チキンの約束 [ファンタジー]
今日はクリスマスなので、ちょっといいお話を…
チキンの約束
今日はクリスマス。
ママさんは朝から大忙し。
え?おいら?おいらはこの家のネコ<コタロウ>だよ。
「ネコの手も借りたい」っていうママさんの隣で、じっと見守っているのにゃ。
さて夕方、ママさんはローストチキンを作ろうとしたけれど、チキンがどこかへ行っちゃった。
「アラ?チキンが消えたわ。コタロウ、あんたまさか食べたりしてないよね」
にゃにゃにゃ~(めっそうもない!)
「おかしいわね~」
**********************
実はおいらは、チキンの行方を知っていた。
あれは数時間前、ママさんがケーキを取りに出かけたときのことだ。
「おい、ニャン公」とおいらを呼ぶ声がした。
見るとテーブルのチキンが、おいらに話しかけていた。
「おれはもうすぐローストチキンになる。
その前に、お前さんに頼みがあるんだ」
「おいらに出来ることニャ?」
「ああ、焼かれる前に、一度でいいからイルミネーションが見てみたい」
「イルミネーション?」
「そうさ、おれたちニワトリは、朝早く起きなきゃならないから、夜の街なんて歩いたこともない。どうせ焼かれてしまうなら、その前に一度だけ、きれいなものを見てみたいんだ」
必ず帰ってくると、チキンは約束した。
だからおいらは、チキンを口にくわえて、街まで連れて行ってあげたんだ。
*****************************
「困ったわね。もう夜になるわ」
ママさん、あいつはきっと帰ってくるって、おいらは信じているよ。
だけど遅いな…帰り道がわからないのかな?
結局ママさんは、パパさんに電話してフライドチキンを買ってきてもらった。
クリスマスの食卓は、楽しく温かく幸せだった。
もちろんおいらも、幸せだったニャ。
****************************
とうとう帰ってこなかったチキンを、ちょっぴり恨みながら寝床についた。
すると真夜中に、窓をたたく音がした。
「だれニャ?」
「おれだよ」
「チキンさんか?」
窓を開けると、そこにチキンの姿はなく、一本の骨がころがっていた。
「チ、チキンさん?骨になっちゃったの?」
「ああ、イルミネーションを見て、帰ろうとしたら、ひとりのホームレスの男に捕まっちまった。そいつは『クリスマスに神様からのプレゼントだ』って大喜びで、仲間を集めてオレを食べたんだ」
「そうだったの…」
「あんたの家の家族には悪いことをしたが、ホームレスの人達は本当に喜んでくれたから、オレはけっこう満足だぜ」
「うん、そうだね。クリスマスはみんなに平等だね」
「ああ、最後にいい思い出が出来たよ。イルミネーションもきれいだった…」
チキンはそう言うと、とうとう力尽きた。
おいらは誰にともなくつぶやいた。
「メリークリスマス」
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今日はクリスマス。
ママさんは朝から大忙し。
え?おいら?おいらはこの家のネコ<コタロウ>だよ。
「ネコの手も借りたい」っていうママさんの隣で、じっと見守っているのにゃ。
さて夕方、ママさんはローストチキンを作ろうとしたけれど、チキンがどこかへ行っちゃった。
「アラ?チキンが消えたわ。コタロウ、あんたまさか食べたりしてないよね」
にゃにゃにゃ~(めっそうもない!)
「おかしいわね~」
**********************
実はおいらは、チキンの行方を知っていた。
あれは数時間前、ママさんがケーキを取りに出かけたときのことだ。
「おい、ニャン公」とおいらを呼ぶ声がした。
見るとテーブルのチキンが、おいらに話しかけていた。
「おれはもうすぐローストチキンになる。
その前に、お前さんに頼みがあるんだ」
「おいらに出来ることニャ?」
「ああ、焼かれる前に、一度でいいからイルミネーションが見てみたい」
「イルミネーション?」
「そうさ、おれたちニワトリは、朝早く起きなきゃならないから、夜の街なんて歩いたこともない。どうせ焼かれてしまうなら、その前に一度だけ、きれいなものを見てみたいんだ」
必ず帰ってくると、チキンは約束した。
だからおいらは、チキンを口にくわえて、街まで連れて行ってあげたんだ。
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「困ったわね。もう夜になるわ」
ママさん、あいつはきっと帰ってくるって、おいらは信じているよ。
だけど遅いな…帰り道がわからないのかな?
結局ママさんは、パパさんに電話してフライドチキンを買ってきてもらった。
クリスマスの食卓は、楽しく温かく幸せだった。
もちろんおいらも、幸せだったニャ。
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とうとう帰ってこなかったチキンを、ちょっぴり恨みながら寝床についた。
すると真夜中に、窓をたたく音がした。
「だれニャ?」
「おれだよ」
「チキンさんか?」
窓を開けると、そこにチキンの姿はなく、一本の骨がころがっていた。
「チ、チキンさん?骨になっちゃったの?」
「ああ、イルミネーションを見て、帰ろうとしたら、ひとりのホームレスの男に捕まっちまった。そいつは『クリスマスに神様からのプレゼントだ』って大喜びで、仲間を集めてオレを食べたんだ」
「そうだったの…」
「あんたの家の家族には悪いことをしたが、ホームレスの人達は本当に喜んでくれたから、オレはけっこう満足だぜ」
「うん、そうだね。クリスマスはみんなに平等だね」
「ああ、最後にいい思い出が出来たよ。イルミネーションもきれいだった…」
チキンはそう言うと、とうとう力尽きた。
おいらは誰にともなくつぶやいた。
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2009-12-24 14:47
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コメント(6)
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チキンちゃん、かわいそうだったにゃん・・・
ネコのコタロウ君、いい味出してますね☆カワユイな♪
コタロウ君に、☆メリークリスマス☆
by りんたまごっち (2009-12-24 18:32)
>おれたちニワトリは、朝早く起きなきゃならないから、
夜の街なんて歩いたこともない。
そうだよねぇ~。v_v 納得しちゃいます。
読み終わったあと、なんだかじ~んとしちゃった^^
*Merry Christmas*
by めりー (2009-12-24 21:53)
せっかくの チキンが・・・
でも 楽しく家族で・・・羨ましい~~
コウタロウになりたい^v^
by しげ (2009-12-26 16:14)
<りんたまごっちさん>
チキンさんも、美味しく食べてもらって幸せだったんでしょうね。
ネコ目線でお話を書くと、とても楽しいんですよ。
<めりーさん>
素敵な感想ありがとうございます。
チキンさん、目がないのにどうやって見たのかな?なんてことは考えないようにします。
<しげさん>
用意したチキンがなくても、この家は幸せだったんでしょうね。
クリスマスっていいですね。
by リンさん (2009-12-27 16:03)
クリスマスっていいなぁ
人を優しい気持ちにしてくれるんですね。
競作もいよいよクリスマスになって、そんなステキな作品が増えてきています。
りんさんのお話を読んで、皮はパリパリ、スパイシーで、お肉はジューシーなローストチキンを頬張りたくなりました。
僕の吐き出す毒も浄化されちまいそうです(笑)
by 矢菱虎犇 (2010-12-24 03:06)
<矢菱さん>
こちらにもコメント、ありがとうございます。
チキン食べましたか?
最近はケンタッキーに追われているけど、ローストチキンも美味しいですよね。
by リンさん (2010-12-25 13:53)