行くぞ」
ヒュー、ヒュー、ヒュー
すごい風です。しかし女性は1ミリも浮き上がりませんでした。
日傘だけが、遠くに飛んで行ってしまったのです。
女性は近くの電柱につかまって、風が収まるのを待ちました。
「失敗ですな」
「ちくしょう。ちゃんと日傘を持っていれば、向こう側に連れて行けたのに」

今度は太陽の番です。
太陽は、ギラギラの日差しを、水たまりめがけて注ぎました。
太陽の熱で、水を蒸発させようとしたのです。
ギラギラギラ
しかし時間がかかり過ぎます。
女性は暑さに耐えきれず、その場に座り込みました。
「ああ、これ以上は危険です。よもやこれまで」
「あんたも失敗だな」

そこに突如現れたガテン系の筋肉男子。
「大丈夫ですか?」
女性に駆け寄ると、水を飲ませ、タオルで汗を拭いてあげました。
「水たまりがあって、向こうに行けません。お願い、助けて」
女性がすがると、筋肉男子はひょいと女性を抱き上げて、水たまりの中をじゃぶじゃぶ歩き、女性を向こう側に連れて行きました。
「ありがとうございます」
「お安い御用です。くれぐれも気を付けて。水分補給を忘れずに」
筋肉男子は、爽やかに去っていきました。

「ああ、やっぱり人間の女には人間の男だな」
「そういうことですね。この勝負、引き分けです」
「じゃあ俺、帰るね。そろそろ熱帯低気圧に変わらないと」
「お疲れさまでした」

さて、その後女性は、約束の彼氏に会いましたが、会った途端「誰?」と言われてしまいました。
「ネットの写真と全然ちがうんだけど」
そうです。彼女は台風のせいで髪はぐしゃぐしゃ、太陽のせいで自慢のメイクがはがれてドロドロ。
少しだけ盛って送った写真とは、まるで別人になっていました。

こうして、マッチングアプリの彼との恋は、始まる前に終わりました。
しかしご安心ください。
女性はその後、ガテン系の筋肉男子に再会して、新たな恋が始まるのです。

太陽さん、そしてまた来るかもしれない台風さん、どうか余計なことはしませんように。

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おとぎ話(笑)35 [名作パロディー]

<マッチ売りの少女>

「私、マッチを売って暮らしています。マッチが売れないと、父からひどい暴力を受けます。みなさん、どうか私を助けてください」
「なんてかわいそうな子だ。マッチを買ってあげよう」
「私も買うわ」
「僕も買おう」
「みなさま、ありがとうございます。マッチより、どうか私に清き一票を」
「き、君も出てるのか。都知事選!」


<白雪姫>

「鏡よ鏡、この世でいちばん美しいのはだあれ?」
「はい、お妃さまでございます」
「まあ、なんて正直な鏡でしょう。では、いちばん醜いのはだあれ?」
「はい、お妃さまでございます」
「何ですって」
「あっ、これは失礼しました。いつも同じ質問なので、録音した答えを繰り返し流しておりました」
「なんて怠惰な鏡なの。ちゃんと答えなさい。いい、もう一度尋ねるわ。この世でいちばん美しいのはだあれ?」
「あー、白雪姫ですね」
鏡が本気を出した瞬間であった。


<アリとキリギリス>

アリは、冬に備えて一生懸命働きました。
炎天下もなんのその。食糧運びに余念がありません。
一方キリギリスは、先のことなどお構いなし。
エアコンをガンガンかけて、涼しい部屋で寝て暮らしました。

一か月後
アリはいつもと変わらず働いています。
一方キリギリスは、昼夜を問わず、働き始めました。
「キリギリスさん、急に働き者になってどうしたの?」
「電気代が払えないんだ!」


<かぐや姫>

「おじいさん、かぐや姫は月に帰ってしまいましたね」
「ああ、まさか月の姫だったなんてな」
「予想をはるかに超えていましたね」
「だけど、思い当たる節はあったな」
「そうですね。そもそも竹から生まれたところで、何かある、とは思いましたよ」
「成長も驚くほど早かったしな」
「それにあの美貌。地球人離れしてましたね」
「条件のいい見合い話に難題出して断っただろ。あのとき、俺はピンときたな」
「月を見て泣いていたんですよ。私はあのとき、もしかしたら、と思いましたよ」
「本当か? 後付けだろう」
「まあともかく、今思えば、けっこうな伏線張ってましたね」
「そうだな。まあ、俺たちの推理もまだまだだな」
「あっ、おじいさん、大好きなサスペンスドラマ始まりますよ」
「よし、今日こそ犯人当てるぞ!」


