虹を渡って [ファンタジー]
あの子は虹の向こうから来たんだ。
きれいな七色の服を着ていたよ。
虹を渡らないと家に帰れない。
だから、虹が出るのを待っているんだ。
虹の向こうは雨ばかりの世界。
だから最初は、太陽のまぶしさに驚いていたよ。
降りそそぐ光に手のひらをかざしたりしてさ。
ずいぶんはしゃいでいたんだよ。
だけどやっぱり家が恋しくて、この頃は泣いてばかりいるんだ。
あの子の服の色が、ひとつ消えた。
泣くたびに、色が消えるとあの子は言った。
全部消えると、わたしも消えてしまうの…と。
雨がぼつぼつ降りだすと、あの子は窓から身を乗り出して手をかざす。
ねえ、今日こそ虹がでるかしらって、少し寂し気に笑うんだ。
またひとつ、あの子の服の色が消えた。
本当はね、とっくに虹は出ていたんだよ。
高層ビルが立ち並ぶ都会では、うまく見ることが出来なかっただけだ。
僕はあの子に恋をした。
ずっと一緒にいたかった。
だから、虹が出たことを教えなかったんだ。
あの子の服の色が、また消えた。
少しずつ、痩せていくあの子は、もう笑うこともなくなった。
服の色が2色になってしまった日、僕はあの子を車に乗せた。
雨と晴れの境目に向かって、とにかく僕は走ったんだ。
助手席で、あの子の服はとうとう1色になった。
もう少しだよ。頑張って。
道のないどこまでも続く草原が、目の前に広がった。
雨がぴたりと止んで、やわらかい日差しが降りそそいでいる。
雨と晴れの境目だ。
車を降りて、すっかり小さくなったあの子を抱いた。
「ほら、大きな虹が出ているよ」
ふらふらと虹の前に立ったあの子は、ようやく笑顔を取り戻した。
服の色が七色に戻っていく。
あの子は元気に走り出し、虹の向こうに消えてしまった。
一度も振り向かなかったな。
そんなものさ。
まあいいよ。気まぐれなあの子のことだから、雨に飽きたらまた来るさ。
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きれいな七色の服を着ていたよ。
虹を渡らないと家に帰れない。
だから、虹が出るのを待っているんだ。
虹の向こうは雨ばかりの世界。
だから最初は、太陽のまぶしさに驚いていたよ。
降りそそぐ光に手のひらをかざしたりしてさ。
ずいぶんはしゃいでいたんだよ。
だけどやっぱり家が恋しくて、この頃は泣いてばかりいるんだ。
あの子の服の色が、ひとつ消えた。
泣くたびに、色が消えるとあの子は言った。
全部消えると、わたしも消えてしまうの…と。
雨がぼつぼつ降りだすと、あの子は窓から身を乗り出して手をかざす。
ねえ、今日こそ虹がでるかしらって、少し寂し気に笑うんだ。
またひとつ、あの子の服の色が消えた。
本当はね、とっくに虹は出ていたんだよ。
高層ビルが立ち並ぶ都会では、うまく見ることが出来なかっただけだ。
僕はあの子に恋をした。
ずっと一緒にいたかった。
だから、虹が出たことを教えなかったんだ。
あの子の服の色が、また消えた。
少しずつ、痩せていくあの子は、もう笑うこともなくなった。
服の色が2色になってしまった日、僕はあの子を車に乗せた。
雨と晴れの境目に向かって、とにかく僕は走ったんだ。
助手席で、あの子の服はとうとう1色になった。
もう少しだよ。頑張って。
道のないどこまでも続く草原が、目の前に広がった。
雨がぴたりと止んで、やわらかい日差しが降りそそいでいる。
雨と晴れの境目だ。
車を降りて、すっかり小さくなったあの子を抱いた。
「ほら、大きな虹が出ているよ」
ふらふらと虹の前に立ったあの子は、ようやく笑顔を取り戻した。
服の色が七色に戻っていく。
あの子は元気に走り出し、虹の向こうに消えてしまった。
一度も振り向かなかったな。
そんなものさ。
まあいいよ。気まぐれなあの子のことだから、雨に飽きたらまた来るさ。
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2016-06-14 16:52
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コメント(10)
トラックバック(0)
リンさんさん こんにちは
消えてしまうのではないかと心配でした。
私でも心配になったのだから、彼はもっともっと心配だったことでしょう。一度も振向いてくれなかったけれどもさわやかな気持ちになれたと思います。
by SORI (2016-06-14 18:15)
一度も振り向かないっていうのが
ちょっぴり切なくて、でも「僕」の
シュワシュワ~っとした爽やかでもある
淡い思いが伝わってきて、こういうしめくくりも
良いな・・・って思いました。
また出会えるといいね^^
by まるこ (2016-06-15 22:45)
詩みたいなニュアンスの小説だなぁと思いやした。
リンさんさんにしては異色なのかな?
by ぼんぼちぼちぼち (2016-06-17 14:04)
虹がないと帰れないとなると
命をかけて遊びに来ているのかしら。。。
と思って心配してしまうお話でした(^_^;)
でもこの子を気に入っちゃって離してくれない人だったら
やっぱり危ないわ(>_<)
by みかん (2016-06-18 19:45)
あの子の涙で服の色が消えていき、
虹をみつけると色が戻って来る....素敵です。
そんなあの子に恋をしてしまった僕の切ない
想いがじーっと伝わってきます。
by dan (2016-06-21 10:53)
<SORIさん>
ありがとうございます。
虹のように消えてしまったら、すごく後悔したでしょうね。
また会えればいいですね。
by リンさん (2016-06-21 23:43)
<まるこさん>
ありがとうございます。
ちょっと切ないけど、じめじめを吹き飛ばす爽やかなラストにしてみました。
きっとまた会えるでしょう^^
by リンさん (2016-06-21 23:45)
<ぼんぼちぼちぼちさん>
ありがとうございます。
思いつくままに書いたら、こんなふうになりました。
ポエムっぽい作品は、そういえばあまり書かないかもしれません。
by リンさん (2016-06-21 23:47)
<みかんさん>
ありがとうございます。
そうですね。まさに命がけで来ているのかも^^
でもこの子、そういうの忘れてまた来ちゃうかもしれません。
次はもっと田舎に行った方がいいかも。
by リンさん (2016-06-21 23:49)
<danさん>
ありがとうございます。
色がひとつずつ消えて、2色になったときは慌てたでしょうね。
一緒に居たいけど消えてほしくない。
複雑だったと思います。
また会えるといいですね。
by リンさん (2016-06-21 23:54)