クリスマスお茶会のお誘い [競作]
もぐらさんが開催している「クリスマスお茶会」へのお誘いです。
素敵な朗読ブログです。
私の「サンタクロース・ハナ」も朗読していただきました。
ぜひ、お茶会の扉を開いてみてください。
なんと、タダです(笑)
http://mogura-tearoom.seesaa.net/article/484917657.html
素敵な朗読ブログです。
私の「サンタクロース・ハナ」も朗読していただきました。
ぜひ、お茶会の扉を開いてみてください。
なんと、タダです(笑)
http://mogura-tearoom.seesaa.net/article/484917657.html
くもり空のむこう(空見の日) [競作]
毎年恒例
もぐらさんの呼びかけで、本日は「空見の日」です。
みんなで同じ日に空を見上げよう という企画です。
今日は、どよ~んとした曇り空。
お墓参りの後に撮った空。
大仏様が、ひときわ大きい。
桜の木と大仏様。
満開になったらきれいだろうな。
短いお話を一つ。
『くもり空のむこう』
どんよりしてるな。
くもり空って、見てると瞼が重くなるな。
眠くなってきた。
いけないいけない。仕事をしなくちゃ。
早いところ仕事を片付けて、墓参りに行くんだ。
ろくな親父じゃなかったけどさ、死んだらみんな仏様だ。
ああ、それにしても眠いな。ちょっとだけ寝るか。
10分の仮眠で効率が上がるって聞いたことがあるぞ。
よいしょっと。
なんだなんだ、このロッキングチェアー、揺れ方が神だ。
気持ちいいな。
5分で起きよう。5分だけ。5分だけ……。
「ちょっと君、起きなさい」
えっ、ああ、すっかり寝ちまった。あんた誰?
け、警察? 不法侵入で逮捕って、あ、あれ?
この家の人って、朝まで帰ってこないんじゃ……。
は、8時? 朝の8時?
ああ~~~、寝すぎた~
「ご主人、何か盗られたものはありませんか?」
「いいえ、何も盗まれていません」
そりゃそうだろうよ。まだ仕事前だ。
あっ、これって、窃盗罪は免れるってことか?
まあ、前科があるからただでは済まないだろうな。
これに懲りて真っ当に生きろってことか。
そういえば、くもり空の向こうに親父の顔が見えた気がしたぜ。
墓参りはしばらく行けねえな。
みなさんの空は、どんな空でしたか。
もぐらさんの呼びかけで、本日は「空見の日」です。
みんなで同じ日に空を見上げよう という企画です。
今日は、どよ~んとした曇り空。
お墓参りの後に撮った空。
大仏様が、ひときわ大きい。
桜の木と大仏様。
満開になったらきれいだろうな。
短いお話を一つ。
『くもり空のむこう』
どんよりしてるな。
くもり空って、見てると瞼が重くなるな。
眠くなってきた。
いけないいけない。仕事をしなくちゃ。
早いところ仕事を片付けて、墓参りに行くんだ。
ろくな親父じゃなかったけどさ、死んだらみんな仏様だ。
ああ、それにしても眠いな。ちょっとだけ寝るか。
10分の仮眠で効率が上がるって聞いたことがあるぞ。
よいしょっと。
なんだなんだ、このロッキングチェアー、揺れ方が神だ。
気持ちいいな。
5分で起きよう。5分だけ。5分だけ……。
「ちょっと君、起きなさい」
えっ、ああ、すっかり寝ちまった。あんた誰?
け、警察? 不法侵入で逮捕って、あ、あれ?
この家の人って、朝まで帰ってこないんじゃ……。
は、8時? 朝の8時?
ああ~~~、寝すぎた~
「ご主人、何か盗られたものはありませんか?」
「いいえ、何も盗まれていません」
そりゃそうだろうよ。まだ仕事前だ。
あっ、これって、窃盗罪は免れるってことか?
まあ、前科があるからただでは済まないだろうな。
これに懲りて真っ当に生きろってことか。
そういえば、くもり空の向こうに親父の顔が見えた気がしたぜ。
墓参りはしばらく行けねえな。
みなさんの空は、どんな空でしたか。
面会日(空見の日) [競作]
もぐらさんの呼びかけで、今日(3月19日)は空見の日です。
みんなで空を見上げて、色んな想いを空に放つのです。
色んな災害があったり、恐ろしいウイルスが蔓延したり、経済が心配だったり。
落ち着かない時だからこそ、空を見上げましょう。
朝7時の空。7時からこんなに青い!