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赤ずきんちゃん、マジで気を付けて [名作パロディー]

どうも、あたし、赤ずきん。
あたしとおばあさんが、オオカミに食べられたのに生きて帰ったあの話。
今じゃすっかり有名になって、あたしはまさに時の人。
雑誌の取材やテレビに引っ張りだこなの。
あたしが歩いたあの森は、聖地巡礼とばかりに人が集まって、屋台やキッチンカーまで出る始末よ。
どこにいてもサインを求められて大変なの。
もちろん、中にはひねくれたアンチもいるわ。
ワイルドで野蛮なオオカミ推しもいるの。
「オオカミ様が沈められた川よ」なんて言いながら手を合わせてる。
別にいいけどね。

可哀想なのはお母さんよ。
子どもを一人でお遣いに出したことが、倫理的にどうなの?って言われてる。
そのせいであたし、一人で外出禁止になっちゃった。
おまけにあの森、子どもだけで歩いちゃいけない決まりが出来たの。
おばあさまに会いたいなあ。あの森、通りたいなあ。
おばあさま、毎日マスコミが来て疲れちゃったみたいだから、慰めてあげたいの。

そこであたしは考えた。
赤いずきんを脱げばいいのよ。
ずきんを脱げば、そこら辺にいるただの子どもと変わらないもん。
だからあたしはずきんを脱いで、こっそり家を出たの。

森の入り口には、見張り番がいた。子どもが一人で入らないように見張っているの。
あたしは、前を歩く毛むくじゃらのおじさんを呼び止めて言った。
「おじさん、一緒に森に入って。親子の振りをしてほしいの」
おじさんは「お安い御用さ」と笑って、一緒に森に入ってくれた。

「お嬢ちゃん、どこへ行くんだい?」
「おばあさまのところよ」
「えっ、おばあさまのところに行くのに、手ぶらなのかい?」
「手ぶらじゃダメなの?」
「そりゃあそうさ。手土産は必要だろう。そうだ、この先においしいケーキ屋があるよ」
「わあ、食べたい。でもあたし、お金持ってないの」
「おじさんが買ってあげるよ」
「本当? あたし、モンブランがいいなあ」
毛むくじゃらだけど優しいおじさんだな。
あたしはケーキの種類を思い浮かべながら、おじさんの後についていった。
あれ、けっこう遠いな。聖地巡礼のコースからも外れてる。
「おじさん、ケーキ屋さんはどこにあるの?早くおばあさまに会いたいんだけど」
「もうすぐだよ。おばあさんの家とは逆方向だけど、そんなに遠くないから」
「ふうん」
ん? なんか変。どうして初めて会ったおじさんが、おばあさまの家を知っているの?
しかも、このシチュエーション、前にもあったわ。

「さてはあんた、オオカミでしょ。生きていたのね」
「へっ、バレちゃ仕方ねえ。そうさ、おまえのせいでひどい目に遭ったオオカミ様だ。今度こそちゃんと食ってやる」
「ずきんを脱いできたのに、どうしてわかったのよ」
「赤いずきんがなくても、匂いで分かるんだよ。何しろ一度食ってるからな」
オオカミが大きな口で笑った。
ヤバい。また食べられる。

でも、この森は今や観光地。そうよ。何とかなるわ。あたしは、大声で叫んだ。
「オオカミ推しのみなさ~ん。ここに本物がいますよー」
あたしの声を聞きつけた女たちが、雪崩のように押し寄せて来た。
「オオカミ様」「ワイルドでステキ」「ガオ~って言ってみて」
たちまち女たちに囲まれたオオカミは「まいったなあ~、こんなに食えないよ~」と言いながらデレデレしてた。
さあ、この隙に逃げましょ。ああ、助かった。

あたしは無事に、おばあさまの家に着いた。
「おばあさま~、こんにちは」
玄関に出て来たおばあさまは、あたしを見てひとこと。
「どこのガキだい?サインはお断りだよ」

ああ、赤いずきんを被らないと認識してもらえないあたしって、いったい何?

