こども忠臣蔵 [名作パロディー]
浅野くんと吉良くんは、とても仲が悪い。
「まあ、またあなたたちなの?いったいケンカの原因は何?」
「吉良くんが僕をバカにしたんです」
「そうなの?」
「はい、田舎者って言われました」
「田舎者だから田舎者って言ったんだ。本当のことじゃないか」
「吉良くん、そんなこと言っちゃダメよ。でも浅野くん、だからといって廊下で吉良くんを叩いちゃダメでしょう」
「そうです。先に手を出したのは浅野です」
「お前だって、死ねとか言って腹を蹴ったじゃないか」
「もう、ふたりともダメよ。全くどうして仲良くできないのかしら。明日までに反省文を書いてきなさい」
その帰り道、うなだれて帰る浅野くんに、同じクラスの大石くんが声をかけた。
「また怒られちゃったね。浅野くん」
「あ、大石くん。嫌になっちゃうよ。悪いのは吉良なのにさ」
「仇をうってあげようか」
「仇?」
「うん、僕も吉良にはムカついているんだ。金持ちだからってエラそうなんだもん」
「でも、どうするの?」
「討ち入りだよ」
「討ち入り?」
「そう。みんなで吉良の家を襲撃するんだ」
「みんなって?」
「仲間を募ったら、47人集まったんだ」
「え?47人も!」
「そう。47人で吉良邸を襲撃するんだ。日にちは12月14日。いいね」
「う…うん」
浅野くんは、「大ごとになっちゃったな。そこまでしなくていいのに」と思ったけれど、大石くんに押し切られてしまった。
時は12月14日。放課後、47人の子供たちは児童公園に集結した。
「おのおのがた、いざ、出陣!」
大石くんが呼びかけると、みんな「おお!」と手をあげた。
47人は、吉良くんの家にやってきた。
「でっけー家」「やっぱり金持ちなんだ」
「よし、裏にまわれ」
大石くんの指示で、子供たちはいっせいに裏のフェンスを飛び越えた。
浅野くんは、「やっぱりやめようよ」という言葉を何度も飲み込んで、いちばん最後にフェンスを越えた。
47人の子供たちが、一気に入ってきたものだから、吉良くんのお母さんはびっくり。
「まあ、何ごとなの?」
「おばさん、吉良くんはいますか?」
「いるけど…いったい何?」
その時、テラスの窓が開いて、吉良くんが顔を出した。
「せーの!」という大石くんの合図で、全員がいっせいにポケットから何かを取り出した。
「やめて!」と叫んだ浅野くんの声をかき消して、パン!というけたたましい音が響いた。
思わず耳をふさいだ浅野くんが顔を上げると、みんな笑っていた。
手に持っていたのは、クラッカーだった。
「何だよ、いったい」
「吉良くん、誕生日おめでとう」
「へ?」
「みんなで吉良くんの誕生日を祝おうって、浅野くんが計画したんだ」
「え?浅野くんが?」
「え?僕が?」
吉良くんといっしょに驚いたのは浅野くん。
実は、ふたりを仲直りさせようと、大石くんが仕組んだことだった。
「ありがとう、浅野くん。ひどいこと言ってごめん」
「僕の方こそ、叩いてごめん」
ふたりは、すっかり仲直りした。討ち入り作戦は大成功だ。
「みんな、せっかく来てくれたからケーキでも食べましょう。…足りないわ。急いで買いに行きましょう」
吉良くんのお母さんは、困った顔をしながらも嬉しそうだった。
14日にUPしようと思ってましたが、最近PCの調子が悪いので、いつ壊れるかドキドキです。
で、ちょっと早めの忠臣蔵です^^
ところでこの大石くん、相当の時代劇好きですね。
でも今どき、47人の子供を集めるのは難しいでしょうね。
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「まあ、またあなたたちなの?いったいケンカの原因は何?」
「吉良くんが僕をバカにしたんです」
「そうなの?」
「はい、田舎者って言われました」
「田舎者だから田舎者って言ったんだ。本当のことじゃないか」
「吉良くん、そんなこと言っちゃダメよ。でも浅野くん、だからといって廊下で吉良くんを叩いちゃダメでしょう」
「そうです。先に手を出したのは浅野です」
「お前だって、死ねとか言って腹を蹴ったじゃないか」
「もう、ふたりともダメよ。全くどうして仲良くできないのかしら。明日までに反省文を書いてきなさい」
その帰り道、うなだれて帰る浅野くんに、同じクラスの大石くんが声をかけた。