**
さて、いつものように、空に因んだお話です。
「面会の日」
高台の公園を通り抜けようとしたら、老人が空を見ていた。
やけに真剣に見ている。
「何かあるんですか? 何か飛んでます? 飛行機、飛行船、アドバルーン、風船、珍しい鳥?」
「うるさい。少し黙ってくれ。空と話をしてるんだ」
「空と話? 空が喋るんですか。ああ、もしかして宇宙人と交信してるとか? おじいさん、頭大丈夫?」
「うるさい。せっかくの面会日が台無しだ」
老人は、怒って帰ってしまった。おかしな人がいるものだ。
それより急いで仕事に戻ろう。
母さんが入院したって聞いて慌てて来たけど、大したことないじゃないか。
その年の暮れ、大したことないと笑っていた母が亡くなった。
本当は重い病気だったのに、最後まで笑っていた。
もっと優しくしてあげたかった。いつも生返事でろくに会話もしなかった。
仕事にかまけて、お見舞いだってあまり行かなかった。
後悔ばかりの毎日だ。
そんな時、一通の手紙が届いた。どこから来たのか、切手も貼っていない。
『面会日のお知らせ』と書かれていた。
面会人に、母の名前が書いてある。
『日時:3月19日 午後3時 場所:○○町高台の公園』
高台の公園は、ちょうど去年の今頃、おかしな老人を見た場所だ。
半信半疑だったけど、3月19日の午後3時、僕は仕事を休み、高台の公園に行った。
空を見上げた。青くて吸い込まれそうなほど澄んだ空だ。
「ひろし、来てくれたのね」
母の声だ。はっきり聞こえた。
「母さん、ごめんよ。親孝行のひとつも出来なくて」
「何言ってるの。あなたの存在そのものが、私の宝よ」
「病気のこと、もっと早く教えてほしかったよ」
「いやよ。あんた泣き虫だもん。ほら、カマキリが怖くて泣いていたじゃないの」
「いつの話だよ」
僕たちは、笑いながら話した。
時間が来て、母の声が聞こえなくなっても、ずっと空を見ていた。
振り返ると、去年空を見ていた老人がいた。
「面会は年に一度、10分だけ。なっ、邪魔されたくないだろう」
老人は、次は俺の番だと空を見た。
「ごゆっくり」と声をかけて、公園を後にした。
母さんが好きな桜の花が、もうすぐ咲くよ。空の上から見えるといいね。
近所の桜の木です。つぼみが膨らんでいます。もうすぐ咲くね。
見上げないと気付かなかったよ。
今年の空見は暖かかったですね。
もぐらさんのブログはこちらです。
http://koedasu.cocolog-nifty.com/blog/2020/03/post-e67133.html
みなさんも、空見しようね。
みんなで空を見上げて、色んな想いを空に放つのです。
色んな災害があったり、恐ろしいウイルスが蔓延したり、経済が心配だったり。
落ち着かない時だからこそ、空を見上げましょう。
朝7時の空。7時からこんなに青い!
**
さて、いつものように、空に因んだお話です。
「面会の日」
高台の公園を通り抜けようとしたら、老人が空を見ていた。
やけに真剣に見ている。
「何かあるんですか? 何か飛んでます? 飛行機、飛行船、アドバルーン、風船、珍しい鳥?」
「うるさい。少し黙ってくれ。空と話をしてるんだ」
「空と話? 空が喋るんですか。ああ、もしかして宇宙人と交信してるとか? おじいさん、頭大丈夫?」
「うるさい。せっかくの面会日が台無しだ」
老人は、怒って帰ってしまった。おかしな人がいるものだ。
それより急いで仕事に戻ろう。
母さんが入院したって聞いて慌てて来たけど、大したことないじゃないか。
その年の暮れ、大したことないと笑っていた母が亡くなった。
本当は重い病気だったのに、最後まで笑っていた。
もっと優しくしてあげたかった。いつも生返事でろくに会話もしなかった。
仕事にかまけて、お見舞いだってあまり行かなかった。
後悔ばかりの毎日だ。
そんな時、一通の手紙が届いた。どこから来たのか、切手も貼っていない。
『面会日のお知らせ』と書かれていた。
面会人に、母の名前が書いてある。
『日時:3月19日 午後3時 場所:○○町高台の公園』
高台の公園は、ちょうど去年の今頃、おかしな老人を見た場所だ。
半信半疑だったけど、3月19日の午後3時、僕は仕事を休み、高台の公園に行った。
空を見上げた。青くて吸い込まれそうなほど澄んだ空だ。
「ひろし、来てくれたのね」
母の声だ。はっきり聞こえた。
「母さん、ごめんよ。親孝行のひとつも出来なくて」
「何言ってるの。あなたの存在そのものが、私の宝よ」
「病気のこと、もっと早く教えてほしかったよ」
「いやよ。あんた泣き虫だもん。ほら、カマキリが怖くて泣いていたじゃないの」
「いつの話だよ」
僕たちは、笑いながら話した。
時間が来て、母の声が聞こえなくなっても、ずっと空を見ていた。
振り返ると、去年空を見ていた老人がいた。
「面会は年に一度、10分だけ。なっ、邪魔されたくないだろう」
老人は、次は俺の番だと空を見た。
「ごゆっくり」と声をかけて、公園を後にした。
母さんが好きな桜の花が、もうすぐ咲くよ。空の上から見えるといいね。
近所の桜の木です。つぼみが膨らんでいます。もうすぐ咲くね。
見上げないと気付かなかったよ。
今年の空見は暖かかったですね。
もぐらさんのブログはこちらです。
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みなさんも、空見しようね。
配達証明(空見の日) [競作]
もぐらさんの呼びかけで始まった「空見の日」
今年でなんと9回目。
始まりは2011年でしたね。多くの人が空に想いを馳せた年でした。
いろんな地域の空が、今年も集まるのかな。
ひこうき雲、見えますか
午後5時50分の空。日が延びたな。
小説ブログなので、短いお話を一つ。
配達証明
空に手紙を書いた。
『お父さん、どうしてる?
