ジャンヌダルクのように [ファンタジー]
サイトーさんのブログで、こんなお誘いがありました。
絵コンテ作家、ハラミツタさんのイラストにお話を付けませんか?というものです。
それが、この絵
素敵な絵ですよね。
絵コンテ作家とは、よくわかりませんが、このままアニメになりそうな躍動感。
想像力がわいてきました。
そこで、こんな話を書いてみました。絵のイメージを壊さなければいいのですが…。
サイトーさんのブログはこちらです。みなさんもいかがです?
http://blog.so-net.ne.jp/takeaction/2011-06-30
<<ジャンヌダルクのように>>
わたしは妖精なの。
名前はあるけど、人間の言葉にすると発音が難しいから名のれないわ。
そんなわたしに、人間の名前を付けてくれた少年がいるの。
森の家を抜け出して、草原に遊びに行った日のことよ。
初めて会ったとき、少年はまだ幼くて母親と一緒に草原に来ていたの。
少年はわたしを見つけて、母親に聞いたの。
「お母さん、これはなあに?」
母親はチラッとわたしを見て、「トンボでしょ」って言ったの。
失礼しちゃうわ。いくらわたしに羽根があるからって、昆虫扱いはないわ。
だけど少年が、わたしをじっと見て言ってくれたの。
「トンボじゃないよね。君、ジャンヌダルクみたいだね」
ジャンヌダルクが何者か知らなかったけれど、わたしは嬉しかったわ。
だって少年は、それからわたしを「ジャンヌ」って呼んでくれたのよ。
少年は毎日草原にやってきたわ。
わたしは彼の肩に座っていっしょに夕陽をながめたの。
少年は、読んだばかりの本の話を聞かせてくれたわ。
キュリー夫人だったり、エジソンだったり、ベートーベンだったり。
伝記を読むのが好きだったみたい。わたしもたくさんの偉人の名前を覚えたわ。
いちばん好きなのは、やっぱりジャンヌダルクだわ。
そのころ、わたしたちの森にリゾートホテルが出来て、妖精たちは住家を追われたの。
仲間はみんな空へ帰ってしまったけれど、わたしは帰らなかった。
だって、少年と離れるのが嫌だったから。
ふたりで夕陽をながめる時間が、なにより幸せだったからよ。
だけど、幸せは続かなかったわ。少年は成長してしまったの。
エジソンやベートーベンの本が、太宰治や村上春樹に変わり、やがて草原に来なくなってしまった。
仕方のないことよ。
少年は、大人になったのよ。
わたしはひとりで夕陽をながめた。
強く生きるわ。ジャンヌダルクのようにね。
どれだけの月日が流れたかしら。
草原に、1軒の家が建ったの。
煉瓦の壁にオレンジの屋根。きれいな芝生が敷かれ、可愛い花壇が作られた。
もうここには住めないわ。
ここは人間の家だもの。
花の蜜を少しいただいて、空へ帰ろうと思ったの。
そのとき、家の中から小さな女の子が出て来たわ。
女の子はわたしを見つけて母親に聞いたの。
「ママ、これはなあに?」
母親はわたしの羽根だけを見て「トンボでしょ」と言ったわ。
やれやれ、ホントに失礼しちゃう…と思ったら、あとから出てきた父親が言ったの。
「トンボじゃないよ。その子はジャンヌだ」
優しい笑顔の父親は、あの時の少年だったの。
少年は、大人になって父親になったのね。
わたしは、今もここに住んでいるの。
女の子が、読んだばかりの白雪姫の話をしてくれている。
たどたどしい優しい声が、わたしの耳を満たしていくわ。
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絵コンテ作家、ハラミツタさんのイラストにお話を付けませんか?というものです。
それが、この絵
素敵な絵ですよね。
絵コンテ作家とは、よくわかりませんが、このままアニメになりそうな躍動感。
想像力がわいてきました。
そこで、こんな話を書いてみました。絵のイメージを壊さなければいいのですが…。
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<<ジャンヌダルクのように>>
わたしは妖精なの。
名前はあるけど、人間の言葉にすると発音が難しいから名のれないわ。
そんなわたしに、人間の名前を付けてくれた少年がいるの。
森の家を抜け出して、草原に遊びに行った日のことよ。
