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運命の初夢 [男と女ストーリー]

初夢を見た。
夢の中に、見知らぬ女性が出て来た。
顔はぼんやりしているけれど、会ったことのない女性だ。

数日後、同僚の中村にその話をした。
「単なる夢だから普通は気にしないんだけどさ、初夢だから気になって」
「ふうん。初夢には意味があるって言うもんな。おまえさ、占いとか信じる?例えば血液型占いとか」
「信じないよ。おれ、B型だから、どうせ良いこと言われないし」
「あっ、おまえB型か。まあ、信じる信じないは別として、夢占いをしてみないか。知り合いに当たるって有名な占い師がいるんだ」
「えー、そういうのって高いだろ」
「店を構えてるわけじゃないんだ。だから知り合いしか見ない。連絡とってやるから、会ってみろよ」

中村に言われて、会うことにした。
何しろ中村は、会社でいちばん信用できる男だ。
仕事はできる、家庭を大事にする、先輩にも後輩にも好かれている。

週末、指定された喫茶店に行くと、奥の席に、髪の長い黒いワンピースの女性がいた。
僕に気づいた女性は、黒い瞳で僕をじっと見て会釈した。
「中村さんの紹介ですね。どうぞお座りください」
かなりの美人だ。ぼくはすっかり見とれてしまった。

「それは、運命ですね」
彼女が突然言った。
「運命? 夢に出て来た女性が、ということですか? 僕の顔を見ただけで分かるんですか?」
女性は、何故かうつむきながら頬を赤くした。

「実は、私も初夢を見たんです。見知らぬ男性が出てきました」
「あっ、そうなんですか」
「ええ、それで、あなたを見たときハッとしました。私の夢に出て来た男性が、あなただったからです」
「えっ」
そう言われてみたら、僕の夢に出てきた女性は、彼女だった気がする。
こらは、運命以外の何ものでもないだろう。


3か月後、僕と彼女は結婚した。
初めて会った日、彼女と僕は結ばれて、彼女の中に新しい命が芽生えた。
時間なんか関係ないんだ。運命だったんだ。

「おめでとう」と中村がお祝いしてくれた。
「中村君のおかげだよ。出会って2か月半で妊娠を告げられた時は驚いたけどさ、これも運命だったんだな」
「運命か」
中村は、嬉しそうにビールを飲んだ。
自分のことみたいに喜んでくれて、本当にいいやつだ。

「本当に運命だな。おまえが俺と同じB型だったことが」
「ん? どういう意味?」
「いや、特に意味はないよ。いい家庭を築いてくれ」
中村が僕の手を握った。痛い。力強すぎ。
まったく、熱くていいやつだな。

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たまきち

読み直してしまいました。
これをもとにドラマが出来ますね。
by たまきち (2023-01-16 05:30) 

青山実花

托卵、という事ですよね^^;
生まれてきた子は、
大きくなるにつれ、
中村クンに似てくるという^^;
by 青山実花 (2023-01-17 06:51) 

ぼんぼちぼちぼち

わあ、オチが思いっきりシニカルでいいでやすね〜
by ぼんぼちぼちぼち (2023-01-18 10:04) 

静謐な一日

僕の初夢は支離滅裂でしたが、起きてみるとすっかり内容を忘れていました。
しかし何故かちょっとイロっぽかったな、と微かではありますが記憶しております。
by 静謐な一日 (2023-01-19 18:49) 

SORI

リンさんさん おはようございます。
物語の奥深さを感じました。確かに運命てきな偶然の重なりなのかもしれません。
by SORI (2023-01-21 08:19) 

リンさん

<たまきちさん>
ありがとうございます。
怖いドラマになりそうですね^^
by リンさん (2023-01-25 15:15) 

リンさん

<青山実花さん>
ありがとうございます。
血液型が同じでも、DNA鑑定したらアウトですね。
奥さんに似ていることを祈るしかないです。
by リンさん (2023-01-25 15:18) 

リンさん

<ぼんぼちぼちぼちさん>
ありがとうございます。
主人公がまったく気づかないのが悲しいですね。
by リンさん (2023-01-25 15:20) 

リンさん

<静謐な一日さん>
ありがとうございます。
夢って憶えてないですよね。
小説にしたいほど面白い夢でも、まったく思い出せません。
もったいないですね。
by リンさん (2023-01-25 15:25) 

リンさん

<SORIさん>
ありがとうございます。
そうですね。
これもある種の運命ですね^^
by リンさん (2023-01-25 15:26) 

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