そちらには、友達がたくさんいて楽しいかな。まさか毎日どんちゃん騒ぎ?
こっちは相変わらずよ。
小躍りするほど嬉しいこともあれば、世界中の光を消してしまいたくなるほど嫌なこともある。
だけどそれも、生きているからこそだね。そう思えば頑張れる。
もうすぐお彼岸ね。
お父さんの好きなお酒を持ってお墓に行くから、そのときだけは降りてきて。
ほんの数分でいいからね。
私たちの元気な顔を見て、ほんの少しお酒を飲んで(少しで済むかしら)それから空に帰ってね。絶対よ。待ってるからね』
2階のベランダから手を伸ばして、まだつぼみが堅い桜の枝にくくり付けた。
空の郵便屋さんが回収するまで、どうか雨が降りませんように。
やがて桜の花が咲き、はらりはらりと舞い始める。
桜の花びらに混ざって、私の部屋に小さな紙切れが舞い落ちる。
『配達証明書:お手紙、たしかに配達しました』
天国郵便局のスタンプ付き。
よかった。ちゃんと届いたのね。
お彼岸に間に合ったかどうかはわからない。
だけどね、手を合わせている間に、お供えしたお酒が少しだけ減っていたの。
これ、私だけのヒミツ。
もぐらさんのブログはこちらです。
http://koedasu.cocolog-nifty.com/blog/
みなさんの空は、どんな空だった?
今年でなんと9回目。
始まりは2011年でしたね。多くの人が空に想いを馳せた年でした。
いろんな地域の空が、今年も集まるのかな。
ひこうき雲、見えますか
午後5時50分の空。日が延びたな。
小説ブログなので、短いお話を一つ。
配達証明
空に手紙を書いた。
『お父さん、どうしてる?
そちらには、友達がたくさんいて楽しいかな。まさか毎日どんちゃん騒ぎ?
こっちは相変わらずよ。
小躍りするほど嬉しいこともあれば、世界中の光を消してしまいたくなるほど嫌なこともある。
だけどそれも、生きているからこそだね。そう思えば頑張れる。
もうすぐお彼岸ね。
お父さんの好きなお酒を持ってお墓に行くから、そのときだけは降りてきて。
ほんの数分でいいからね。
私たちの元気な顔を見て、ほんの少しお酒を飲んで(少しで済むかしら)それから空に帰ってね。絶対よ。待ってるからね』
2階のベランダから手を伸ばして、まだつぼみが堅い桜の枝にくくり付けた。
空の郵便屋さんが回収するまで、どうか雨が降りませんように。
やがて桜の花が咲き、はらりはらりと舞い始める。
桜の花びらに混ざって、私の部屋に小さな紙切れが舞い落ちる。
『配達証明書:お手紙、たしかに配達しました』
天国郵便局のスタンプ付き。
よかった。ちゃんと届いたのね。
お彼岸に間に合ったかどうかはわからない。
だけどね、手を合わせている間に、お供えしたお酒が少しだけ減っていたの。
これ、私だけのヒミツ。
もぐらさんのブログはこちらです。
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みなさんの空は、どんな空だった?
