ご先祖さまがやってきた [コメディー]
「ケンちゃん、今日遊びに行ってもいい?」
「今日はだめだよ。ご先祖さまが来るから。
今からお墓にお迎えに行くんだ」
「へえ、いいなあ」
「よっちゃんの家には来ないの?」
「うちはアパートで狭いから、来てくれないのかな」
「ふうん、うちは毎年この時期になると来るよ」
「ご先祖さまと何をするの?」
「トランプやったり、昔の話を聞いたり、あの世の話を聞いたり…」
「うわー、楽しそうだな~」
*その夜、よしきの家*
「ただいま」
「あなた、お帰りなさい。今日よしきがね、(何でうちにはご先祖さまが来ないのか)って泣いて大変だったのよ。
ねえ、ひとりくらい何とかならないかしら、ご先祖さま」
「ご先祖さまか…。うちじゃあ無理だな。お墓まで高速を使っても3時間はかかるからな。迎えに行けないよ」
「そうね、連れてくるだけならいいけど、送っていかなきゃいけないしね」
「よしきにはかわいそうだが、仕方ないな」
RRRRRR
「電話だわ。はい、もしもし…
あら、ケンちゃんママ。… え?ご先祖さまを貸していただけるの?
まあ、それはよしきも喜ぶわ。でも悪いわ~。いいのかしら。
… そう?それなら、お借りしようかしら。ええ、ええ、本当にすみません」
「ご先祖さまを貸してもらえるのか?」
「そうなの。どうしよう、もてなし方がわからないわ」
「ネットで調べてみよう。
何々?線香を焚いたり、拝んではいけません。あくまでも生きている人と同じように接しましょう。なるほど。
注意事項として、スリッパは出さないこと、と書いてある」
「あら?どうして?」
「足が無いからだろう」
*8月16日(送り盆)*
「ああ、ご先祖さま、ようやく帰ったわね。疲れたわ」
「慣れてないからな。でも楽しんでもらえてよかったじゃないか」
「ええ、よしきも別れがつらくて泣いていたわ」
「それにしても、ケンちゃんのご先祖さまが、織田信長の家来の奥さんの従弟の子供とは、驚いたな」
「そうね。あなたのご先祖さまも、武田信玄の家来の姪っ子の孫と幼馴染じゃなかった?」
「ああ、そんな話も聞いたな。それにしても…ぶぶ…ケンちゃんのご先祖さま、ブサイクだったよな」
「あなた、不謹慎よ。まだその辺にいるかも知れないわ」
「そうだな。お盆以外に化けて出られては、かなわないな」
「あ、あなた、みて、送り火よ」
「本当だ。なんだかお礼を言ってるみたいだな」
「来年は、うちのご先祖さまもお迎えに行きましょうか」
「そうだな。そうしよう」
ふたりは遠い送り火に、そっと手を合わせた。
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「今日はだめだよ。ご先祖さまが来るから。
今からお墓にお迎えに行くんだ」
「へえ、いいなあ」
「よっちゃんの家には来ないの?」
「うちはアパートで狭いから、来てくれないのかな」
「ふうん、うちは毎年この時期になると来るよ」
「ご先祖さまと何をするの?」
「トランプやったり、昔の話を聞いたり、あの世の話を聞いたり…」
「うわー、楽しそうだな~」
*その夜、よしきの家*
「ただいま」
「あなた、お帰りなさい。今日よしきがね、(何でうちにはご先祖さまが来ないのか)って泣いて大変だったのよ。
ねえ、ひとりくらい何とかならないかしら、ご先祖さま」
「ご先祖さまか…。うちじゃあ無理だな。お墓まで高速を使っても3時間はかかるからな。迎えに行けないよ」
「そうね、連れてくるだけならいいけど、送っていかなきゃいけないしね」
「よしきにはかわいそうだが、仕方ないな」
RRRRRR
「電話だわ。はい、もしもし…
あら、ケンちゃんママ。… え?ご先祖さまを貸していただけるの?
