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深大寺恋物語作品集

お知らせです。

第18回深大寺恋物語で、調布市長賞を頂きました。
深大寺を舞台にした恋愛小説です。

今回で4回目の応募でしたが、これまで私、深大寺に行ったことがありませんでした。
ちょっと遠いし、コロナで自粛もあったし。
だけど去年、初めて深大寺に行きました。
やっぱりネットの情報と想像で書くのと、実際行って感じたことを書くのは違います。
結果が残せて、本当に行ってよかったと、しみじみ思いました。

このたび、その作品集が発売になりました。
受賞作のタイトルは「妖怪の森」です。
怖い話ではありません^^
興味がある方は、ぜひ読んでみてくださいね。

こちらのサイトから購入できます。↓
https://jintanren.stores.jp

深大寺の境内でも売っています。お近くの方はそちらでも。
18集ですので、お間違いなく。

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おとぎ話(笑)33 [名作パロディー]

<ウサギとカメ>

ウサギとカメは、山の頂上まで競争をすることになりました。
「へへへ、楽勝!」
余裕のうさぎでしたが、山道は昼でも暗く、不気味な鳥や獣の鳴き声が聞こえます。
「こ、怖いな」
ウサギは先に進むのが怖くなってしまいました。
ずいぶん遅れてカメがやってきました。
「やっと来た。待ちくたびれたよ」
「あれ、ウサギさん、どうしたの?」
「山道が怖いから一緒に行こう。おいら、耳がいいから色んな音が聞こえちゃうんだ」
「怖がりだな。いいよ。一緒に行こう」
「できれば前を歩いてくれる?」
「はいはい」
こうして、0.1秒差で、カメの勝利となりました。


<赤ずきんちゃん>

悪いオオカミは、赤ずきんが森で花を摘んでいる隙に先回りして、おばあさんをぺろりと食べました。
そしておばあさんになりすまし、ベッドの中で赤ずきんを待ちました。
しかし赤ずきんは、いつになっても来ません。
「遅いなあ。まだ森にいるのかな。迷ったのかな」
あんまり遅いので、迎えに行くことにしました。
案の定、赤ずきんは森の中で迷子になっていました。
「赤ずきんちゃん、出口はこっちだよ」
「あ、オオカミさん。よかった、すっかり迷っちゃった」
「いっしょにおばあさんの家に行こう」
赤ずきんは、オオカミといっしょにおばあさんの家に行きました。
「赤ずきんちゃん、ちょっと待ってて。声をかけるまで、ドアの前にいてね」
オオカミは急いでおばあさんの服を着て、ベッドに入りました。
「赤ずきんちゃん、いいよ」
赤ずきんは部屋に入り、おばあさんになりすましたオオカミを見下ろして言いました。
「あのさ、食べるチャンスいくらでもあったよね。こんな小芝居いる?」


<浦島太郎>

浦島太郎は、玉手箱を開けて、白髪のおじいさんになってしまった。
さて、これからどうしたものか。
家はない、家族もいない、仕事もない。
途方にくれた浦島は、もう一度竜宮城に戻りたいと思った。
苛められているカメを探して、砂浜を歩きまわり、ようやく見つけた。
「こらこら君たち。カメを苛めちゃダメだよ」
子どもたちは「ウザ!」と言いながら去っていった。
「助けてくれてありがとう。最近の苛めは陰湿だからね。いやあ、助かった」
「カメさん、ではお礼に竜宮城に連れて行ってください」
「ああ、竜宮城ね。うーん。連れてってあげたいけど無理だね」
「なぜです?」
「年齢制限あるんだわ。乙姫、若いのが好きだから」
カメは、孤独な老人を砂浜に残し、海に帰っていった。


<王様の耳はロバの耳>

とある国に、ロバの耳を持つ王様がいました。
王様は恥ずかしくて、城から一歩も出ませんでした。
ある日、床屋がお城に呼ばれました。王様の髪を切るためです。
床屋は、王様を見てビックリしました。

どうなってるんだ。耳だけロバなんて、ありえないだろう。突然変異かな。こんなの初めて見たよ。

「おい床屋、このことを誰かに話したら、おまえの命はないと思え」
「はい、誰にも言いません」

ひえー、怖い。
言えるわけがないだろう。王様の体が、耳以外人間だなんて。
ここはロバの国なのに。
あっ、2本足で歩いてる。手の指5本ある。
ヤバい。面白い。やっぱり黙ってる自信ないかも。


***
えっ、このシリーズ33回め?
さすがにそろそろネタ切れでしょ。
と言いつつ、まだまだ続きます(たぶん)

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春の陽気に誘われて [コメディー]

ずっと部屋に籠っていたけれど、いい陽気になってきたから家を出た。
食料もなくなってきたし、ずっと引き籠ってもいられない。
まだ少し肌寒かったので、パーカーのフードを目深に被った。
マスクもまだ外せない。

住宅街を歩いていると、庭先のツツジがきれいな家を見つけた。
濃いピンクが一面に広がって、なんて美しい。
思わず見とれていたら、垣根のあいだから家主が現れた。
「何か御用ですか?」
「あっ、いや、ツツジがきれいだったもので」
家主が睨むので、俺はそそくさとその場を後にした。
世知辛い世の中だ。うっかり他人の家も覗けない。

公園に行った。公園の花なら、いくら見ても文句は言われない。
チューリップが見事だ。
近くの幼稚園児が集団で遊びに来ている。
「お花、きれいだね」
近くにいた子に話しかけると、すかさず先生が飛んできた。
「さあ、園に帰りますよ」と、さらうように園児を連れて行った。
世知辛い世の中だ。子どもに話しかけただけなのに。

せっかくだから写真でも撮ろう。
俺はスマホを取り出して、チューリップの写真を撮った。
すると、向かい側にいた若い女がチューリップを跨いでやってきた。
「ちょっと、今撮りましたよね」
「ああ、花の写真を撮ったが」
「私のこと、撮りましたよね。盗撮ですよね」
「いや、たまたまあなたが入ってしまっただけで、撮ったわけでは……」
「消してください。今すぐ消して」
「分かったよ。消すよ」
せっかくきれいに撮れたチューリップの写真を消した。
世知辛い世の中だ。写真を撮っただけなのに。

誰もいなくなった公園のベンチに座った。
日差しが暖かいので、フードを取った。
そうか。このフードとマスクとサングラスのせいだ。
すっかり不審者扱いされてしまったのだ。
何だ、そうか。
俺は、マスクとサングラスをポケットにしまって立ち上がった。

「ちょっとすみません」
男が話しかけてきた。
ほら、フードとマスクとサングラスを取ったら、さっそく話しかけられた。
人恋しかった俺は、にこやかに振り向いた。
「はい、何でしょう」

立っていたのは警察官だった。
警察官は俺の名前を呼んで、強い力で腕をつかんだ。
ああ、そうだった。
俺、指名手配されてたんだった。

ずっと隠れていたのに、春の陽気のせいで捕まっちまった。
あーあ、世知辛い世の中だ。

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