サンタクロースからの手紙 [競作]
やけに寒い夜だった。世界中の子供たちのもとに、一通の手紙が舞い下りた。
それはサンタクロースからの手紙で、子どもたちは目を輝かせた。
興奮しながら封を切り、字が読めない子は親にせがみ、ワクワクしながら手紙を読んだ。
しかし読み終わった子どもたちは、一様に顔を曇らせた。
『よい子のみなさんへ。悲しいお知らせです。
わたしはもう、ずいぶんなおじいさんです。重いプレゼントを運ぶのも、ソリに乗るのも一苦労です。プレゼントを配る気力もありません。もう引退します。ごめんね。サンタクロースより』
これには世界中が大騒ぎ。
翌朝の報道番組は、トップニュースで伝えた。
「サンタクロースが来なかったら、プレゼントはどうするんです?」
「何とか引退を思いとどまってはくれないだろうか。世界中の首脳が頼めば何とかなるのでは?」
「サンタクロースがどこに住んでいるのか、誰も知りませんよ」
「では、プレゼントは親があげることにしたらどうでしょう」
「それでは格差が生まれる。親のいない子はどうするんだ」
「宅配業者に依頼したらどうでしょう」
「コストがかかる。サンタクロースは無償だったが、依頼となるとそうはいかない」
「そんな予算は出せませんよ」
議論に議論を重ねても結論は出ず、とうとうクリスマスイブがやってきた。
街は心なしか沈んでいる。
子どもたちの顔からは、笑顔が消えた。
教会で祈っても、家族でケーキを食べても、プレゼントがもらえない悲しみは拭えない。
しかしクリスマスの朝、目覚めた子供たちの枕元には、ちゃんとプレゼントがあったのだ。
きれいにラッピングされて、子どもたちが欲しいと願ったものが置いてあった。
「わーい、サンタクロースは引退しなかったんだ!」
子どもたちは大はしゃぎ。
もちろんテレビもトップニュースでこれを伝えた。
「サンタクロースは引退していませんでした。しかも、子どもたちが欲しいと思っていたものを送ってくれたのです。なんて素晴らしい」
「サンタのサプライズだったのかな。まったく人騒がせだ」
誰よりも驚いたのは、南の島でバカンスを楽しんでいたサンタクロースだ。
「うそだろ! わしはプレゼントなど配っておらんぞ」
さてさて、プレゼントを子どもたちの枕元に置いたのは、いったい誰でしょう。
とある街頭インタビューに答えるお父さん。
「ABC放送です。子どもたちにプレゼントをあげたのは、親御さんではないかという意見も出ていますが」
「ええ?サンタクロースだろ。俺はプレゼントなんかあげてないぜ」
カメラにウインクをして笑顔で立ち去るお父さん。
お父さんか、お母さんか、おじいちゃんか、おばあちゃんか、はたまた親切な優しい他人か、誰が送ったかなんて、どうでもいい。
だって本物のサンタクロースを見た人は、誰もいないのだから。
******
毎年恒例「もぐらさんとはるさんのクリスマス」に向けて書いた作品です。
クリスマスが楽しみですね。
クリスマスパーティは、こちらです↓
http://xmas-paty.seesaa.net/
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それはサンタクロースからの手紙で、子どもたちは目を輝かせた。
興奮しながら封を切り、字が読めない子は親にせがみ、ワクワクしながら手紙を読んだ。
しかし読み終わった子どもたちは、一様に顔を曇らせた。
『よい子のみなさんへ。悲しいお知らせです。
わたしはもう、ずいぶんなおじいさんです。重いプレゼントを運ぶのも、ソリに乗るのも一苦労です。プレゼントを配る気力もありません。もう引退します。ごめんね。サンタクロースより』
これには世界中が大騒ぎ。
翌朝の報道番組は、トップニュースで伝えた。
「サンタクロースが来なかったら、プレゼントはどうするんです?」
「何とか引退を思いとどまってはくれないだろうか。世界中の首脳が頼めば何とかなるのでは?」
「サンタクロースがどこに住んでいるのか、誰も知りませんよ」
「では、プレゼントは親があげることにしたらどうでしょう」
「それでは格差が生まれる。親のいない子はどうするんだ」
「宅配業者に依頼したらどうでしょう」
「コストがかかる。サンタクロースは無償だったが、依頼となるとそうはいかない」
「そんな予算は出せませんよ」
議論に議論を重ねても結論は出ず、とうとうクリスマスイブがやってきた。
街は心なしか沈んでいる。
子どもたちの顔からは、笑顔が消えた。
教会で祈っても、家族でケーキを食べても、プレゼントがもらえない悲しみは拭えない。
しかしクリスマスの朝、目覚めた子供たちの枕元には、ちゃんとプレゼントがあったのだ。
きれいにラッピングされて、子どもたちが欲しいと願ったものが置いてあった。
「わーい、サンタクロースは引退しなかったんだ!」
子どもたちは大はしゃぎ。
もちろんテレビもトップニュースでこれを伝えた。
