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おとぎ話(笑)18 [名作パロディー]

<金の斧・銀の斧>

ひとりの男が湖のほとりを散歩していた。
喉が渇き、自動販売機の前で小銭を出そうとしたら、うっかり財布を落とし、小銭が湖の中に落ちてしまった。
「ああ、僕の小銭が…」
すると湖の中から女神が現れた。
「おまえが落としたのは、500円玉か?100円玉か?それとも10円玉か?」
「それ全部です。全部で735円落としました」
「正直者だな。ではおまえには、いちばん高価な500円玉をやろう」
「いや、235円足りねーし」


<白雪姫>

白雪姫は毒リンゴを食べて、ぱたりと倒れてしまいました。
「わーん、白雪姫が死んじゃった」
小人たちが泣いていると、立派な王子様が通りかかりました。
「いったいどうしたんだ?」
「白雪姫が、毒リンゴを食べて死んでしまいました」
「おお、なんて美しい姫だ。かわいそうに。じゃあ」
「ちょいとお待ちを。キスしないんですか?」
「だって、毒リンゴ食べたんでしょう。唇に毒がついてるかもしれないし」
「たしかに…」


<都会のネズミ、田舎のネズミ>

都会のネズミが、田舎のネズミのところに遊びに来ました。
「よく来たなあ。ご馳走用意したで、食べてけろ」」
「ありがとう。うん、なかなか素朴な味だね。さすが田舎だ。でもさ、悪いけど僕の口には合わないな。なにしろ僕は、都会の三ツ星レストランにしか行かないからね」
「それ、東京の最高級レストランからネットで取り寄せたんだけど、口に合わないけ?」
「あ、ネットで…。あー、うん、そういえば、三ツ星の味だ。この煮物なんか特に上手いよ」
「その煮物だけは、母ちゃんの手作りだ」


<花咲かじいさん>

「今年の桜はいつごろ咲きますかね?」
「ちょっと待ってください。確認します」
「確認? 気象協会にですか?」
「いえ、花咲かじいさんです。もしもーし。ああ、つながらない。いい加減携帯持ってくれないかな。あのじいさん」


<北風と太陽>

北風と太陽は、どちらが強いか勝負をすることになりました。
「よし、あそこを歩く男のコートを脱がせた方が勝ちだ」
「望むところだ」
北風は、冷たい風をピューピュー吹かせました。
男は動じません。
太陽はギラギラと男を照りつけました。
男は動じません。
どんなに頑張っても、男はコートを脱ぎません。
「はあ、もうだめだ。今回は引き分けにしよう」
北風にも太陽にも動じない我慢強い男は、無心でスマホのゲームをしていました。

歩きスマホはやめましょう。


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あべせつ

関西人なので、こういう面白いお話、大好きです。

あはは♪と声を出して笑いながら拝読しました。

りんさんは、しっとりしたお話も、不思議なお話も
オールマイティーに書かれるので、すごいと思います。

by あべせつ (2017-03-20 20:50) 

dan

リンさん得意の名作パロディ楽しませていただきました。
どれも面白いけど、私が好きなのは金の斧銀の斧です。
by dan (2017-03-20 22:26) 

雫石鉄也

いいですねえ。
こんな読むと、私もむずむずして、続きを書きたくなりますが、今は時間がないので、また別の機会に。
by 雫石鉄也 (2017-03-21 13:36) 

はる

ショートショートのブログランキングでりんさんが1位だと
なんだかホッとします。
この作品も面白かったで~す。(^^♪
いつも頑張ってるりんさんに頭がさがります。
このままファイトです。
by はる (2017-03-23 01:45) 

まるこ

リンさん、こんにちは!
どのおとぎ話も面白かったです。
現代風のちょっと冷めてる感じの物語のオチや
会話のやりとりにクスって笑えました。

ショートショートなお話なのに、
面白さがギュっと詰まっていて
読み応えありました。
楽しかったです!
by まるこ (2017-03-23 13:30) 

海野久実

ようし。雫石さんの代わりに受けて立とう(笑)


