桃太郎2011 [名作パロディー]
1.
むかしむかし…ではありません。
あるところに、脱原発を訴えるおじいさんとおばあさんがいました。
おじいさんは山へ放射線量の調査、おばあさんは川へ水質検査に行きました。
おばあさんが水質を測っていると、上流から大きな桃がどんぶらこと流れてきました。
「ありゃ~、大きな桃だね。度重なる核実験で巨大化しちまったのかね。持って帰って調査だ」
おばあさんは研究所に持って帰って、おじいさんと共に調査を開始した。
すると桃がパッカリ割れて、中から元気な男の子が出てきました。
「あら、かわいい子だね」
「ばあさん。まずは放射能セシウムを測定しよう」
「どうかね?」
「数値は極めて低い。大丈夫だ。うちで育てよう」
男の子は、桃太郎と名付けられ、おじいさんとおばあさんの子供になりました。
2.
桃太郎はすくすく成長し、立派な若者になりました。
「おじいさん、おばあさん、鬼が島で核実験が行われるという情報をキャッチしました。僕は今から鬼を退治して何としても核実験をやめさせます」
「えらいぞ、桃太郎。世界平和のために頑張れ」
「桃太郎や、キビ団子を持っておゆき」
「ありがとう、おばあさん。では、行ってきます」
「行ってしまったね」
「寂しくなるねえ」
「仕方ない。平和を守るためだ」
「あっ、しまった!」
「どうした、ばあさん」
「間違って、賞味期限の切れたキビ団子を渡しちまった」
3.
桃太郎は犬に会いました。
「おい、犬。キビ団子をやるから家来になれ」
「ずいぶん横柄な物言いですね。オレ様キャラですか?チャン・グンソクですか? ところでそのキビ団子、国産ですか?わたし、けっこうアレルギーがありますが、その辺は大丈夫でしょうね」
「いいから食え!」
桃太郎は、そんなふうに無理やり犬を家来にして、ついでにサルとキジも家来にしました。
そして鬼が島へとたどり着きました。
4.
「さあ、ここが鬼が島だ。あそこの施設で核実験が行われているに違いない」
「あの…、桃太郎さん…」
「なんだどうした。お前ら顔が青いぞ。あ、サルは紫か」
「お腹が痛いんです。さっきのキビ団子が、いたんでいたみたいです」
「なんだって?食べなくてよかった。しかし困ったな。鬼退治が出来ないぞ」
そこで桃太郎は、いいことを思いつきました。
桃太郎、犬、サル、キジは、施設の正面玄関から堂々と入りました。
鬼がいっせいに振り向きました。
「何だ、おまえらどこかの国のスパイか?」
「いいえ、めっそうもございません。私たちはただの旅人です。さっきこの島に漂着しました」
「旅人が来るところではない。さっさと帰れ!」
「じつは、病人がいるのです。見てください。さっきから嘔吐を繰り返しています。恐ろしい疫病です。この犬を見てください。全身に湿疹が出来ています。初期症状です。そしてこのサル、顔が紫です。末期症状です。キジはまだ軽い症状ですが、時間の問題です。薬はありません。感染したら死を待つのみです。
さあ、みなさんも感染する前に、島から離れて下さい。さあ早く!手遅れになりますよ」
鬼たちは、パニックになりながら全員島から逃げていきました。
「そんなに命が大事なら、核実験なんかしなきゃいいのに」
桃太郎はそう言いながら、核実験施設を粉々に壊しましたとさ。
めでたし、めでたし。
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むかしむかし…ではありません。
あるところに、脱原発を訴えるおじいさんとおばあさんがいました。
おじいさんは山へ放射線量の調査、おばあさんは川へ水質検査に行きました。
おばあさんが水質を測っていると、上流から大きな桃がどんぶらこと流れてきました。
「ありゃ~、大きな桃だね。度重なる核実験で巨大化しちまったのかね。持って帰って調査だ」
おばあさんは研究所に持って帰って、おじいさんと共に調査を開始した。
すると桃がパッカリ割れて、中から元気な男の子が出てきました。
「あら、かわいい子だね」
「ばあさん。まずは放射能セシウムを測定しよう」
「どうかね?」
「数値は極めて低い。大丈夫だ。うちで育てよう」
男の子は、桃太郎と名付けられ、おじいさんとおばあさんの子供になりました。
2.