「サンタクロースは引退していませんでした。しかも、子どもたちが欲しいと思っていたものを送ってくれたのです。なんて素晴らしい」
「サンタのサプライズだったのかな。まったく人騒がせだ」
誰よりも驚いたのは、南の島でバカンスを楽しんでいたサンタクロースだ。
「うそだろ! わしはプレゼントなど配っておらんぞ」
さてさて、プレゼントを子どもたちの枕元に置いたのは、いったい誰でしょう。
とある街頭インタビューに答えるお父さん。
「ABC放送です。子どもたちにプレゼントをあげたのは、親御さんではないかという意見も出ていますが」
「ええ?サンタクロースだろ。俺はプレゼントなんかあげてないぜ」
カメラにウインクをして笑顔で立ち去るお父さん。
お父さんか、お母さんか、おじいちゃんか、おばあちゃんか、はたまた親切な優しい他人か、誰が送ったかなんて、どうでもいい。
だって本物のサンタクロースを見た人は、誰もいないのだから。
******
毎年恒例「もぐらさんとはるさんのクリスマス」に向けて書いた作品です。
クリスマスが楽しみですね。
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ケンカのち、青空 [競作]
ケンカした。
「大嫌い」って言ったし、言われた。
せっかくの春休みなのに、もう遊べない。
芝生の上にごろんと横になった。
いい天気。きれいな青空。
大嫌いなのに、雲があの子の顔に見える。
「あはは、雲になってもブサイクだ」
「悪かったね、ブサイクで」
あの子が上から、わたしの顔を覗き込んだ。
戻ってきたんだ。
「うわ、鼻の穴が丸見えだ。マジでブサイク」
「うるさい、ブス」
あの子が、わたしの隣にごろんと寝た。
「世界一のブサイク」
「宇宙一のブス」
「前世もブサイク」
「来世もブス」
「死んでもブサイク」
「生き返ってもブス」
寝ながら悪口を言い合って、ふたり同時に吹き出した。
「うちら、人類最強のバカじゃね?」
「霊長類最強のバカだ」
やっぱりこいつ、最高だ。最高にバカで面白い。
ふたりの笑い声を、春の空が吸い込んでいく。
********
今日、3月23日は、もぐらさんの呼びかけで「空見の日」です。
いろんな想いを込めて、空を見ようっていう日です。
桜には早いかと思いましたが、ちらほら咲いていました。
0.5分咲き?
花見の日も近い。
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クリスマスパーティ始まりました [競作]
、メリークリスマス!!
今年も、もぐらさんとはるさんの「クリスマスパーティ」が始まりました。
クリスマスのお話を、ふたりで朗読しています。
私の「スノードームの街」も朗読してくれました。
とてもステキです。
まだ全部は聴いていないのですが、イブの夜、ゆっくり聴こうと思っています。
みなさまもぜひ、聴いてみてくださいね。
こちらです↓
http://xmas-paty.seesaa.net/
それから、もぐらさんの「さとる文庫」で、「2017年のビリージョエル」を朗読していただきました。
こちらもぜひ、聴いてくださいね。
温かい気持ちになりますよ。
http://moguravoice.seesaa.net/article/455725789.html
では、ステキなクリスマスを。
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今年も、もぐらさんとはるさんの「クリスマスパーティ」が始まりました。
クリスマスのお話を、ふたりで朗読しています。
私の「スノードームの街」も朗読してくれました。
とてもステキです。
まだ全部は聴いていないのですが、イブの夜、ゆっくり聴こうと思っています。
みなさまもぜひ、聴いてみてくださいね。
こちらです↓
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それから、もぐらさんの「さとる文庫」で、「2017年のビリージョエル」を朗読していただきました。
こちらもぜひ、聴いてくださいね。
温かい気持ちになりますよ。
http://moguravoice.seesaa.net/article/455725789.html
では、ステキなクリスマスを。
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クリスマスパーティに行こう [競作]
メリークリスマス ♪
お知らせです。
恒例となりました、もぐらさんとはるさんのクリスマスパーティが、今日アップされました。
ブロガーたちが書いたクリスマスストーリーを、もぐらさんとはるさんが朗読しています。
関西と北海道、住むところは違っても、二人の息はピッタリです。
私の作品「オーナメント」も朗読してくれました。
とても素敵に読んでくれました。
まだ全部聞いていませんが、楽しみながらゆっくり聞こうと思います。
みなさんもぜひ^^