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小学生、浦島太郎 [名作パロディー]

はじめまして。浦島太郎です。
今日からこのクラスに編入しました。
特技は、魚を捕ることです。
よろしくお願いします。

僕は約600年前からタイムスリップしてきました。
海の中にある竜宮城っていうところから戻ったら、時代が大きく変わっていたのです。
親もいなくて、家もなくて、村はすっかり変わっていました。
途方に暮れていましたが、村……いや、この町の人はなぜかみんな僕のことを知っていました。
「浦島太郎さんでしょ」
「カメを助けて竜宮城に行った浦島さんよね」
僕は、意外と有名人でした。

町の人はみんな親切で、いろいろ世話をしてくれました。
600年の間に、この国が大きく変わったことを教えてくれました。
僕が学校へ行っていないことを知って、小学校から学ぶように勧めてくれました。
年齢は皆さんよりずいぶん上ですが、仲良くしてください。

「はい、みんな拍手!」
パチパチパチ
「ところで浦島君、急な編入だったから、君の給食が用意できなかったの。お弁当は持ってきた?」
「はい、組合長の奥さんが作ってくれました」
「それはよかったわ。3年生に混ざっての勉強は大変だけど頑張ってね。教科書とノートの使い方を説明するわね」
「はい、お願いします」
「みんなはちょっと自習しててね」
「はーい」


「なあ、浦島君の弁当って、あれかな?」
「きっとそうだよ。大事そうにふろしきに包んでる」
「きっと豪華な弁当なんだろうな」
「弁当箱大きいし、たぶんおかずもいっぱいだね」
「ローストビーフとか、エビフライとか入ってるかも」
「ちょっと開けて見ちゃおうぜ」
「ちょっと男子たち、やめなさいよ」
「いいじゃん。見るだけ、見るだけ」
「うわ、紐が掛かってる」
「高級なやつだ」
「いい、開けるよ。せーの」
パカ


「はーい、みんな、授業を始めますよ。えっ、なに、この煙。えっ、あの、どちらの老人会の方々ですか? うちの生徒たちはどこに?」
「先生、僕が乙姫様にもらった玉手箱が開いています。絶対開けるなって言われたのにな。あれ、先生、どこに行くんですか?」
「煙を浴びたら大変、私、婚活中なのよ」

乙姫様は、いったい何を下さったのだろう。
そしていきなり現れた老人たちは何?
僕のクラスメートたちは、どこに行ってしまったのかな?
(浦島君、家に帰ってうらしまたろうの物語を読んで下さい。すべて分かります)


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おとぎ話(笑)34 [名作パロディー]

<泣いた赤鬼>

青鬼のおかげで人間と仲良くなれた赤鬼の元に、村役場の役人がやってきました。
「赤鬼さん、あなたを人間として住民登録することになりました」
「本当ですか」
「はい。これ、住民票です」
「ありがとうございます」
「これ、住民税と固定資産税の納付書です」
「これ、国民年金の納付書です」
「NHKの視聴料お願いします」

「あっ、赤鬼さん、泣いてる」
「人間になれてうれしいのかな?」
……違うと思う。


<シンデレラ>

お城の舞踏会に行きたいシンデレラの前に、魔法使いが現れました。
ボロボロの服を素敵なドレスに
カボチャを馬車に
ネズミを馬に変えてくれました。
「さあシンデレラ、舞踏会にお行きなさい。ただし午前0時に魔法が解けるから、それまでに帰るのよ」
「はい、わかりました。ところで魔法使いさん、ひとつだけ質問があります」
「何だい?」
「このカボチャ、魔法が解けたら食べられます? スープにする予定なんだけど」
「生活感ありすぎ。。。」


<笠じぞう>

「おじいさん、今年もお地蔵さまに笠かぶせたんですよね」
「ああ、かぶしてきたぞ」
「じゃあどうしてお礼の品を持ってこないんです? もう正月ですよ」
「そうだな。当てにしていたのにな」
「おじいさん、ちゃんと去年と同じように笠かぶせましたよね? 最後のお地蔵さまには、自分の手ぬぐいを取ってかぶせましたよね」
「いや、全部のお地蔵さまに笠をかぶせた。人数分用意したんだ」
「ああ、それだ!」
「それって?」
「自分の手ぬぐいを取ってまでかぶせることに意味があるんですよ。笠をかぶせるだけじゃ弱いんですよ、エピソードが!」
「エ、エピソード? そういうもの?」
「そういうものですよ、世の中というのは。いいですか、次はちゃんと自分の手ぬぐいを外してかぶせるんですよ。分かりましたね。ちゃんとやってくださいよ。生活かかってるんだから」
「わかった」

