三人模様 [男と女ストーリー]
別れるつもりだったの。最初から、そんなに好きってわけじゃなかったし。
ブランドバッグや宝石もさんざんもらったし、そろそろ別れ時かなって。
まあ、いい人だったし、ちゃんと振ってあげてきれいに別れようって思っていたの。
「いままでありがとう。あなたのこと忘れない。だけどあなたは、私のこと忘れちゃってね。この先、あなたにふさわしい可愛い人がきっと現れるはずだから」
涙なんか見せて、くるりと背を向けてサヨナラする予定だったの。
ところがその時、乗用車が私めがけて突っ込んできたの。
「きゃーっ」
気が付いたら病院のベッドの上。きれいに別れるはずだった彼が、私の手をしっかり握ってた。
車は、ぶつかる寸前、ギリギリで止まったらしい。
私は弾みで倒れて脳震盪を起こしたらしい。
「よかった。気が付いて。君も、君のお腹の赤ちゃんも無事だよ」
「は？お腹の赤ちゃん？」
「そうだよ。君は妊娠しているんだよ。僕たちのベビーだ。別れる前にわかって本当によかった」
あれから５年。彼と結婚して、すっかり平凡な主婦よ。
だけどまあまあ幸せだわ。
生まれた娘は私に似て可愛いし。
ホント、私に似ててよかったわ。
だって、彼の子かどうか、自信がないんだもん。
＊
彼女が別れたがっていたのは知っていた。
あの日別れ話をするのもわかっていた。
だから僕は、ネットで知り合った男を金で雇ったんだ。
僕の目の前で、彼女を車で撥ねるように言ったんだ。ちょっと怪我をする程度にね。
それを僕が助けて病院に運んで、愛を深めるという算段だ。
男は運転には自信があると言った。そのとおり、男は実によくやってくれた。
まさか彼女が妊娠しているとは知らなかった。
だけど僕にとっては救いの神、いや、救いのベビーだ。
あれから５年。美人の妻と可愛い娘。
娘は、僕にそっくりだ。
本当に僕は幸せだ。
＊
５年前のことだ。一度だけ、犯罪に手を染めた。
ネットで知り合った男に頼まれて、車で女に接触した。
ぶつかる寸前で車を止めたつもりだったが、女が倒れて意識を失ったから焦った。
もっと焦ったのは、その女が俺の付き合っている女だったからだ。
金のかかる女で、元々その女のために金が必要だったから、こんなヤバい仕事を引き受けたんだ。
「ただの脳震盪だ。とっとと消えろ」
男から金を受け取って、俺はその場を去った。
それっきり女とも男とも会っていない。
だけど今日、買い物客で賑わう街中であの女を見かけた。
どうやら結婚したようだ。主婦になっても相変らず美しい。
連れている女の子を見て、俺は愕然とした。
なんと、俺にそっくりじゃないか。
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ブランドバッグや宝石もさんざんもらったし、そろそろ別れ時かなって。
まあ、いい人だったし、ちゃんと振ってあげてきれいに別れようって思っていたの。
「いままでありがとう。あなたのこと忘れない。だけどあなたは、私のこと忘れちゃってね。この先、あなたにふさわしい可愛い人がきっと現れるはずだから」
涙なんか見せて、くるりと背を向けてサヨナラする予定だったの。
ところがその時、乗用車が私めがけて突っ込んできたの。
「きゃーっ」
気が付いたら病院のベッドの上。きれいに別れるはずだった彼が、私の手をしっかり握ってた。
車は、ぶつかる寸前、ギリギリで止まったらしい。
私は弾みで倒れて脳震盪を起こしたらしい。
「よかった。気が付いて。君も、君のお腹の赤ちゃんも無事だよ」
「は？お腹の赤ちゃん？」
「そうだよ。君は妊娠しているんだよ。僕たちのベビーだ。別れる前にわかって本当によかった」
あれから５年。彼と結婚して、すっかり平凡な主婦よ。
だけどまあまあ幸せだわ。
生まれた娘は私に似て可愛いし。
ホント、私に似ててよかったわ。
だって、彼の子かどうか、自信がないんだもん。
＊
彼女が別れたがっていたのは知っていた。
あの日別れ話をするのもわかっていた。
だから僕は、ネットで知り合った男を金で雇ったんだ。