<金の斧・銀の斧>

ひとりのホームレスが折り畳み式のダンボールハウスを持って泉のほとりを散歩していた。
一休みするために腰を下ろした時、風が吹いてダンボールハウスが泉の中へ。
すると泉から女神が現れて言った。
「お前が落したのはこのパナホームですか? それとも三井ホームですか?」
泉のほとりには二軒の新築住宅が現れていた。
「いやいや女神様、私が落したのはただのダンボールハウスですが」
「おお、なんという正直者。お前には両方の家を上げましょう」
ホームレスはその家に住みはじめましたが、数日後、市役所の職員がやって来て土地の不法占拠と言う事で二軒の家は解体されてしまいました。
そして解体費用はホームレスの借金となったと言う事です。


<白雪姫>

白雪姫は毒リンゴを食べて倒れ、通りかかった王子様のキスで生き返りました。
でも王子様は結婚していましたので白雪姫はそのまま小人たちと暮らしましたとさ。


<都会のネズミ、田舎のネズミ>

田舎のネズミが都会のネズミの所にやって来ました。
「どうだい? このマンション。丈夫な金属製で毎日の食事付だぜ」
「それって自分で外へ出られないんじゃないのかい?」
「それぐらい我慢しなくちゃな」
都会のネズミは大学の研究室のケージの中の、実験用ネズミでした。


<花咲かじいさん>

「枯れ木に花を咲かせましょう」
花を咲かせようとしていたおじいさんに一人の男が声をかけた。
「あ、おじいさんおじいさん。それ辞めてもらえますか」
「え? なんでかのう」
「あなたの撒いた灰が、風下の住宅まで飛んで行って洗濯物が汚れると言う苦情が来てるんですよ。私は自治会の会長です」
すると、また別の男が声をかけた。
「あなたがあの灰を撒いてらっしゃるわけですか?」
「あ、はい。あなたは?」
「私は県の環境汚染対策室の物です。あなたの撒いた灰からダイオキシンが検出されました。すぐに中止してください」


<北風と太陽>

北風と太陽がどんなに頑張っても男のコートを脱がせることは出来ませんでした。
その時、一人の女の人が通りかかり男の人に何かささやきました。
すると男はコートを脱いでごみ箱に捨てたのです。
女の人はこうささやいたのです。
「ダサいコート。もう流行おくれよ」
男はスマホで検索して最新のコートを注文しました。

by 海野久実 (2017-03-23 16:33) 

SORI

リンさんさん おはようございます。
スマホやネットや自動販売機や携帯や三ツ星レストランが出てくる現代版昔話は新鮮で楽しいです。
昨日、関西から帰ってきました。
by SORI (2017-03-24 04:55) 

ひと休み

笑わせてもらいました。
りんさん、ほんとに自由自在ですね。ぴったりの言葉で、無駄がない。
笑ったあと、ひたすら感心でした。
by ひと休み (2017-03-27 13:45) 

リンさん

<あべせつさん>
ありがとうございます。
関西の方に受け入れていただいて嬉しいです。
もともとは、パロディから始まったブログなので、こういうのを考えるのが好きなんです。
by リンさん (2017-03-28 08:40) 

リンさん

<danさん>
ありがとうございます。
私も金の斧銀の斧、好きです。
お札と交換だったらよかったのにね^^
by リンさん (2017-03-28 08:42) 

リンさん

<雫石鉄也さん>
ありがとうございます。
ぜひ、雫石バージョンも読んでみたいです。
おヒマになったらぜひ。
by リンさん (2017-03-28 08:43) 

リンさん

<はるさん>
ありがとうございます。
ランキング、気にしないつもりでも、やっぱり見てしまいますね^^
はるさん、気にかけてくれてありがとう。
by リンさん (2017-03-28 08:44) 

リンさん

<まるこさん>
ありがとうございます。
おとぎ話を現代風にするのは、すごく楽しいですよ。
このシリーズも18になって、そろそろネタがつきそうです。

by リンさん (2017-03-28 08:46) 

リンさん

<海野久実さん>
ありがとうございます。
もう、私より面白く書かないでくださいよ~^^
実験用のネズミとか環境汚染とか。
やられた~って感じです(笑)
by リンさん (2017-03-28 08:48) 

リンさん

<SORIさん>
ありがとうございます。
おかえりなさい^^
現代だったらこうかなと、考えていると楽しいですよ^^
by リンさん (2017-03-28 08:50) 

リンさん

<ひと休みさん>
ありがとうございます。
おとぎ話の一部をくり抜いてパロディにすると、短くて笑える話になります。
ぜひ、やってみてください。
by リンさん (2017-03-28 08:52) 

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