……忘れてただけなんだけどなあ(地蔵)


<不思議の国のアリス>
あら、時計を持ったウサギさんが走っているわ。
「ウサギさん、そんなに急いでどこへ行くの?」
「うさぎ年がもうすぐ終わるんだよ」
「まあ、大変」
「あんたもブログなんか書いてないで、大掃除でもしたら」
ギク!!

*****
あっという間に30日。今年もあと少しですね。
大掃除の合間を縫って書いております(笑)
みなさま、今年も読んで下さってありがとうございます。
来年もよろしくお願いします。
良いお年をお迎えください。

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帽子じぞう [名作パロディー]

木枯らしが吹く帰り道、3年生のリカと、1年生のマミが並んで歩いています。
リカとマミは姉妹です。
「ねえ、お姉ちゃん。今日学校でね、笠地蔵の本を読んだよ」
「あー、あたしも読んだことあるよ。お地蔵さんに笠をかぶせて大金持ちになる話」
「マミもお地蔵さんに笠をかぶせてあげたいなって思った」
「笠なんて家にないよ。昔の笠は今の傘と違うんだから」
「そっか。じゃあ、帽子は?」
「あー、帽子ならいいね」
「帽子かぶせたら、お金くれるかな」
「そうだね。一万円くらいくれるかも」
「いちまんえん!!そんなにくれるの?」
「お地蔵さん、金持ちだからね」
「じゃあさ、帽子かぶせよう。ほら、バス停の横にお地蔵さんいるでしょ」
「ああ、いるね。よし、家に帰って帽子もってこよう」

リカとマミは、家に帰っておやつも食べずに帽子を探しました。
「あんたたち、何やってるの?」
「何でもないよ、ママ。それより、洗濯物が風で飛ばされそうだったよ」
「あら大変。取り込まなくちゃ」
ママがいなくなって、ふたりはホッとしました。
ママに話したら、一万円を取られてしまいます。

「お姉ちゃん、帽子あったよ」
「よし、じゃあ、ママが洗濯物を取り込んでるうちに出かけよう」
リカとマミは、バス停まで走りました。
昼間はバスの本数が少ないので、お地蔵さん以外誰もいません。

「お地蔵さん、あったかい帽子を持ってきたよ。かぶせてあげるね」
「お地蔵さん、似合うね」
「あたまは暖かくなったけど、首が寒そう」
「マフラーも持ってくれば良かったね」
「いいこと考えた」
リカは、枯れすすきを取ってきて、お地蔵さんの首に巻きました。
「わあ、あったかそう。よかったね、お地蔵さん」
「マフラーっていうより、ヒゲみたいだけどね」
「お姉ちゃん、これで一万円だね」
リカとマミはスキップしながら帰りました。

しかし寝る時間になっても、お地蔵さんはお礼に来ません。
「笠地蔵のお地蔵さんは、すぐ来たのにね」
「ATMが故障してたのかな?」
そのとき、パパが子ども部屋にやってきました。
「リカ、マミ、去年ドンキで買った、サンタクロースの帽子を知らないかな。会社の忘年会でかぶろうと思ったけど、どこにもないんだ」
リカとマミは顔を見合わせました。
「し、しらない……」
「そうか、失くしちゃったかな」

リカとマミがお地蔵さんにかぶせたのは、パパのサンタクロースの帽子でした。
「お姉ちゃん、明日、返してもらおうか」
「でもさ、一万円もらった方がよくない?一万円でサンタの帽子いっぱい買えるよ」
「そうか。お姉ちゃん、頭いい!」

翌日、お地蔵さんの前に、子どもたちの行列が出来ていました。
『ポケモンのゲームが欲しいです』
『スマホが欲しいです』
『プリキュアのコスチューム、ください』
子どもたちは手を合わせてクリスマスプレゼントをお願いしていました。

