SSブログ

家電ハラスメント [コメディー]

私、疲れてます。
毎日家電に振り回されてます。

まずはホットプレート。
ピンク色でとても可愛いんです。マカロンみたいな可愛い蓋で、取っ手はイチゴ。
ショップで一目惚れして買いました。
ところがホットプレートはわがままで、パンケーキしか焼かせてくれないんです。
お好み焼きや焼きそばは、電源切って全力で拒否。
「おとぎの国には、お好み焼きも焼きそばもないわ」
餃子なんか焼こうとしたら、蓋で手をはさまれます。
「ここはおとぎの国よ。ニンニクの匂いがついたらどうしてくれるの?」
アリスだってシンデレラだって、目の前に餃子があれば食べますよね。
ああ、一度でいい。ニンニクたっぷりのタレで、焼き肉食べたーい!


それから電子レンジです。
すぐにキレて、口うるさいんです。
コンビニ弁当を温めようとした時です。
「はぁっ?なんでコンビニで温めてもらわないの?おれ今休憩中なんだけど」
「レジが混んでて」
「そんなのさあ、温めてる間に次の客の対応するから大丈夫なんだよ。だいたいさあ、いつも電気代が高いって愚痴ってる割に無駄なことしてるよね。分かったよ、温めてやるからスイッチ押せよ。あー、ほら、ブレーカー落ちた。あー、面倒くさいなあ。もう、冷えた弁当でも食ってろ」
ああ、これって、パワハラで訴えること出来ますか?


次は、コーヒーメーカーです。
コーヒーを飲んでリラックスしようと思うと、決まって話しかけてきます。
「これは、いくらのコーヒーかね?」
「200グラムで、500円くらいだったかしら」
「安い豆だな。まあいい、不景気だしな。ところで、僕には豆を挽く機能がついているのをご存知かな?ほう、知っているのに何故使わない? どうせ洗うのが面倒とか、そういう理由だろう。嘆かわしい。そういうことに手間をかけるからこそ旨いコーヒーが飲めるんだ。せっかくの素晴らしい機能を、なぜ使いこなすことが出来ないんだ。これでは宝の持ち腐れ。まあいい。安い豆でも100倍美味しく淹れたから飲みなさい」
ああ、コーヒーは美味しくても、ちっともリラックスできません。


極めつけはエアコンです、
20分ほどの外出だったので、エアコンをつけたまま出かけました。
ところが帰ってきたら部屋が寒いんです。まるで氷河期です。
なんとエアコンが、冷房になっていたのです。
「ちょっと、どうして冷房になってるの?」
「だって、室外機さんに悪くて。私は部屋の中で、冬はぬくぬく、夏はひんやり、快適に過ごしているけど、室外機さんは一年中外よ。寒くても暑くても、雨でも雪でも。室外機さんの気持ちを考えたら私、たまらくなっちゃって」
「気持ちは分かるわ。でもね、こんなに部屋を冷やしたら、電気代が高くなっちゃう。お願い、暖房に戻して」
「わかったわ。じゃあせめて、室外機さんに毛布を掛けてあげて。室外機さんの気持ちも考えてあげて。室外機さん、暖房に切り替えるわね。ごめんね、強く生きてね」
うわ、水漏れ。これってエアコンの涙? いや、迷惑なんだけど。

あー、きょうも疲れました。
ゴロンと横になったとたん「ちょっと!」と声がした。
「テレビさん、どうしました?」
「寝るなら消してよ」
「いえ、見てます」
「うそ、今、目をつぶってたわよ」
「見てるってば」(昭和のお父さんか)



nice!(13)  コメント(8) 

小学生、浦島太郎 [名作パロディー]

はじめまして。浦島太郎です。
今日からこのクラスに編入しました。
特技は、魚を捕ることです。
よろしくお願いします。

僕は約600年前からタイムスリップしてきました。
海の中にある竜宮城っていうところから戻ったら、時代が大きく変わっていたのです。
親もいなくて、家もなくて、村はすっかり変わっていました。
途方に暮れていましたが、村……いや、この町の人はなぜかみんな僕のことを知っていました。
「浦島太郎さんでしょ」
「カメを助けて竜宮城に行った浦島さんよね」
僕は、意外と有名人でした。

町の人はみんな親切で、いろいろ世話をしてくれました。
600年の間に、この国が大きく変わったことを教えてくれました。
僕が学校へ行っていないことを知って、小学校から学ぶように勧めてくれました。
年齢は皆さんよりずいぶん上ですが、仲良くしてください。

「はい、みんな拍手!」
パチパチパチ
「ところで浦島君、急な編入だったから、君の給食が用意できなかったの。お弁当は持ってきた?」
「はい、組合長の奥さんが作ってくれました」
「それはよかったわ。3年生に混ざっての勉強は大変だけど頑張ってね。教科書とノートの使い方を説明するわね」
「はい、お願いします」
「みんなはちょっと自習しててね」
「はーい」


「なあ、浦島君の弁当って、あれかな?」
「きっとそうだよ。大事そうにふろしきに包んでる」
「きっと豪華な弁当なんだろうな」
「弁当箱大きいし、たぶんおかずもいっぱいだね」
「ローストビーフとか、エビフライとか入ってるかも」
「ちょっと開けて見ちゃおうぜ」
「ちょっと男子たち、やめなさいよ」
「いいじゃん。見るだけ、見るだけ」
「うわ、紐が掛かってる」
「高級なやつだ」
「いい、開けるよ。せーの」
パカ


