コロナを知らない子どもたち

「大人って、いつも同じ話をするよね」
「あー、するする。あなたが生まれたときは大変だったのよ～って、その話ばっかり」
「そうそう、コロナ禍だったから、誰も病院に来れなくてひとりで産んだって話」
「うん。入院中も心細かったって話」
「あのときの子が、もう１４歳だなんて、って言いながら涙ぐむんだ」
「あー、うちも同じ」
「田舎のおばあちゃんにやっと会わせたのは２年後だった、とかね」
「あと、旅行に行けなかったとか、パパが家で仕事していてウザかったとか」
「そうそう、ママたちが集まるとその話ばっかり」
「コロナを知らないあなたたちは幸せなのよ～って、必ず言うよね」
「そりゃ知らないよね。赤ちゃんだったんだから」

「あとさ、先生も何かにつけてコロナ持ち出すよね」
「ああ、修学旅行も遠足も行けなかった話ね」
「卒業式や入学式が普通に出来るのはありがたいことだって言うけどさ、普通じゃないのがわからないもん。何をありがたがればいいわけ？」
「でもさ、バンドのライブやコンサートも中止になったって話だよ」
「それはちょっとキツイね」
「それでかな。うちのママ、今ライブ行きまくってるよ」


「こら、君たちいつまでも喋ってないで帰りなさい」
「あ、ヤバい。先生だ」
「みんな近づきすぎだぞ。密だぞ。離れなさい」
「出たよ。密！口癖か」
「ほら、帰りなさい。昇降口で消毒するんだぞ」
「はあい。先生さようなら」


「あーあ、密ってなんだよ」
「しょうがないよ。もう癖になってるんだ。うちのパパもたまに言うもん」
「あれ、前歩いてるの、ガリ勉くんじゃない？」
「本当だ。おおいガリくん、本読みながら歩くと車に轢かれるよ」
「ああ君たち、今帰り？」
「何読んでるの？」
「受験に出そうなワードを暗記してたんだ」
「どんな単語？」
「ソーシャルディスタンス、クラスター、三密、人流、アマビエ、不織布、アベノマスク」
「アベノマスク、家にあるかも」
「うちにもあるよ」
「そんなのテストに出る？」
「ソーシャル……なんだっけ？」
「ゴホ、ゴホ。風邪かな。あれ？みんなどうしたの？急に距離とって」
「あっ、つい。誰かが咳したら２メートル離れるように親に言われてるから」
「そう！それがソーシャルディスタンス！」
「そっか～」
あははははは

こんな日が、必ず来るよ＾＾

コメント 8

そうですね、コロナ禍を笑い話、懐かしい話にできる日は、きっと来る。
そしてウクライナのことも、きっと。
by しろまめ (2022-02-26 16:19) 

こういう時代、絶対にきやすよね〜
やはりタイトルは、「戦争を知らない子供達」からきているのでやしょうか？
by ぼんぼちぼちぼち (2022-02-27 08:16) 

リンさんさん　こんにちは
コロナのことも、なかなかの物語にしてしまうのですね。感心させられました。まだまだコロナが続くので現実の話になりそうです。
by SORI (2022-02-27 13:28) 

こういう日が早く来てほしいですね。
これは14年後ですか。コロナ禍はまだ「現代」なんですね。
阪神大震災から27年。私は被災者で、
https://blog.goo.ne.jp/totuzen703/d/20180117
あの大震災はまだ「現代」です。ところが若い人たちは「歴史」なんですね。コロナ禍もいずれ「歴史」になるでしょう。
by 雫石鉄也 (2022-02-28 13:27) 

＜しろまめさん＞
ありがとうございます。
コロナに戦争。本当に暗いニュースばかりですね。
平和ボケと言われても、やはり「昔のこと」として話せる日が来て欲しいです。
by リンさん (2022-03-02 11:05) 

＜ぼんぼちぼちぼちさん＞
ありがとうございます。
そうです。戦争を知らない子供たち」から付けたタイトルです。
戦前戦後みたいに、コロナ前コロナ後と言われる日が来るような気がします。
by リンさん (2022-03-02 11:06) 

＜SORIさん＞
ありがとうございます。
もう２年ですからね。そろそろ収まって欲しいです。
完全になくなることはなくても、治療薬が簡単に手に入るような時代が来て欲しいです。
by リンさん (2022-03-02 11:09) 

＜雫石鉄也さん＞
ありがとうございます。
２７年ですね。大変でしたね。
私は被災者ではないけれど、テレビで見たあの光景は忘れられません。
あの震災を見てから地震保険に加入して、東日本大震災の時にずいぶんと助かりました。
歴史になっても語り継ぐことが、自分の身を助けることにもなるんですね。
by リンさん (2022-03-02 11:14)