僕の目の前で、彼女を車で撥ねるように言ったんだ。ちょっと怪我をする程度にね。
それを僕が助けて病院に運んで、愛を深めるという算段だ。
男は運転には自信があると言った。そのとおり、男は実によくやってくれた。
まさか彼女が妊娠しているとは知らなかった。
だけど僕にとっては救いの神、いや、救いのベビーだ。
あれから５年。美人の妻と可愛い娘。
娘は、僕にそっくりだ。
本当に僕は幸せだ。
＊
５年前のことだ。一度だけ、犯罪に手を染めた。
ネットで知り合った男に頼まれて、車で女に接触した。
ぶつかる寸前で車を止めたつもりだったが、女が倒れて意識を失ったから焦った。
もっと焦ったのは、その女が俺の付き合っている女だったからだ。
金のかかる女で、元々その女のために金が必要だったから、こんなヤバい仕事を引き受けたんだ。
「ただの脳震盪だ。とっとと消えろ」
男から金を受け取って、俺はその場を去った。
それっきり女とも男とも会っていない。
だけど今日、買い物客で賑わう街中であの女を見かけた。
どうやら結婚したようだ。主婦になっても相変らず美しい。
連れている女の子を見て、俺は愕然とした。
なんと、俺にそっくりじゃないか。
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2013-11-03 18:47
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おもしろ～い！さっそくですが、りんさんのこのお話朗読しても良いですか。
お願いします。
by haru (2013-11-03 20:45)
＜haruさん＞
ありがとうございます。
朗読、もちろんオッケーです。
よろしくお願いします＾＾
by リンさん (2013-11-03 22:14)
そういうことか！
↑ なんかいつもこう思ってる私(笑)
それぞれ すごいこと考えてるし
実行しちゃったのもすごいし^^;
by みかん (2013-11-03 23:04)
りんさんのダークサイド作品?
そうきましたか。
三人模様のうち三人目がいつ出て来るんだ?と思いながら読んでいきました。
車の男が出て来るとは意外な展開でしたね。
お腹の子供に語らせても面白い作品になったと思いますね。
この書き方はストーリーがわかるだけの最少限の文字数ですね。
もっと肉づけをしたら素晴らしい作品になると思いますが。
by 海野久実 (2013-11-04 15:42)
面白いです。
男二人が何も知らずに同じ女に関わっているのが可笑しい。
いつもながら最後は私の貧弱な頭では想定外のことが起こる
ので、とても楽しみにしているのですが、今回は最高です。
それにしても男って.....。
by dan (2013-11-04 17:41)
＜みかんさん＞
そういうことです（笑）
三者三様、人はそれぞれ秘密を持っているんですね＾＾
by リンさん (2013-11-06 16:41)
＜海野久実さん＞
何故か３人が、子供は自分に似てると思っているので、車の男を登場させました。
お腹の子供に語らせる…なるほど、面白いことを考えますね。
自分の父親は誰か、子供は知っているのかな？
いろいろ楽しい展開になりそうですね。
by リンさん (2013-11-06 16:46)
＜danさん＞
いつもありがとうございます＾＾
女がよほどの美人なんでしょうね。
すっかり翻弄されてます。
まあ、知らぬが仏。幸せならいいか…＾＾
by リンさん (2013-11-06 16:49)
読み終えて思わずぷっと吹いてしまった。
勝手なもんだよ。真実知ってるのは赤ん坊だけか。
おおい。ほんとは誰の子なんだ？
by さきしなのてるりん (2013-11-06 20:11)
＜さぎしなのてるりんさん＞
はは＾＾
ホントに知っているのは赤ん坊だけですね。
たぶん夫の子ではないような気がしますが…＾＾；
by リンさん (2013-11-11 16:56)