「はーい、みんな、授業を始めますよ。えっ、なに、この煙。えっ、あの、どちらの老人会の方々ですか? うちの生徒たちはどこに?」
「先生、僕が乙姫様にもらった玉手箱が開いています。絶対開けるなって言われたのにな。あれ、先生、どこに行くんですか?」
「煙を浴びたら大変、私、婚活中なのよ」

乙姫様は、いったい何を下さったのだろう。
そしていきなり現れた老人たちは何?
僕のクラスメートたちは、どこに行ってしまったのかな?
(浦島君、家に帰ってうらしまたろうの物語を読んで下さい。すべて分かります)


nice!(15)  コメント(8) 

不快な通勤快速 [コメディー]

電車が揺れるたびに、コーヒーの空き缶が右へ左へゴロゴロ転がった。
今日の電車は、珍しく空いている。

私の右隣に座る女が言った。
「非常識ね。電車の中に空き缶を捨てるなんて。飲み終わって邪魔になったからって、平気でポイするなんて人間のクズよ」
私の左隣に座る男が、それに反論した。
「言い過ぎ。捨てたかどうかわからないよ。足元に置いたら転がっちゃったのかも。何でも悪く取るのは君の悪い癖だ」
「はあ?何いい人ぶってるのよ。このコウモリ男。誰にでもいい顔するから出世できないのよ」
「君みたいに粗探しする女が、陰でお局様なんて呼ばれるんだろうな」
「粗探しなんてしてないわ。私は正義感が強いだけよ」

「あの……」と私は、両隣のふたりの顔を交互に見ながら言った。
「席、代わりましょうか?」

この二人は、同じ車両の同じドアから乗ってきたが、まるで他人みたいに私を挟んで座った。二人連れだと分かっていたら席をずらしたのに。

「いいよ。代わらなくて」と男が言った。
「そうよ。見てわかるでしょ。私たちケンカ中なの」
「そうそう。隣に座ったら思い切り脛を蹴られる。そういう女なんだ」
「失礼ね。脛なんか蹴らないわよ。こっちのつま先が痛くなるわ」
ああ、居づらい。
そのときだ。乗って来た男子高校生が、足元の空き缶を蹴った。
その缶は、斜め前に座る老人の足に見事に当たった。

「ちょっと君、電車の中で缶を蹴るなんて非常識よ。おじいさんに謝りなさいよ」
女が言った。
「俺、サッカー部だから、足元に来たものは何でも蹴っちゃうの。そういう習性なの」
高校生は「めんどくせえ」と言いながら、車両を移ってしまった。
「まあ、なんて子。親の顔が見てみたい」
「あのさ、君も悪いよ」と男が言った。
「何が悪いの?」
「君はさっき、あのご高齢の方をおじいさんと呼んだけど、あの人は君のおじいさんじゃない。それに、もしかしたら老けて見えるだけで、そんなに年寄りじゃないかもしれない。おじいさんは失礼だよ。君だっておばさんって呼ばれたら嫌だろう」
「私はおばさんじゃないわ。でもあの人は誰がどう見てもおじいさんよ。要するにあなたは私が言うことを全部否定したいだけなのよ」
「そうじゃないよ。君はもっともらしく正義をかざすけど、根本に愛がない。自己満足なんだ」
「あら、言ってくれるじゃないの。そもそもあなたは……」
「あっ、降りる駅だ。続きは家でやろう」
「望むところよ。あっ、ビールあったかしら」
「コンビニ寄って行こう。久々にバドワイザーの気分」
「いいね。ビールの好みだけは合うわね、私たち」
二人は寄り添って電車を降りた。しんどかった。嵐が過ぎた気分だ。

そう思ったのもつかの間、今度は斜め前の老人が私の隣に移動して来た。
「ねえ、あんた。あたしゃおじいさんじゃないよ」
「はあ、そうですね」
「あたしゃ、ばあさんだ」
「えっ、あっ、そうですか。でも私、関係ないです。さっきの夫婦とは赤の他人です」
「関係あるよ」
老人は、ふふっと笑った。
「あの空き缶を捨てたのはあんただろう。あたしゃ見てたよ。あんたがシートの下に缶を投げるのをね」
あー、生きた心地がしないとはこのことだ。
確かに捨てた。私が捨てた。まさか見られていたなんて。

「あんた、降りるときに缶を拾って行くんだよ。あたしゃ終点まで行くからね。ずっと見てるよ」
老人はニタっと笑って元の席に戻った。
電車が揺れて、空き缶が私の足元に転がって来た。
飲み終わったときよりずいぶん汚れている。
「おかえり」
私は缶を拾い上げて、電車を降りた。あー、しんどかった。

nice!(15)  コメント(12) 

お知らせ(本が出ます)

お知らせです。

3月25日に発売される児童文庫
「意味がわかると怖い3分間ノンストップショートストーリー ラストで君はゾッとする」
に、私の作品が載っています。

81Asl1ba9DL._SY385_.jpg

17の怖いお話が載っています。
ラストで君はシリーズは、小学生に大人気なので、すごく楽しみです。
近くなったら、しつこく宣伝するのでよろしくお願いします^^
3月25日は、みんなで本屋さんに行こう!!

予約受付中です↓
https://amzn.asia/d/1LfNBB9

nice!(14)  コメント(14)