パーティ会場は、こちらです。
http://xmas-paty.seesaa.net/
では、素敵なクリスマスをお過ごしください。
お知らせです。
恒例となりました、もぐらさんとはるさんのクリスマスパーティが、今日アップされました。
ブロガーたちが書いたクリスマスストーリーを、もぐらさんとはるさんが朗読しています。
関西と北海道、住むところは違っても、二人の息はピッタリです。
私の作品「オーナメント」も朗読してくれました。
とても素敵に読んでくれました。
まだ全部聞いていませんが、楽しみながらゆっくり聞こうと思います。
みなさんもぜひ^^
パーティ会場は、こちらです。
http://xmas-paty.seesaa.net/
では、素敵なクリスマスをお過ごしください。
オーナメント [競作]
「明日、クリスマスツリーを飾ってね」と妻の愛子が言った。
「私、帰れそうもないし、来年からも飾れないかもしれないから」
病室の白い壁が、愛子を気弱にさせる。
今日も食事を半分以上残したらしい。痩せていく愛子を見るのが辛い。
「毎年、オーナメントをひとつ新しく買っているの。去年はクマのプーさんのオーナメントよ。ほら、あなたがメタボ検診でひっかかったでしょう。だから、お腹が出ていても可愛いプーさんにしたのよ」
去年のことなのに、やけに懐かしそうに語る。
「今年は悠斗に選ばせてあげて。あの子が好きなオーナメントを飾ってあげて」
「わかったよ。君も早く退院できるように、ちゃんと食べてくれよ」
愛子に早く元気になってほしい。僕は主治医に尋ねた。
「クリスマスに一時帰宅させたいのですが、無理でしょうか」
「うーん、奥さんの場合、車いすの生活になりますから、環境が整っていないと難しいですね」
我が家は1階が車庫で2階が住居になっている。
エレベーターなどないし、やはり難しいだろうか。
7歳の悠斗は、愛子の実家に預かってもらっている。
迎えに行くと、子犬のように走ってくる。
「お義母さん、お世話になりました」
「ゆうちゃん、とてもいい子だったわ。算数のテストで100点とったのよ」
「そうか、えらいぞ。悠斗」
義母が声をひそめて「愛子はどう?」と聞いた。
「はあ、相変わらずです。食事もあまり食べてないようで…」
「そう…。ごめんなさいね。弱い子で」
義母が涙声で言うから、こっちまで泣きそうになった。
悠斗は強い子で、入院当初は「ママ、ママ」と言っていたが、今はあえて我慢しているようにみえる。
「悠斗、明日はクリスマスツリーを飾るぞ」
「うん」
「新しいオーナメントは、悠斗がえらんでいいよ」
「オーナメント?」
「ツリーに吊るす飾りだよ」
「あ、じゃあボク、吊るしたいものがある」
「よし、じゃあ明日買いに行こう」
クリスマスイブの日、僕は無理を言って愛子を一時帰宅させた。
「無理よ。私車いすだもん。あの階段のぼれないわ」
「まかせて。僕がお姫様抱っこするから」
「重いわよ、無理よ」
「入院前なら無理だったけど、君、ずいぶん痩せたから大丈夫」
そんなわけで、僕はすっかり軽くなった愛子を抱いて階段をのぼった。
ドアを開けると、悠斗がパンッとクラッカーを鳴らした。
「ママ、お帰り!」
テーブルにはご馳走が並んでいる。
すべて買ってきた惣菜だけど、愛子が好きなものばかりだ。
「ありがとう。パパ、悠斗。ごめんね、ママ、迷惑かけてばかりで」
「そんなのいいから、ツリーを見てごらん」
愛子がクリスマスツリーを見て、思わず涙ぐむ。
ツリーには、悠斗が選んだオーナメントがたくさん吊るしてある。
今年のオーナメントは、お守りだ。
「ママが早く元気になるように、悠斗と一緒に神社を巡ってお守りを買い集めたんだ」
「すごい。素敵なオーナメントだわ。ママ、頑張って早く治すからね」
愛子はそう言って、骨折した足を擦った。
愛子は交通事故に遭って、両足を骨折した。
もともとネガティブな性格の彼女は、すっかり悲観的になり泣いてばかり。
ちゃんとリハビリすれば、すっかり治るというのに。
「ママ、やっとリハビリ頑張る気になってくれたね」
「うん。世話の焼けるママだね」
悠斗と僕がそんなふうにささやきあっているのをよそに、愛子はフライドチキンにかぶりついている。
「食欲が出てきたわ。やっぱり家はいいわね」
おいおい、食べ過ぎないでくれよ。
お姫様抱っこが出来なくなるからさ。
愛子の笑顔と悠斗の笑顔。来年は3人でツリーを飾ろう。
*もぐらさんとはるさんのクリスマスパーティに、今年も参加します。
どんな作品が集まるか、楽しみですね。
にほんブログ村
「私、帰れそうもないし、来年からも飾れないかもしれないから」
病室の白い壁が、愛子を気弱にさせる。
今日も食事を半分以上残したらしい。痩せていく愛子を見るのが辛い。
「毎年、オーナメントをひとつ新しく買っているの。去年はクマのプーさんのオーナメントよ。ほら、あなたがメタボ検診でひっかかったでしょう。だから、お腹が出ていても可愛いプーさんにしたのよ」