初めて会ったとき、少年はまだ幼くて母親と一緒に草原に来ていたの。
少年はわたしを見つけて、母親に聞いたの。
「お母さん、これはなあに?」
母親はチラッとわたしを見て、「トンボでしょ」って言ったの。
失礼しちゃうわ。いくらわたしに羽根があるからって、昆虫扱いはないわ。
だけど少年が、わたしをじっと見て言ってくれたの。
「トンボじゃないよね。君、ジャンヌダルクみたいだね」
ジャンヌダルクが何者か知らなかったけれど、わたしは嬉しかったわ。
だって少年は、それからわたしを「ジャンヌ」って呼んでくれたのよ。
少年は毎日草原にやってきたわ。
わたしは彼の肩に座っていっしょに夕陽をながめたの。
少年は、読んだばかりの本の話を聞かせてくれたわ。
キュリー夫人だったり、エジソンだったり、ベートーベンだったり。
伝記を読むのが好きだったみたい。わたしもたくさんの偉人の名前を覚えたわ。
いちばん好きなのは、やっぱりジャンヌダルクだわ。
そのころ、わたしたちの森にリゾートホテルが出来て、妖精たちは住家を追われたの。
仲間はみんな空へ帰ってしまったけれど、わたしは帰らなかった。
だって、少年と離れるのが嫌だったから。
ふたりで夕陽をながめる時間が、なにより幸せだったからよ。
だけど、幸せは続かなかったわ。少年は成長してしまったの。
エジソンやベートーベンの本が、太宰治や村上春樹に変わり、やがて草原に来なくなってしまった。
仕方のないことよ。
少年は、大人になったのよ。
わたしはひとりで夕陽をながめた。
強く生きるわ。ジャンヌダルクのようにね。
どれだけの月日が流れたかしら。
草原に、1軒の家が建ったの。
煉瓦の壁にオレンジの屋根。きれいな芝生が敷かれ、可愛い花壇が作られた。
もうここには住めないわ。
ここは人間の家だもの。
花の蜜を少しいただいて、空へ帰ろうと思ったの。
そのとき、家の中から小さな女の子が出て来たわ。
女の子はわたしを見つけて母親に聞いたの。
「ママ、これはなあに?」
母親はわたしの羽根だけを見て「トンボでしょ」と言ったわ。
やれやれ、ホントに失礼しちゃう…と思ったら、あとから出てきた父親が言ったの。
「トンボじゃないよ。その子はジャンヌだ」
優しい笑顔の父親は、あの時の少年だったの。
少年は、大人になって父親になったのね。
わたしは、今もここに住んでいるの。
女の子が、読んだばかりの白雪姫の話をしてくれている。
たどたどしい優しい声が、わたしの耳を満たしていくわ。
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2011-07-07 17:36
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コメント(18)
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1枚の絵コンテにお話をつける。ステキですね。
りんさんが、なぜジャンヌダルクを思いついたのか絵を見てわかりました。
絵からは迫力と躍動感が伝わってきました。
私は、すぐ朗読と動画にしたくなってしまいます。ほぼ病気ですね。(笑)
大人には、見えない妖精が、キレイな心の少年には見えたのですね。
父親になっても、ジャンヌが見えたのは、感動的でした。
by haru (2011-07-07 19:21)
絵や、音楽ってのは、創作意欲を掻き立てられますね。
印象的な絵を観たら、お話しがピン!と浮かんできます。
自分に合った音楽を聴くと、それはそれでお話ができた気分になるんです。
背中に羽根が生えた人間の背中の構造ってどうなってんでしょうね?
やっぱ、肩甲骨のとこがグワッてなるんでしょうか?
知りたい・・・・・・。
by ヴァッキーノ (2011-07-07 21:13)
りんさんらしいキュートなお話ですね~
「よっ、りんさん、待ってましたぁ!」って声を上げたくなるみたいな、あったかい文章。
絵もファンタジーの本のイラストって感じで素敵です。
いやぁ、やっぱり肩甲骨の辺りの生々しい接合部分ってのは、ボカシかモザイクでお願いしたいかなぁ・・・って誰にコメントしてんだっ???