「また怒られちゃったね。浅野くん」
「あ、大石くん。嫌になっちゃうよ。悪いのは吉良なのにさ」
「仇をうってあげようか」
「仇?」
「うん、僕も吉良にはムカついているんだ。金持ちだからってエラそうなんだもん」
「でも、どうするの?」
「討ち入りだよ」
「討ち入り?」
「そう。みんなで吉良の家を襲撃するんだ」
「みんなって?」
「仲間を募ったら、47人集まったんだ」
「え?47人も!」
「そう。47人で吉良邸を襲撃するんだ。日にちは12月14日。いいね」
「う…うん」
浅野くんは、「大ごとになっちゃったな。そこまでしなくていいのに」と思ったけれど、大石くんに押し切られてしまった。
時は12月14日。放課後、47人の子供たちは児童公園に集結した。
「おのおのがた、いざ、出陣!」
大石くんが呼びかけると、みんな「おお!」と手をあげた。
47人は、吉良くんの家にやってきた。
「でっけー家」「やっぱり金持ちなんだ」
「よし、裏にまわれ」
大石くんの指示で、子供たちはいっせいに裏のフェンスを飛び越えた。
浅野くんは、「やっぱりやめようよ」という言葉を何度も飲み込んで、いちばん最後にフェンスを越えた。
47人の子供たちが、一気に入ってきたものだから、吉良くんのお母さんはびっくり。
「まあ、何ごとなの?」
「おばさん、吉良くんはいますか?」
「いるけど…いったい何?」
その時、テラスの窓が開いて、吉良くんが顔を出した。
「せーの!」という大石くんの合図で、全員がいっせいにポケットから何かを取り出した。
「やめて!」と叫んだ浅野くんの声をかき消して、パン!というけたたましい音が響いた。
思わず耳をふさいだ浅野くんが顔を上げると、みんな笑っていた。
手に持っていたのは、クラッカーだった。
「何だよ、いったい」
「吉良くん、誕生日おめでとう」
「へ?」
「みんなで吉良くんの誕生日を祝おうって、浅野くんが計画したんだ」
「え?浅野くんが?」
「え?僕が?」
吉良くんといっしょに驚いたのは浅野くん。
実は、ふたりを仲直りさせようと、大石くんが仕組んだことだった。
「ありがとう、浅野くん。ひどいこと言ってごめん」
「僕の方こそ、叩いてごめん」
ふたりは、すっかり仲直りした。討ち入り作戦は大成功だ。
「みんな、せっかく来てくれたからケーキでも食べましょう。…足りないわ。急いで買いに行きましょう」
吉良くんのお母さんは、困った顔をしながらも嬉しそうだった。
14日にUPしようと思ってましたが、最近PCの調子が悪いので、いつ壊れるかドキドキです。
で、ちょっと早めの忠臣蔵です^^
ところでこの大石くん、相当の時代劇好きですね。
でも今どき、47人の子供を集めるのは難しいでしょうね。
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2010-12-09 17:57
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コメント(16)
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PCの調子がお悪いとか・・・・・・(・Λ・;
私もハードディスクかどこかがカラカラ言いはじめて、
真っ黒になったまま動かなくなった時ありましたねえ。
中に入っていた資料もデータもパア。バックアップを取って置かれてくださいね;
ところで、忠臣蔵ですか。凄い粋な方法ですねw
仲直りは難しいものですが・・・誰かが大げさに怒ってしまえば、
本人はそうでもなかったと思ってしまったりもするところを、ハッピーサプライズ。
流石ですw
by 愛輝 (2010-12-09 22:35)
いいですね。
実にさわやかなオチです。
この大石くん、本当の大石よりかしこいですね。いい男の子です。
人望もあるし知恵もある。
by 雫石鉄也 (2010-12-10 09:58)
いいお話ですね。
本当の忠臣蔵もこんな風にいかなかったんですかねぇ。
大石くん大きくなったら日本の総理になってくれないかしら?(^o^)
大人でも、子供でも、国同士でも、いろいろ難しいですね。
子供が47人!改めて思えばすごい数ですよね。
私が学生のときは一クラスが60人だったんです。
多いでしょ?
