不吉なイブ [競作]
街はすっかりクリスマスムードに浮かれている。
僕も浮かれている。
何しろ明日のイブは、彼女と過ごす初めてのイブなのだ。
プレゼントも買った。レストランも予約した。
明日のことを考えると、自然と顔がゆるんでしまう。
そんな夜、街角にホタルのような灯りを見つけた。
見ると、ひとりの少女がマッチを擦っては消し、擦っては消しを繰り返していた。
何をしているんだろう。21世紀にマッチ売りでもあるまい。
「何をしてるの?」僕は話しかけた。
「占いです」と少女は答えた。
「占い?」
「マッチ占いです。マッチを1本擦ると過去が見えます。
2本目を擦ると現在が見えます。
そして3本目を擦ると未来が見えるのです」
「へえ…おもしろいな。占ってもらおうかな」
少女はにっこり笑うと籠から新しいマッチを取り出した。
「何を占いましょうか」
「そうだな。彼女とのことを占ってもらおうかな。とりあえず明日のイブがうまく行くかどうか、見てもらおう」
「はい」と少女はマッチを1本擦った。
「ふーん」と言いながら、2本目を擦った。
「なるほど…」と言いながら3本目を擦った。
3本目を擦った途端、少女の顔がたちまち曇った。
「いやだ…」とつぶやき、座りこんでしまった。
「え?何?何が見えたの?」
僕が聞いても少女は答えず、青い顔をしてため息をつくばかりだ。
「そんなに悪いことが起きるの?」
少女は頭をかかえながら、「出かけない方がいいかも…」とひとりごとのようにつぶやいた。
いったい何が起こるんだ。事故にでも遭うのだろうか。
まさか命を落とすなんてことになったりして。
僕は急に怖くなった。
僕はイブの予定を全てキャンセルした。
彼女には会えないことを告げ、レストランもキャンセルした。
当然彼女はすごく怒ったけれど、命に関わることだから仕方ない。
ひょっとしたら彼女に不幸がふりかかるかもしれないのだ。
僕は膝を抱えてじっとしていた。
恐怖におびえながら、寂しいひとりのイブを過ごした。
長い長い、孤独なイブだった。
***
そのころ占いの少女は、母親にこっぴどく叱られていた。
「まったく、高校生が夜遅くまで何やってるんだ。もっとまともなアルバイトを探しなさい」
「は~い」
「あんたには、クリスマスプレゼントも、お年玉もなしだよ」
「そんな~」
そうなのだ。
少女はあの時、3本目のマッチの炎に、母親に叱られる自分の未来を見ていたのだ。
「やっぱり出かけなければよかったわ…」
クリスマス競作作品です。
これは、haruさんの「クリスマス定番のお話」の、もうひとつのお話です。
huruさんのお話はこちらでどうぞ
http://haru123fu.exblog.jp/15140302/
他の競作は、こちらでお楽しみ下さい。
http://blog.goo.ne.jp/kyosaku1224
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僕も浮かれている。
何しろ明日のイブは、彼女と過ごす初めてのイブなのだ。
プレゼントも買った。レストランも予約した。
明日のことを考えると、自然と顔がゆるんでしまう。
そんな夜、街角にホタルのような灯りを見つけた。
見ると、ひとりの少女がマッチを擦っては消し、擦っては消しを繰り返していた。
何をしているんだろう。21世紀にマッチ売りでもあるまい。
「何をしてるの?」僕は話しかけた。
「占いです」と少女は答えた。
「占い?」
「マッチ占いです。マッチを1本擦ると過去が見えます。
2本目を擦ると現在が見えます。
そして3本目を擦ると未来が見えるのです」
「へえ…おもしろいな。占ってもらおうかな」
少女はにっこり笑うと籠から新しいマッチを取り出した。
「何を占いましょうか」
「そうだな。彼女とのことを占ってもらおうかな。とりあえず明日のイブがうまく行くかどうか、見てもらおう」
「はい」と少女はマッチを1本擦った。
「ふーん」と言いながら、2本目を擦った。
「なるほど…」と言いながら3本目を擦った。
3本目を擦った途端、少女の顔がたちまち曇った。
「いやだ…」とつぶやき、座りこんでしまった。
「え?何?何が見えたの?」
僕が聞いても少女は答えず、青い顔をしてため息をつくばかりだ。
「そんなに悪いことが起きるの?」
少女は頭をかかえながら、「出かけない方がいいかも…」とひとりごとのようにつぶやいた。
いったい何が起こるんだ。事故にでも遭うのだろうか。
まさか命を落とすなんてことになったりして。
僕は急に怖くなった。
僕はイブの予定を全てキャンセルした。
彼女には会えないことを告げ、レストランもキャンセルした。
当然彼女はすごく怒ったけれど、命に関わることだから仕方ない。