失礼しましたぁ(全力逃走)
by 矢菱虎犇 (2011-07-07 21:44)
お久しぶりです。
絵からの連想、楽しいですよね。・・・・ジャンヌが見える子ども。
何だか最近妖精という語を聞くと「借り暮らしのアリエッティ」を思い出すんですが。
結局映画は見てないんですが、あのくらいの大きさなのかなあ。
しかし、妖精って長生きなんですね。
羽根は妖精でも人でも一生懸命服の中に折りたたんで、
ちょっと苦労していると素敵です。(あれ、話がずれてるような
by 愛輝 (2011-07-08 00:33)
りんさんらしい 優しいお話ですね。
少年が妖精を捕まえようとしなかったのが印象的です。
人が壊し続ける自然。
自然との共存。
なんだか難しい問題も感じられて、「ジャンヌ」という名前も立ち向かうイメージで。
一枚の絵からいろんなことを感じ取る感性がすごいですね。(^-^)
by もぐら (2011-07-08 16:13)
ハラミツタさんの絵に素敵な物語を付けてくださりありがとうございます。
子供時代を思い起こさせる佳作ですね。ちょっと童心に帰ることができました。
リンさんの記事を、さっそくブログで紹介させていただきました。
自分も話は考えています。
ちょっとシュールで、最後は希望に満ちて……という予定です。
あとは書く時間だけなんですけどね。
(それがなかなか……(汗))
by サイトー (2011-07-08 22:24)
りんさん、「蜘蛛の糸」朗読させて頂きましたよ。さきほどUPいたしました。
下手は我慢して下さいね。(笑ってごまかす。。。)
リンクも貼らせて頂きましたのでヨロシクです。
by haru (2011-07-08 23:03)
こんなお話し好きです^^♪
by ケリー (2011-07-09 09:24)
<haruさん>
ありがとうございます。
そうなんです。強い女性のイメージだったんですが、ひとりっきりなので、そのへんからイメージしました。
haruさんは動画や朗読が出来るからすごいですね。
by リンさん (2011-07-09 13:45)
<ヴァッキーノさん>
ヴァッキーノさんも、イメージが浮かんだらぜひ書いてみてください。
え?肩甲骨がグワっと??
そのイメージはちょっと想像を絶しますね(笑)
by リンさん (2011-07-09 13:49)
<矢菱さん>
ありがとうございます。
素敵なイラストなので、ハッピーエンドにしました。
そうですね。肩甲骨のあたりはボカシで…。それも変ですね^^
矢菱さんもイメージが浮かんだらぜひ…^^
by リンさん (2011-07-09 13:51)
<愛輝さん>
妖精と少年…といえばアリエッティですね。
わたしもちょっと思いました。
こっちの妖精さんのほうが、ちょっと気が強いかな。
羽根を服の中に折りたたんでるところを、想像しちゃいました。
可愛いかも^^
by リンさん (2011-07-09 13:54)
<もぐらさん>
ありがとうございます。
少年は、ちょうどジャンヌダルクを読んでいたのかもしれませんね。
だから好きになって毎日会いに来たのかも。
優しい人に出会えて、妖精はラッキーでしたね。
by リンさん (2011-07-09 13:57)
<サイトーさん>
ありがとうございます。
絵にお話を付けるのは初めてだったので、みなさんの感想を読むまではドキドキでした。
イメージと違ったらどうしよう…とか。
喜んでいただけて良かったです。ホッ^^
紹介ありがとうございます。
サイトーさんのお話も楽しみにしています。
by リンさん (2011-07-09 14:00)
<haruさん>
ありがとうございます。
さっそく聴きにいきました。
ちょっと怖くて悲しい感じがよく出ていました。
全然下手じゃないです。感激です^^
by リンさん (2011-07-09 14:01)
<ケリーさん>
ありがとうございます。
嬉しいです。
また遊びに来てください。
by リンさん (2011-07-09 14:02)
おぉ~。。。
サイトーさんのブログで初めて見たときから
素敵な絵だなぁって思ってたんですけど
こんな物語があったなんて。o(;△;)o ウルウル・・・
後味の良い作品ですね。
読後感がとてもいいです。
さっすが、リンさん!!!
暖かい気持ちになりました。
トンボじゃない。。。んですね。←これっ、なぜか気に入りました♪
そうそう、ジャンヌダルク!!!
この絵のイメージどおり。。。
とっても楽しみました。ありがとっ♪
by 春待ち りこ (2011-07-09 20:40)
<りこさん>
ありがとうございます。
りこさんも書いてみませんか?
羽根だけ見るとトンボみたいに見えちゃいますよね。
大人には余裕がないから、ちゃんと見ないのかもしれませんね。
やっぱり、りこさんもジャンヌダルクをイメージしましたか?
カッコいいですよね。この女の子。
by リンさん (2011-07-11 10:40)