クラス替えの時期になっても全員の名前覚えられませんでした。
まぁ、覚える気もなかったけど。
PC心配ですね。
バックアップは早い目に取っておいてソンはないですよ。
りんさんの作品が消えるなんて損失が大きすぎます。
by もぐら (2010-12-10 17:35)
うまい!いい感じにアレンジされてますねー。
なんともほのぼのとした松の廊下から始まり、普通に
喧嘩が始まると思いきやサプライズパーティーでしたか(゜д゜)
by hiro1468 (2010-12-10 18:14)
こんなにも、優しいお話になるとは、まったく想像してなかったので
わあ!って思いました。
忠臣蔵の時期ですなあ。
最初から見たことない時代劇ベスト3にはいります(笑)
by ヴァッキーノ (2010-12-10 19:34)
忠臣蔵ってどんなふうにアレンジしてもしっくり来ないですよね。吉良だけが悪いふうに書かれていても後味が悪いし、かといってその逆だとみんな犬死にになってしまってこっちも後味が悪い。どんなにドラマチックに仕上げられていても決してストンとおさまるところがない気がします。
それをこんなに見事にストンしちゃうなんて!
りんさん、グッドです。
by 矢菱虎犇 (2010-12-10 20:24)
<愛輝さん>
PC,電源がブチっと切れちゃったりします。もう寿命かな。
バックアップとらなきゃ、ですよね。
忠臣蔵を、子供のケンカにしてみました。
ハッピーな結末にしたかったので、ケンカの仲裁という話にしてみました。
この子供達、もしかして忠臣蔵の子孫たち?だったりして^^
by リンさん (2010-12-10 22:03)
<雫石鉄也さん>
ありがとうございます。
そうですね。今どき47人の子供を集められる人はなかなかいませんね。
人望がある…うん、そうですね^^
by リンさん (2010-12-10 22:05)
<もぐらさん>
大石くんが総理大臣…いいかも。
仲の悪い国同志を仲裁できるかもね^^
ひとくらす60人ってすごいですね。
でも、名前は覚えましょう(笑)
by リンさん (2010-12-10 23:28)
<hiro1468さん>
ありがとうございます。
やっぱりハッピーな話にしたかったので、12月14日が吉良くんの誕生日にしました。お祝いされて嬉しくない人はいないですものね^^
by リンさん (2010-12-10 23:32)
<ヴァッキーノさん>
主人公が子供なので、かわいい話にしてみました。
忠臣蔵は、討ち入りのシーンが見せ場ですからね、そこだけ見れば充分ですよ(笑)
by リンさん (2010-12-10 23:36)
<矢菱さん>
忠臣蔵って、仇討ちが美談みたいに語られてるけど、死んでしまったら終わりですよね。
あえてほのぼの系の話にしてみました。
12月14日が討ち入りの日って、知ってる人も少なくなってきたかな?
by リンさん (2010-12-10 23:45)
忠臣蔵を。。。子供の喧嘩にって?
最初の一行で、もうリンさんの世界にドップリです。
ニヤニヤしながら読んでましたが
最後。。。オチがすばらしい。
もともと血生臭いお話で。。。
文体は軽くても、心のどこかに重いイメージがありますから
余計に、こういうオチは効きますね。
勉強になります。大好きな結末です。
大石くんに脱帽!!!
パソコン、お大事にしてください。
バックアップは、お早めに。。。
(これ。。。実は、自分に言ってます。
何度、悲しい目にあったことか。。。トホホホ(T_T))
by 春待ち りこ (2010-12-11 00:26)
廊下の事件で笑いました。
こういうパロディーもあるんですね。
いろいろと勉強になります。
PCの調子が悪いそうですが、ハードディスクが飛ぶとアウトですからね。
早めの交換がオススメかも。
by サイトー (2010-12-11 06:07)
<りこさん>
ありがとうございます。
最初は吉良をひどい目に合わせるオチも考えたんですが、やっぱりハッピーな方がいいかな…と思ってこれにしました。
よかった!!変えて正解^^
PC…明日見に行こうかな。
by リンさん (2010-12-11 18:35)
<サイトーさん>
私の場合、パロディーが書きたくて小説ブログを始めたんです。
いろいろ考えてると、ホントに楽しいです。
PC…みなさんにご心配いただいてありがとうございます。
早めに交換したいです^^
by リンさん (2010-12-11 18:38)