少女漫画的恋の予感：りんのショートストーリー：SSブログ

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少女漫画的恋の予感　[男と女ストーリー] [編集]

桜子さんは、少女マンガが大好きな３８歳。
夢見る夢子さんは、白馬に乗った王子様が現れるのを待っています。
よって、いまだに独身なのです。

一方、淳平君は、なかなかイケメンの３８歳。
幼少のころから、ふたりの姉に強烈に苛められました。
そのトラウマから、極度の女性不振。よって、いまだに独身です。

とある日曜日。
今日は、大好きなマンガ『プラトニックムーン』の最新刊を買いに行く日です。
好きなマンガを読む日は、いかなる予定も入れないのです。
桜子さんは、朝から猛ダッシュで掃除と洗濯を済ませました。
「人気のマンガだから売切れたら大変。急いでいきましょう」
桜子さんは、颯爽と街に出ました。

一方、淳平君は悪魔のような姉から、姪のカンナのために『プラトニックムーン』の最新刊を買いに行くよう命令されました。
「カンナは塾で忙しいんだからあんたが行きなさい。どうせ彼女もいなくてヒマなんでしょ」と、相変らずの上から目線。
「おじちゃん、お願い。ついでにドーナツもね」と、カンナはなかなかの甘え上手。
淳平君は、断りきれずに街に出ました。

本屋さんに、『プラトニックムーン』の最新刊が１冊だけ残っていました。
「よかった。最後の１冊だわ」
「よかった。最後の１冊だ」
同時に伸ばした、ふたりの手が触れました。
「あ、ごめん」「ごめんなさい」
思わず見つめ合うふたり。
そこに後からやって来た女子高生が、すっと『プラトニックムーン』を持っていってしまいました。

「ああ、売りきれちゃった」
「他の本屋に行けばあるかも。文化堂書店ならあるんじゃないかな」
「行ってみましょう」

そんなわけで、ふたりはそろって歩き出しました。
「珍しいですよね。男性なのに『プラトニックムーン』のファンなんて」
「え…あ、まあ…」
淳平君は、悪魔のような姉に命令されたとは言えずに、適当に相槌を打ちました。
「どのキャラが好き？タクヤ押しが多いけど、私はだんぜんユズル先輩。優しくて大人でステキ。女子キャラならレナちゃんかな。ちょっと天然なところがいいよね」
「はあ…」
淳平君はまったく話についていけませんでした。
「でもね、ミナとサトミは好きになれないの。なんかわがままじゃない？」
「あ、おれもきらい。ミナとサトミはマジで最悪」
突然話を合わせた淳平君。じつは、ミナとサトミは、ふたりの姉と同じ名前だったのです。

「ミナとサトミはマジで性格悪いよ。外面いいけど、腹黒いし悪魔だよ」
「そうよね。ふたりのどちらかがユズル先輩とくっついたら、嫌だな、わたし」
「ミナとサトミを幸せにしないように、作者に脅迫文を送ろう」
「ぷっ…。あなた面白いわね」
よく見たら、なかなかイケメンだわ。白い服着たら王子に見えるわ。
と桜子さんは、少女マンガさながらに胸キュンしました。

一方淳平君も、この人ふわふわしてて姉たちと全然違う。少し後ろを歩く奥ゆかしさも好感が持てました。
「よかったらお茶でも飲まない？いいカフェを知ってるんだ」
「いいわね。行きましょう。でも、『プラトニックムーン』の最新刊を買ってからね」
「そうだった。買わないとカンナ（と姉）に怒られる」
「え？あなた、カンナちゃん押しなの？」
「は？」
「すごいわ。わたしの記憶によると、４回しか登場しないレアキャラよ。あなた相当なファンね」
「う…うん。まあ」
「カンナちゃん、生意気だけど可愛いのよね」
「そうそう。甘え上手なところがたまらない」
「わたしたち、気が合うわね」

こんなふうに、ちぐはぐな会話を続けながら、ふたりは歩いていきました。
桜子さんと淳平君が、いつか結ばれて、独身生活にピリオドを打てることを切に願う作者であります。