「お姉ちゃん、お地蔵さんが、サンタさんになっちゃったね」
「そうだね。あたしたちがかぶせた帽子と、すすきのヒゲのおかげで大人気だね」
「お仕事増えて忙しくて、お礼に来られなかったんだね」
「パパの忘年会より有意義かも」
「たくさんお願い事されてるけど、大丈夫かな?」
「大丈夫だよ。お地蔵さん、金持ちだから」
「ついでにクリスマスプレゼントもお願いしようかな」
「そうだね。一万円と一緒にクリスマスに届けてもらおう」

リカとマミの元に一万円が届くことは、もちろんありません。
だけどお地蔵さんは、ちょっぴり楽しそうでした。



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つるの恩返し 現代版    [名作パロディー]

「ごめんくださいまし」
「はい、どちら様?」
「先日、あなたさまに助けて頂いた鶴でございます」
「ああ、あのときの鶴か。ドローンにぶつかって怪我しちゃった鶴だろ。えーっ、マジで恩返しに来たの?」
「はい、先代の鶴が825歳で亡くなりまして、私は2代目でございます」
「へー、鶴ってやっぱ長生きなんだ」
「先代の教えに従って、こうして人間の女に姿を変えてやってまいりました」
「そっかあ、で、何してくれんの?」
「機織り機はございますか?」
「ねえよ。2DKのアパートだぜ」
「では、私は何をすれば」
「とりあえず上がったら。カップ麺食う?」
「お邪魔します。あら、何もない部屋ですね」
「引っ越して来たばっかりだからな。彼女と一緒に住むはずだったのに、寸前で逃げられた。他に好きな男が出来たってさ」
「それはお気の毒に。それで、私は何をすれば?」
「ああ、じゃあさ、布団作って。羽毛布団。買いに行こうと思ってたんだ」
「そういうのは、水鳥の羽毛だと思います。私の羽根はちょっと不向きかと」
「そうなんだ。じゃあさ、逆に訊くけど何が出来るの?」
「えーっと、虫を捕ったり、空を飛んだり、甲高い声で鳴いたり出来ます」
「どれも要らないなあ。鳴かれたら苦情が来るし」
「困りましたねえ」
「まあ、焦ることないよ。恩返しが見つかるまでここにいれば」

3年後

「鶴ちゃん、醬油とって」
「はい、どうぞ」
「おれ、今日残業になりそう」
「あらそうですか。じゃあご飯要らないときは電話してくださいね。あなたが食べないときは粗食で済ましているんですから」
「わかった」
「あら、またネクタイにシミ付けて。クリーニング代もバカにならないんですよ」
「ごめんごめん」
「あっ、そろそろ出ないと遅刻ですよ」
「ホントだ。ごちそう様でした。玉子焼き美味かった~」
「忘れ物しないでくださいね。いくら飛べるとはいえ、会社まで届けるのは大変ですから」
「うん。じゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
「あっ、ところでさ」
「何です?」
「見つかった? 恩返し」
「それがさっぱり思いつかないんです」
「まあいいよ。気長に探しなよ」

……もう充分していると思う。

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白雪姫反省会 [名作パロディー]

ただいまより、白雪姫の反省会を始めます。

<鏡の反省>
あー、やっぱり本音を言っちゃったのがいけなかったよね。
いつもは、女王への忖度で「一番美しいのはあなたです」なんて言ってたけど、そんなわけないじゃん。
白雪姫の方がいいに決まってるじゃん。
だからつい「白雪姫でーす」って言っちゃったんだよね。
それで、姫が生きてるのバレちゃって、毒リンゴ食べることになってさ。
えっ? 今一番きれいな人は誰かって?
そりゃあ、このお話を読んで下さっているあなたですよ。(忖度)


<七人の小人の反省>
反省? まあ、強いて言うなら、白雪姫を残して仕事に出かけたことだよね。
七人もいるんだからさ、一人くらい姫のそばにいても良かったよね。
そうしたら毒リンゴ食べなかったかもしれないし。
それにしてもさ、七人もいて、どうして誰も白雪姫にキスしなかったかな。
めっちゃチャンスだったじゃん。
通りすがりの王子に横取りされてさ、俺らマジで落ち込んだ。
そうだ、俺たちの反省はそれだ。姫にキスしなかったことだ!


