完璧ロボット [SF]
彼にリリーを紹介された。あまりの美しさに嫉妬した。
嫉妬するなんて可笑しい。リリーはロボットだ。
彼が最近雇った秘書ロボット。体にぴったりフィットしたスーツは、彼の好みだ。
「ハジメマシテ、奥様」
リリーは45度のお辞儀をした。
「まだ奥様じゃないわ。結婚するのは1か月後よ」
「シツレイシマシタ」とはにかむ表情は、まるで人間みたいだ。
「リリーはとても優秀なロボットなんだ。仕事はもちろん、ゴルフも料理もプロ級だ」
「そう…。ねえ、リリーが優秀なのはわかったけど、どうしてプライベートの食事にまで連れてくるの?」
「食事中に仕事の電話があったら困るだろう。リリーなら適確に処理してくれるよ」
リリーは姿勢よく椅子に座り、人形のようにじっとしていた。
決して私たちの会話の邪魔をしない。
2件ほど仕事の電話が入り、リリーが速やかにそれを処理した。
最初は気になったが、しょせん機械だ。そのうち気にならなくなり、私たちは楽しく食事を終えた。
「ねえ、あなたのマンションに行ってもいい?」
「もちろんいいよ。もうすぐ一緒に暮らす部屋だ」
彼の家は一等地の高級マンション。125階の大きな窓からは、世界一の夜景が見える。
この暮らしが、もうすぐ手に入る。
彼と一緒に、スペースシャトルみたいなエレベーターに乗り込む。
「さあ、入って」
彼が開けた扉に、リリーも一緒に入ってきた。
「ちょっと、どうしてリリーも一緒なの?」
「仕事もプライベートも、リリーがスケジュール管理をしてるんだ。いないと困るよ」
リリーは、慣れた手つきでコーヒーマシンを動かして、美味しいカプチーノを淹れた。
「美味いだろう。リリーは何をやっても完璧さ」
彼が言うとおり、リリーは言われたことを完璧にこなし、決して邪魔をしない。
それならば、従順で優秀なメイドだと思えばいい。私の暮らしも楽になる。
「リリー、今日はもう休んでいいよ」
「ワカリマシタ」
リリーは45度のお辞儀をして、部屋を出て行った。
やっと二人きりになれた。
「リリーは何でも出来るのね」
「ああ、最高の秘書ロボットだ。彼女はすべてにおいて完璧さ」
「ねえ、私今日、泊まってもいい?」
「もちろんいいよ。僕たちのために、大きなベッドを買ったんだ」
「まあ、素敵だわ」
彼にエスコートされて寝室に行くと、大きくて素敵なベッドが真ん中にあった。
「どう?特注で作らせたんだ。いいだろう?」
「え…ええ…。とても素敵。だけど、だけど…、どうしてリリーが寝てるの?」
シルクのシーツにくるまって、リリーが真ん中に寝ていた。
「言っただろう。リリーは何をやっても完璧なんだ。女性としてもね」
「ひどい!これは私たちのベッドでしょう?」
「うん。僕たちのベッドだよ。君と僕とリリーのね」
私は、彼の頬を思い切り叩いて部屋を出た。
背中でリリーの声がした。
「ヤット、フタリニナレタワネ」
カテゴリーSFにしたけど、これってSFでいいのかしら?