まあ、それはよしきも喜ぶわ。でも悪いわ~。いいのかしら。
… そう?それなら、お借りしようかしら。ええ、ええ、本当にすみません」
「ご先祖さまを貸してもらえるのか?」
「そうなの。どうしよう、もてなし方がわからないわ」
「ネットで調べてみよう。
何々?線香を焚いたり、拝んではいけません。あくまでも生きている人と同じように接しましょう。なるほど。
注意事項として、スリッパは出さないこと、と書いてある」
「あら?どうして?」
「足が無いからだろう」
*8月16日(送り盆)*
「ああ、ご先祖さま、ようやく帰ったわね。疲れたわ」
「慣れてないからな。でも楽しんでもらえてよかったじゃないか」
「ええ、よしきも別れがつらくて泣いていたわ」
「それにしても、ケンちゃんのご先祖さまが、織田信長の家来の奥さんの従弟の子供とは、驚いたな」
「そうね。あなたのご先祖さまも、武田信玄の家来の姪っ子の孫と幼馴染じゃなかった?」
「ああ、そんな話も聞いたな。それにしても…ぶぶ…ケンちゃんのご先祖さま、ブサイクだったよな」
「あなた、不謹慎よ。まだその辺にいるかも知れないわ」
「そうだな。お盆以外に化けて出られては、かなわないな」
「あ、あなた、みて、送り火よ」
「本当だ。なんだかお礼を言ってるみたいだな」
「来年は、うちのご先祖さまもお迎えに行きましょうか」
「そうだな。そうしよう」
ふたりは遠い送り火に、そっと手を合わせた。
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2010-08-11 10:45
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あったかいなぁ、りんさんは。
ご先祖様が帰ってくるお話を描くのに、
ご先祖様を取り巻く家族に語らせるってとこや
前後に話している言葉で語らせるってとこの発想、
参考にしたいなぁ!
僕もなんかお盆ネタを考え中ですけど、
ボンカレーしか浮かびません。
by 矢菱虎犇 (2010-08-11 11:46)
お盆かぁ・・・。
私は仏さんは ほっとけさん なので毎年 気が重いです。
ご先祖様に思いをはせないわけではないのですが・・・。
でも織田信長や武田信玄にゆかりのあるご先祖様なら
楽しいかもしれません。(^O^)
by もぐら (2010-08-11 16:15)
<矢菱さん>
ありがとうございます。
会話だけで話を作るときは、これでいいかな?といつも悩みます。
褒めていただいて嬉しいです。
ボンカレー…フフ、ひとりで笑ってしまいました。
by リンさん (2010-08-12 20:02)
<もぐらさん>
私は毎年お墓に行きますが、迎えに行くだけで送っていかないんです。だからいつまでも居たりして(汗)
織田信長・武田信玄…全くの他人なんですけどね(笑)
先祖をたどれば、意外と繋がりがあるかもしれませんね。
by リンさん (2010-08-12 20:06)
人の死ぬお話をボクもよく書くんですけど、こういう風にほのぼのとしたものが書けないんです。
なんか残酷なものになってしまって。
それに比べておりんさんは、いつもこういうほのぼのとしたものが書けるからうらやましいですね。
ボクもケータイも圏外になるような田舎に行って、ほのぼのしてきたはずなのに、書くものはちっともだもんなあ。
コツはあるんですか?
by ヴァッキーノ (2010-08-15 09:08)
<ヴァッキーノさん>
ありがとうございます。
もともとコメディーが書きたくてブログを始めたので、重い話は苦手なんですよ。
私は逆に、ヴァッキーノさんや、矢菱さんのようなブラックに憧れますよ。
コツって特にないんですけど、ハッピーエンドが好きなんでしょうね、きっと。
by リンさん (2010-08-15 14:46)