去年のことなのに、やけに懐かしそうに語る。
「今年は悠斗に選ばせてあげて。あの子が好きなオーナメントを飾ってあげて」
「わかったよ。君も早く退院できるように、ちゃんと食べてくれよ」
愛子に早く元気になってほしい。僕は主治医に尋ねた。
「クリスマスに一時帰宅させたいのですが、無理でしょうか」
「うーん、奥さんの場合、車いすの生活になりますから、環境が整っていないと難しいですね」
我が家は1階が車庫で2階が住居になっている。
エレベーターなどないし、やはり難しいだろうか。
7歳の悠斗は、愛子の実家に預かってもらっている。
迎えに行くと、子犬のように走ってくる。
「お義母さん、お世話になりました」
「ゆうちゃん、とてもいい子だったわ。算数のテストで100点とったのよ」
「そうか、えらいぞ。悠斗」
義母が声をひそめて「愛子はどう?」と聞いた。
「はあ、相変わらずです。食事もあまり食べてないようで…」
「そう…。ごめんなさいね。弱い子で」
義母が涙声で言うから、こっちまで泣きそうになった。
悠斗は強い子で、入院当初は「ママ、ママ」と言っていたが、今はあえて我慢しているようにみえる。
「悠斗、明日はクリスマスツリーを飾るぞ」
「うん」
「新しいオーナメントは、悠斗がえらんでいいよ」
「オーナメント?」
「ツリーに吊るす飾りだよ」
「あ、じゃあボク、吊るしたいものがある」
「よし、じゃあ明日買いに行こう」
クリスマスイブの日、僕は無理を言って愛子を一時帰宅させた。
「無理よ。私車いすだもん。あの階段のぼれないわ」
「まかせて。僕がお姫様抱っこするから」
「重いわよ、無理よ」
「入院前なら無理だったけど、君、ずいぶん痩せたから大丈夫」
そんなわけで、僕はすっかり軽くなった愛子を抱いて階段をのぼった。
ドアを開けると、悠斗がパンッとクラッカーを鳴らした。
「ママ、お帰り!」
テーブルにはご馳走が並んでいる。
すべて買ってきた惣菜だけど、愛子が好きなものばかりだ。
「ありがとう。パパ、悠斗。ごめんね、ママ、迷惑かけてばかりで」
「そんなのいいから、ツリーを見てごらん」
愛子がクリスマスツリーを見て、思わず涙ぐむ。
ツリーには、悠斗が選んだオーナメントがたくさん吊るしてある。
今年のオーナメントは、お守りだ。
「ママが早く元気になるように、悠斗と一緒に神社を巡ってお守りを買い集めたんだ」
「すごい。素敵なオーナメントだわ。ママ、頑張って早く治すからね」
愛子はそう言って、骨折した足を擦った。
愛子は交通事故に遭って、両足を骨折した。
もともとネガティブな性格の彼女は、すっかり悲観的になり泣いてばかり。
ちゃんとリハビリすれば、すっかり治るというのに。
「ママ、やっとリハビリ頑張る気になってくれたね」
「うん。世話の焼けるママだね」
悠斗と僕がそんなふうにささやきあっているのをよそに、愛子はフライドチキンにかぶりついている。
「食欲が出てきたわ。やっぱり家はいいわね」
おいおい、食べ過ぎないでくれよ。
お姫様抱っこが出来なくなるからさ。
愛子の笑顔と悠斗の笑顔。来年は3人でツリーを飾ろう。
*もぐらさんとはるさんのクリスマスパーティに、今年も参加します。
どんな作品が集まるか、楽しみですね。
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good-by [競作]
修は、入院中の叔父を見舞うために神戸に来た。
元気そのものだった叔父が、あんなに痩せてしまった。
ショックだった。
今日中に東京に帰らなければならないが、このまま帰る気になれなかった。
たしかこの辺りに、以前叔父と来たバーがあった。「海神」という名前だった。
少しだけ飲んでいこうと、記憶をたどって店に行った。
「いらっしゃいませ」
静かな店だ。穏やかで人のよさそうなマスターが修を安心させた。
たしか「鏑木さん」と叔父は呼んでいた。
修がカウンターに座ると鏑木は、高木と書かれたボトルを手に取った。
「こちらでよろしいですか?」
「え?僕のこと、憶えてるんですか?」
「高木さんの甥御さんですよね。高木さんから、あなたが来たら飲ませてくれと言付かっています」
「叔父さんらしいな」と思いながら、修は水割りをゆっくり飲んだ。
もう長くはないと知りながら、神戸を訪れる修のためにボトルを入れたのだろう。
「叔父は僕を、自分の息子のように可愛がってくれました」
「ここでも、よくあなたの話をしていました」
「もう一度、飲みたかったな」
しんみりした空気を振り払いように、修はおかわりを頼んだ。
こんな寂しい飲み方を、叔父は望まない。楽しい酒が好きな人だ。
時計を気にしながら、「また来ます」と席を立った。
ボトルはまだ半分ほど残っている。
数か月後、修は再び海神を訪れた。
「いらっしゃいませ」
鏑木は、グラスを磨く手を止めた。
修に支えられて、別人のように痩せた高木が力なく「よお」と手を上げたからだ。
「高木さん、お久しぶりです」
「ボトルを全部、修に飲まれちゃかなわんからな」