ひょっとしたら彼女に不幸がふりかかるかもしれないのだ。
僕は膝を抱えてじっとしていた。
恐怖におびえながら、寂しいひとりのイブを過ごした。
長い長い、孤独なイブだった。
***
そのころ占いの少女は、母親にこっぴどく叱られていた。
「まったく、高校生が夜遅くまで何やってるんだ。もっとまともなアルバイトを探しなさい」
「は~い」
「あんたには、クリスマスプレゼントも、お年玉もなしだよ」
「そんな~」
そうなのだ。
少女はあの時、3本目のマッチの炎に、母親に叱られる自分の未来を見ていたのだ。
「やっぱり出かけなければよかったわ…」
クリスマス競作作品です。
これは、haruさんの「クリスマス定番のお話」の、もうひとつのお話です。
huruさんのお話はこちらでどうぞ
http://haru123fu.exblog.jp/15140302/
他の競作は、こちらでお楽しみ下さい。
http://blog.goo.ne.jp/kyosaku1224
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2010-12-14 00:17
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コメント(12)
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りんさん。ありがとうでーす。私のもろダジャレショートに魔法がかかった
見たいです。私もさっそくリンク貼らせていただきましたよ。(感謝・感謝)
by haru (2010-12-14 09:13)
皮肉な結末ですね。少女は自分の未来を見ていたわけですね。
それを僕が早とちりしたのですね。
しかし、これでアルバイトになるのでしょうか。
by 雫石鉄也 (2010-12-14 09:22)
未来は自分で切り開きたいです。^^b
by ナビパ (2010-12-14 17:34)
<haruさん>
こちらこそ、リンクありがとうございました。
haruさんのブログでマッチ占いって言うのを読んで、ピン!とひらめきました。こんなふうにお話が繋がっていくのは楽しいですね。
by リンさん (2010-12-14 18:33)
<雫石鉄也さん>
そうですね。
天国から地獄だったんですね。
>アルバイトになるのでしょうか。
ホントですよね。きっとこの少女には特別な力があるんでしょうね。
だけどまだ未熟で失敗しちゃうんです。
だからあまり儲からないでしょうね^^
by リンさん (2010-12-14 18:35)
<ナビパさん>
そうそう^^
占いに頼っちゃいけませんね。
とか言って私も朝の占い、毎日見てます^^;
by リンさん (2010-12-14 18:36)
マッチ売り⇔マッチ占い
の、ダジャレからスタートして、ここまでちゃんと完成したお話をあっという間に作っちゃうなんて!オチもチャンチャン!とチャンとしているし!
りんさん、グッジョブです。
矢菱虎犇は只今潜伏中ですが、実はついのべに走っています。
近日後悔もとい公開予定で~す。
by 矢菱虎犇 (2010-12-14 21:51)
悲しいっていえば、悲しい結末ですけど
なんかダジャレっぽいのは、リンクしてたからですね!
クリスマス競作企画も、だんだん中盤から、終盤へとさしかかってまいりました。
クリスマスって、こんなにエキセントリックだったんですね(笑)
by ヴァッキーノ (2010-12-14 22:16)
面白い企画ですね。。。
いろいろと楽しませていただいてます♪
魔法。。。しっかりかかってますよ。(^_-)-☆
どちらも素敵な作品でした。
みなさん、スゴイですね。
勉強になります。
……っていうか、世の中。。。
才能にあふれてますね。
あやかりたぁ~い。(~_~;)
by 春待ち りこ (2010-12-14 23:48)
<矢菱さん>
マッチ占い(売らない)の少女…面白いですよね。
あ、でも、こっちを先に読んでからharuさんの話を読むと、完全にネタバレですね^^;
矢菱さんのついのべ、楽しみにしてますね^^
by リンさん (2010-12-15 13:23)
<ヴァッキーノさん>
クリスマスまであと10日をきりましたね。
競作もラストスパートですね。
マッチ売りかと思ったら、マッチ売らない(占い)
うまいダジャレですね。haruさんにあっぱれ(笑)
by リンさん (2010-12-15 13:32)
<りこさん>
りこさんも、競作に参加してみたらいかがですか?
いろんな人と交流が増えますよ。
誰でも参加OKなので、よかったらどうぞ(^0^)
by リンさん (2010-12-15 13:34)