桃太郎はすくすく成長し、立派な若者になりました。
「おじいさん、おばあさん、鬼が島で核実験が行われるという情報をキャッチしました。僕は今から鬼を退治して何としても核実験をやめさせます」
「えらいぞ、桃太郎。世界平和のために頑張れ」
「桃太郎や、キビ団子を持っておゆき」
「ありがとう、おばあさん。では、行ってきます」
「行ってしまったね」
「寂しくなるねえ」
「仕方ない。平和を守るためだ」
「あっ、しまった!」
「どうした、ばあさん」
「間違って、賞味期限の切れたキビ団子を渡しちまった」
3.
桃太郎は犬に会いました。
「おい、犬。キビ団子をやるから家来になれ」
「ずいぶん横柄な物言いですね。オレ様キャラですか?チャン・グンソクですか? ところでそのキビ団子、国産ですか?わたし、けっこうアレルギーがありますが、その辺は大丈夫でしょうね」
「いいから食え!」
桃太郎は、そんなふうに無理やり犬を家来にして、ついでにサルとキジも家来にしました。
そして鬼が島へとたどり着きました。
4.
「さあ、ここが鬼が島だ。あそこの施設で核実験が行われているに違いない」
「あの…、桃太郎さん…」
「なんだどうした。お前ら顔が青いぞ。あ、サルは紫か」
「お腹が痛いんです。さっきのキビ団子が、いたんでいたみたいです」
「なんだって?食べなくてよかった。しかし困ったな。鬼退治が出来ないぞ」
そこで桃太郎は、いいことを思いつきました。
桃太郎、犬、サル、キジは、施設の正面玄関から堂々と入りました。
鬼がいっせいに振り向きました。
「何だ、おまえらどこかの国のスパイか?」
「いいえ、めっそうもございません。私たちはただの旅人です。さっきこの島に漂着しました」
「旅人が来るところではない。さっさと帰れ!」
「じつは、病人がいるのです。見てください。さっきから嘔吐を繰り返しています。恐ろしい疫病です。この犬を見てください。全身に湿疹が出来ています。初期症状です。そしてこのサル、顔が紫です。末期症状です。キジはまだ軽い症状ですが、時間の問題です。薬はありません。感染したら死を待つのみです。
さあ、みなさんも感染する前に、島から離れて下さい。さあ早く!手遅れになりますよ」
鬼たちは、パニックになりながら全員島から逃げていきました。
「そんなに命が大事なら、核実験なんかしなきゃいいのに」
桃太郎はそう言いながら、核実験施設を粉々に壊しましたとさ。
めでたし、めでたし。
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2011-09-02 23:18
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コメント(19)
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かなりブラックなお話ですね。気軽にお茶でも飲んでいられないような(笑)
各実験の放射能で巨大化というと、ついゴジラなんかを思い出すのですが、このもの太朗、火をふいたりしないもんですかね?最後までそれを待っていたんですが。でも、おもしろかったですよ。
それと前から気になっていたんですが、作者は韓流ファンなんですかね?
ではまた、トマンナヨ
by 川越敏司 (2011-09-03 07:00)
ショートストーリーが、4コマ漫画のような構成になっているんですね。
読みやすくて、めちゃくちゃおもしろいで~す。
食中毒で、鬼を退治するとは、りんさんの発想はいつもスゴイ!
人間は疫病を恐ろしがるのに、核実験は恐ろしくないのでしょうか?
地球上で一番恐ろしいのは核の存在なのに!桃太郎ガンバレ!
by haru (2011-09-03 08:40)
桃太郎のお話って、戦時中は鬼畜米英退治みたいなイメージになるみたいに、時代時代にアレンジされちゃいますよね。そういう意味では、実に意味深な今風アレンジじゃないですか。面白~い、そして怖~い。
生不正の基準が原子力や放射能だったり、
鬼が武器として核開発を進めていたり、
感染症の恐怖が悪もさえ撤去させたり。
ボクたちはこんな目に見えない圧倒的な力に翻弄されて生きているんですねぇ。
by 矢菱虎犇 (2011-09-03 10:23)
ホント、めでたしめでたし。
皆さんのお腹が早く良くなりますように。
by 浅葱 (2011-09-03 11:55)
おお、見事な落としどころ!