<女王の反省>
私の反省は、あっけなく死んでしまうことね。
だって魔女なのよ。もう少し何とかならなかったかしらね、魔法で。
私の死に方は諸説あるけど、いい死に方じゃないのよ。
雷に打たれたり、火あぶりにされたりね。悪役だから仕方ないわ。
改心して、仲良く穏やかに暮らすっていう結末は……ないわよねえ。
グリム童話だもの。


<白雪姫の反省>
反省、ですか?
えー、なんだろう。
わたしを助けたために、家来が殺されちゃったこと?
小人さんのお家を壊したこと?
空腹に負けて毒リンゴを食べちゃったこと?
王子様のキスで、ちゃっかり生き返っちゃったこと?
うーん。そのくらいしか思い浮かばないわ。
あら、みなさん、どうなさったの? 何をそんなに見つめているの?
わたしの顔に何かついているかしら?
……美しすぎるって?
ふふふ、いやだわ。それ、反省しなきゃダメ?(全員キュン死)


<王子様の反省>
出番が少ないこと!

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さるかに合戦 刑事編 [名作パロディー]

海辺の町で、カニが遺体で発見された。
固い柿の実が、頭を直撃したようだ。
上層部は事故として処理したが、どうも納得いかない。
極秘に捜査をして、目撃者を見つけた。
「へい、カニの悲鳴の後、逃げるように木を降りるサルを見ました」

私は、仲間のイガグリ、ハチ、ウス、馬糞と一緒に捜査を始めた。
「これは事故ではなく、事件の匂いがするな」と馬糞。
おまえの方が臭うぞ。
「わたしが木の上を偵察してくるわ」とハチ
ブンブン音を立てて、空を回った。
「サルの毛が、枝にいっぱい付いていたわ」
「やはり、間違いないな」
「おいらの仲間の柿を凶器に使うなんて許せない」と、イガグリ。
今にもはち切れそうなほど怒っている。

「ところで、柿が食べごろだな」
「鳥に食われる前に食いましょう」とウス。
柿の木に体当たりして、赤い柿の実を一気に落とした。
さすが怪力だ。捜査の役には立たないけど、いると便利だ。

腹ごしらえをして、地道な捜査を続け、ようやく犯人にたどり着いた。
群れに属さない、一匹オオカミのサルだ。サルなのにオオカミとはいかに?
被害者のカニの写真を見せると、サルはとぼけた。
「知らねえな。カニなんてみんな同じ顔だろ」
「おまえと被害者が、何かの取引をしたという情報があるんだ」
「ちっ、バレたか。おにぎりと柿の種を交換しただけだ。そもそもあれは事故だろう。俺がやった証拠はあるのか」
「木の枝に、あんたの毛がいっぱい付いてたわ。白状しないと刺すわよ」
ハチがお尻の針を突き出した。
「刺したらあんたも死ぬんだろう」
サルは、冷静なうえに頭がよかった。

「今度はおいらが」と、イガグリがサルめがけて飛んだ。
サルは得意の運動神経でひょいとよけた。
「うまそうなクリだな。あとで茹でて食ってやる」
イガグリは、悔しそうに転がった。
残るはウスと馬糞だ。こいつら役に立つのかな。
「任せろ」と馬糞がサルに近づいた。
「うわ、来るな。俺、今からデートなんだ。馬糞まみれじゃ嫌われちゃうぜ」
馬糞に追われたサルは、近くにいたウスの中に飛び込んだ。
「身を隠すのにちょうどいいぜ」
ところが、ウスの中には、つきたての餅があった。
「うわ、ねばねばする。助けて」

というわけで、サルは餅まみれになりながら犯行を認めた。
「やれやれ、一件落着だ」
「しかしウスさん、餅をついていたなんて、なかなかやるな」
「みんなに差し入れしようと思ってついた餅が役に立ったよ」
「サルはこれからどうなるかな」
「すべてを自供するだろう。何しろ取り調べをするのは馬糞だからな」
「取調室、臭そう。すぐに吐くわね」

僕は、母の墓前に手を合わせた。
「母さん、母さんを殺したサルをやっつけたよ。それから、素敵な仲間が出来たんだ。僕、もう寂しくないよ」

さるかに合戦は、こうして幕を閉じた。
めでたし、めでたし



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