どう思う?不二子ちゃん。
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嫉妬するなんて可笑しい。リリーはロボットだ。
彼が最近雇った秘書ロボット。体にぴったりフィットしたスーツは、彼の好みだ。
「ハジメマシテ、奥様」
リリーは45度のお辞儀をした。
「まだ奥様じゃないわ。結婚するのは1か月後よ」
「シツレイシマシタ」とはにかむ表情は、まるで人間みたいだ。
「リリーはとても優秀なロボットなんだ。仕事はもちろん、ゴルフも料理もプロ級だ」
「そう…。ねえ、リリーが優秀なのはわかったけど、どうしてプライベートの食事にまで連れてくるの?」
「食事中に仕事の電話があったら困るだろう。リリーなら適確に処理してくれるよ」
リリーは姿勢よく椅子に座り、人形のようにじっとしていた。
決して私たちの会話の邪魔をしない。
2件ほど仕事の電話が入り、リリーが速やかにそれを処理した。
最初は気になったが、しょせん機械だ。そのうち気にならなくなり、私たちは楽しく食事を終えた。
「ねえ、あなたのマンションに行ってもいい?」
「もちろんいいよ。もうすぐ一緒に暮らす部屋だ」
彼の家は一等地の高級マンション。125階の大きな窓からは、世界一の夜景が見える。
この暮らしが、もうすぐ手に入る。
彼と一緒に、スペースシャトルみたいなエレベーターに乗り込む。
「さあ、入って」
彼が開けた扉に、リリーも一緒に入ってきた。
「ちょっと、どうしてリリーも一緒なの?」
「仕事もプライベートも、リリーがスケジュール管理をしてるんだ。いないと困るよ」
リリーは、慣れた手つきでコーヒーマシンを動かして、美味しいカプチーノを淹れた。
「美味いだろう。リリーは何をやっても完璧さ」
彼が言うとおり、リリーは言われたことを完璧にこなし、決して邪魔をしない。
それならば、従順で優秀なメイドだと思えばいい。私の暮らしも楽になる。
「リリー、今日はもう休んでいいよ」
「ワカリマシタ」
リリーは45度のお辞儀をして、部屋を出て行った。
やっと二人きりになれた。
「リリーは何でも出来るのね」
「ああ、最高の秘書ロボットだ。彼女はすべてにおいて完璧さ」
「ねえ、私今日、泊まってもいい?」
「もちろんいいよ。僕たちのために、大きなベッドを買ったんだ」
「まあ、素敵だわ」
彼にエスコートされて寝室に行くと、大きくて素敵なベッドが真ん中にあった。
「どう?特注で作らせたんだ。いいだろう?」
「え…ええ…。とても素敵。だけど、だけど…、どうしてリリーが寝てるの?」
シルクのシーツにくるまって、リリーが真ん中に寝ていた。
「言っただろう。リリーは何をやっても完璧なんだ。女性としてもね」
「ひどい!これは私たちのベッドでしょう?」
「うん。僕たちのベッドだよ。君と僕とリリーのね」
私は、彼の頬を思い切り叩いて部屋を出た。
背中でリリーの声がした。
「ヤット、フタリニナレタワネ」
カテゴリーSFにしたけど、これってSFでいいのかしら?
どう思う?不二子ちゃん。
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2012-09-25 18:36
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コメント(8)
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どういう結末になるのかドキドキでしたが…(笑)
リリーはあっちの方も完璧なので、いろいろ指導してくれるのかと思ったんですが、そう来ましたか。
まあ、リリーが妖精ではなくロボットなのでSFですね。
by 海野久実 (2012-09-25 19:36)
フィギュアみたいな異性を求めたら究極、生身の異性に興味をなくしてしまうのかもしれませんね。コワイ、コワイ。
ボクは最近、意外と簡単にロボットの「心」らしきものを作ることができるんじゃないかと思ってるんです。そう考えている学者さんも意外といるみたいですよ。
そうなったらそうなったで、スゴイ未来ですよね。それでも生身の人間を愛せるかなあ。
by 矢菱虎犇 (2012-09-26 04:22)
リリーに嫉妬!わかるわかる!
人間の女性として、「女性型ロボットはある程度ブサイク」を希望します!
by かよ湖 (2012-09-27 01:06)
お久しぶりです。
失礼ですがまとめ読みしました。
みんなよかったけど、この男はあほじゃな(笑)
でも今後こんな男が出てくるかも。
いやいるのか?
愉しませていただきました。
by こっちゃん (2012-09-27 14:42)
<海野久実さん>
SFで良かったですね^^
この男にとって、リリーはあくまでロボットなんですよ。
だから浮気をしている感覚もないし、悪いと思っていないんです。
完璧すぎるロボットだと、そんなこともあるのかな…と思って書いたけど、ないですね、これは^^
by リンさん (2012-09-28 18:10)
A.I<矢菱さん>
この写真はうちにあるフィギアです。
この不二子ちゃんがロボットで動いてしゃべったら、コワイコワイ^^;
ロボットに心が…A.Iっていう映画がありましたね。
ロボットが心を持つと可哀想なことになりますね。
by リンさん (2012-09-28 18:18)
<かよ湖さん>
そうそう。完璧なのは頭脳だけでいいですよね。
見た目はなるべく人間に遠くしてほしいです。
by リンさん (2012-09-28 18:20)
<こっちゃんさん>
お久しぶりです。
まとめて読んでいただいてありがとうございます。
この男にとっては、リリーはあくまでロボット。
罪悪感とかないんですよ。
だけど女心がわからないやつですね。サイテー!
by リンさん (2012-09-28 18:22)