鬼と戦わずして、核実験を阻止できたのは素晴らしいです。
物語を4つに分けると、とても読みやすいですね。4つともに、盛り上がるテーマ(オチ)もあったし。
いい勉強にもなりました。ありがとうございます。
by かよ湖 (2011-09-03 13:37)
名作パロディーはいつもながらお見事ですね。
設定をいちいち現在の状況と置き換える徹底ぶり。
でも、桃太郎の俺様キャラはちょっと腹が立ちます(笑)
そもそもチャングンソクが腹立たしいだけですが。
こんな関係ではお供との間もうまくいかなくなってしまうのではないかとちょっとはらはら。
関係悪化で最悪な結果になるかと思わせておいて、でも結局めでたしめでたしでした。
それはそれでほっとしたんですけどね。
by 海野久実 (2011-09-03 14:10)
そっか。。。
桃太郎のでっかい桃は
放射能のせいだったのか。。。
っと感心しきり。(笑)
この鬼たちのように逃げ出してくれたらいいけど
実際は。。。
どんな病気になろうと
誰が病気にかかろうと
核という「金のなる木」を手放さないんでしょうね。
どこまで貪欲なんだ!?
オレ様桃太郎。。。
とっても面白かったです。
楽しみました。ありがとっ♪
by 春待ち りこ (2011-09-03 22:13)
起承転結が、キッチリしてますねえ。
こういうキッチリと書かれたものを見ると
気持ちいいです。
ラジウム温泉にでも行ってきますか!(笑)
by ヴァッキーノ (2011-09-04 08:34)
<川越さん>
パロディーといいながら、ブラック桃太郎になっちゃいました(笑)
そういえばゴジラも放射能からできたんですよね。
あんな昔から核の怖さを訴えているのに、未だに無くならないのは悲しいことです。
それから私は全く韓流ファンではありません。
ただ流行を取り入れているだけです。
ジャニーズの方がず~っと好きです(笑)
by リンさん (2011-09-05 17:33)
<haruさん>
ありがとうございます。
最初は、初のツイッター小説に挑戦しようかと思ったんです。(矢菱さんみたいな)
だけどやっぱり140字は無理!
それで、こんな形になりました。
楽しんでくれてありがとう!
by リンさん (2011-09-05 17:35)
<矢菱さん>
桃太郎の鬼って、何が悪いのかよくわかりませんよね。
なんで退治されるのか?
だから今回ははっきりと、悪者になってもらいました。
世界中の敵ですからね。
by リンさん (2011-09-05 17:37)
<浅葱さん>
みんなのおなかが治れば、めでたしですね^^
by リンさん (2011-09-05 17:38)
<かよ湖さん>
ありがとうございます。
今回は絵本の感覚で書いてみました。
もっともこれが絵本だったら、子供が泣きますね(笑)
桃太郎のような賢さが、どじょう総理にも欲しいですね(^^)
by リンさん (2011-09-05 17:41)
<海野久実さん>
ありがとうございます。
オレ様キャラ、なんだか流行ってますよね。
わたし絶対嫌だけど^^;
でもきっとチャングンソクみたいな魅力が桃太郎にあったのかな(笑)
by リンさん (2011-09-05 17:43)
<りこさん>
最初はね、巨人がガチャガチャをやって、桃型カプセルをゲットしたが川に落としてしまった。カプセルの中には、プレミアの人間が入っていた。
…っていう話を考えていたんですよ。
なんだか纏まらなくて、核実験のせいにしちゃいました。
こっちの方がタイムリーでしたね。
よかった。めでたしめでたし^^
by リンさん (2011-09-05 17:47)
<ヴァッキーノさん>
ありがとうございます。
あくまで子供の絵本なので(子供は読まないと思いますが)わかりやすくしました^^
温泉でスッキリできました?(笑)
by リンさん (2011-09-05 17:48)
こういうシニカルな話 かなり好きでやす\(◎o◎)/
犬の台詞が特に好きでやす(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2011-09-07 00:07)
<ぼんぼちぼちぼちさん>
ありがとうございます。
犬の台詞は、要らないといえば要らないのですが、遊びで入れてみたんです。
ここに注目してくれてありがとでやす。(マネ^^)
by リンさん (2011-09-07 13:04)
沒有醫生的處方
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by Tadalafilo (2018-04-14 13:19)