病院から、外出許可をもらってきたという。
「最後の晩餐や」と高木が笑い、「毎日そう言いながら食ってるよね」と修がさらに笑う。
高木は、かなり薄く作った水割りに、少し口をつけただけだ。
それでも明るい笑顔は健在だ。
「俺には子供がいないから、修と飲めるのはほんま嬉しいんや」
「叔父さん、それ55回は聞いたよ」
「そうか。そしたらあと45回言おう。100回できりがいいやろ」
「勘弁してよ」
微笑ましいふたりに、鏑木もつられて笑った。
彼らには、どれだけの時間が残されているのだろう。
小一時間ほどで、席を立った。
「また来るよ」と高木が弱弱しく手を上げた。
修が、鏑木にだけ聞こえるように「最後に来られてよかったです」と言った。
ふたりを見送って、少し残ったボトルを下げると、テーブルに水滴で描かれた文字が見えた。
『good-by』
また来ると言ったのに…。鏑木は思わず目頭をおさえた。
秋の夜風がいくらか肌寒い。
修は高木の身体を気遣いながら、ゆっくりタクシーに乗り込んだ。
「いい夜やったな」
高木が絞り出すような声でつぶやいた。
「そうだね」
修は、そう答えるのがやっとだった。
**********
雫石鉄也さんのブログから生まれた「バー海神」
とても素敵なお店なので、サイドストーリーを書きました。
雫石さんのお話はこちらです。
http://blog.goo.ne.jp/totuzen703/e/a194d1e39a491e43ff24434ad3c5c5e1
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元気そのものだった叔父が、あんなに痩せてしまった。
ショックだった。
今日中に東京に帰らなければならないが、このまま帰る気になれなかった。
たしかこの辺りに、以前叔父と来たバーがあった。「海神」という名前だった。
少しだけ飲んでいこうと、記憶をたどって店に行った。
「いらっしゃいませ」
静かな店だ。穏やかで人のよさそうなマスターが修を安心させた。
たしか「鏑木さん」と叔父は呼んでいた。
修がカウンターに座ると鏑木は、高木と書かれたボトルを手に取った。
「こちらでよろしいですか?」
「え?僕のこと、憶えてるんですか?」
「高木さんの甥御さんですよね。高木さんから、あなたが来たら飲ませてくれと言付かっています」
「叔父さんらしいな」と思いながら、修は水割りをゆっくり飲んだ。
もう長くはないと知りながら、神戸を訪れる修のためにボトルを入れたのだろう。
「叔父は僕を、自分の息子のように可愛がってくれました」
「ここでも、よくあなたの話をしていました」
「もう一度、飲みたかったな」
しんみりした空気を振り払いように、修はおかわりを頼んだ。
こんな寂しい飲み方を、叔父は望まない。楽しい酒が好きな人だ。
時計を気にしながら、「また来ます」と席を立った。
ボトルはまだ半分ほど残っている。
数か月後、修は再び海神を訪れた。
「いらっしゃいませ」
鏑木は、グラスを磨く手を止めた。
修に支えられて、別人のように痩せた高木が力なく「よお」と手を上げたからだ。
「高木さん、お久しぶりです」
「ボトルを全部、修に飲まれちゃかなわんからな」
病院から、外出許可をもらってきたという。
「最後の晩餐や」と高木が笑い、「毎日そう言いながら食ってるよね」と修がさらに笑う。
高木は、かなり薄く作った水割りに、少し口をつけただけだ。
それでも明るい笑顔は健在だ。
「俺には子供がいないから、修と飲めるのはほんま嬉しいんや」
「叔父さん、それ55回は聞いたよ」
「そうか。そしたらあと45回言おう。100回できりがいいやろ」
「勘弁してよ」
微笑ましいふたりに、鏑木もつられて笑った。
彼らには、どれだけの時間が残されているのだろう。
小一時間ほどで、席を立った。
「また来るよ」と高木が弱弱しく手を上げた。
修が、鏑木にだけ聞こえるように「最後に来られてよかったです」と言った。
ふたりを見送って、少し残ったボトルを下げると、テーブルに水滴で描かれた文字が見えた。
『good-by』
また来ると言ったのに…。鏑木は思わず目頭をおさえた。
秋の夜風がいくらか肌寒い。
修は高木の身体を気遣いながら、ゆっくりタクシーに乗り込んだ。
「いい夜やったな」
高木が絞り出すような声でつぶやいた。
「そうだね」
修は、そう答えるのがやっとだった。
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雫石鉄也さんのブログから生まれた「バー海神」
とても素敵なお店なので、サイドストーリーを書きました。
雫石さんのお話はこちらです。
http://blog.goo.ne.jp/totuzen703/e/a194d1e39a491e43ff24434ad3c5c5e1
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