霊感教室 [ホラー]
わたし、気づいちゃった。
この教室には、幽霊がいる。
高校に入学して2日目、クラスの集合写真を撮った時だ。
どう数えても、名簿の数と生徒の数が合わない。
生徒の方が、ひとり多い。
教室に戻って生徒の数を数えても、やっぱりひとり多い。
クラスメイト達の顔を見回す。
いくつかのグループが出来て、はじける笑顔に包まれた教室。
その中で、少女がひとり、誰にも染まらずぼんやり立っている。
青白い顔に長い髪。
窓側に立っているせいか、なんとなく輪郭もぼやけて見える。
わたしと目が合うと、驚いて目を見開いた。
『あなた、私が見えるの?』と言っているような目だ。
もしかして、この少女が幽霊…?
確かめたい。わたしはゆっくり少女に近づいた。
「ねえ、あなたも霊が見えるの?」
突然後ろから声をかけられた。
藤木というネームを付けているポニーテールの女の子だ。
「実は…私も見えてるの」
藤木さんは怯えた声で言った。わたしは頷いた。
「藤木さん、あなたも見えるのね」
やっぱりそうなのね。彼女は、幽霊。
大きな音で扉が開いて、先生が入ってきた。
おしゃべりをしていた生徒たちがいっせいに席に着いた。
わたしも座ろうと思ったら、席がない。
あの黒髪の少女が、わたしの席に座っている。
やだ、こわい。
先生がわたしを見ている。早く座れって言いたそう。
すみません。だけど、座りたくても座れないんです。
そのとき、藤木さんが私の代わりに手を上げてくれた。
「先生、この教室の中に霊がいます」
ざわざわと教室内が揺れた。「何言ってんの?」「頭大丈夫?」
失笑が起こるのも気にせずに、藤木さんは話し続けた。
「私、霊が見えるんです。悪い霊ではないと思うけど、さっきから震えが止まらないんです」
黒髪の少女が戸惑っているのがわかる。
そうよ、あなたの居場所は、ここではないのよ。
黒髪の少女が立ち上がる。ああ、よかった。やっと座れる。
だけど彼女は、ささやくような声で言った。
「先生、わたしにも見えます。さっきまで、わたしと藤木さんの間にいました」
生徒たちが、小さく悲鳴を上げた。
え? なに、なに? 幽霊はあの少女じゃないの?
「じつはみんなに、話しておくことがある」
先生がゆっくり話し始めた。
「君たちと一緒に高校生になるはずだった女生徒が、もう一人いたんだ。しかしその生徒は、入学前に事故で亡くなってしまった」
ざわめく教室。泣き出した女の子もいる。
「きっと、死んだことに気づかずに、この教室に来てしまったのかもしれないね」
先生が、わたしに向かって手を合わせた。
「じつは、先生にも見えるんだ。ショートカットの女生徒の霊が」
藤木さんと黒髪の少女が振り向いてわたしを見た。
手を合わせて合唱。
他の生徒たちも手を合わせて、みんなで合唱。
え…? ショートカットの幽霊って…わたし?
ここに居ちゃいけないのは、わたしだったのね。
ピカピカの制服。
きっと、最期にパパとママが着せてくれたのね。
だからわたし、勘違いしちゃった。
バイバイ、ありがとう。
優しい光に包まれて、わたしはゆっくり天に昇った。
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この教室には、幽霊がいる。
高校に入学して2日目、クラスの集合写真を撮った時だ。
どう数えても、名簿の数と生徒の数が合わない。
生徒の方が、ひとり多い。
教室に戻って生徒の数を数えても、やっぱりひとり多い。
クラスメイト達の顔を見回す。
いくつかのグループが出来て、はじける笑顔に包まれた教室。
その中で、少女がひとり、誰にも染まらずぼんやり立っている。
青白い顔に長い髪。
窓側に立っているせいか、なんとなく輪郭もぼやけて見える。
わたしと目が合うと、驚いて目を見開いた。
『あなた、私が見えるの?』と言っているような目だ。
もしかして、この少女が幽霊…?
確かめたい。わたしはゆっくり少女に近づいた。
「ねえ、あなたも霊が見えるの?」
突然後ろから声をかけられた。
藤木というネームを付けているポニーテールの女の子だ。
「実は…私も見えてるの」
藤木さんは怯えた声で言った。わたしは頷いた。
「藤木さん、あなたも見えるのね」
やっぱりそうなのね。彼女は、幽霊。
大きな音で扉が開いて、先生が入ってきた。
おしゃべりをしていた生徒たちがいっせいに席に着いた。
わたしも座ろうと思ったら、席がない。
あの黒髪の少女が、わたしの席に座っている。
やだ、こわい。
先生がわたしを見ている。早く座れって言いたそう。
すみません。だけど、座りたくても座れないんです。
そのとき、藤木さんが私の代わりに手を上げてくれた。
「先生、この教室の中に霊がいます」
ざわざわと教室内が揺れた。「何言ってんの?」「頭大丈夫?」
失笑が起こるのも気にせずに、藤木さんは話し続けた。
「私、霊が見えるんです。悪い霊ではないと思うけど、さっきから震えが止まらないんです」
黒髪の少女が戸惑っているのがわかる。
そうよ、あなたの居場所は、ここではないのよ。
黒髪の少女が立ち上がる。ああ、よかった。やっと座れる。
だけど彼女は、ささやくような声で言った。
「先生、わたしにも見えます。さっきまで、わたしと藤木さんの間にいました」
生徒たちが、小さく悲鳴を上げた。
え? なに、なに? 幽霊はあの少女じゃないの?
「じつはみんなに、話しておくことがある」
先生がゆっくり話し始めた。
「君たちと一緒に高校生になるはずだった女生徒が、もう一人いたんだ。しかしその生徒は、入学前に事故で亡くなってしまった」
ざわめく教室。泣き出した女の子もいる。
「きっと、死んだことに気づかずに、この教室に来てしまったのかもしれないね」
先生が、わたしに向かって手を合わせた。
「じつは、先生にも見えるんだ。ショートカットの女生徒の霊が」
藤木さんと黒髪の少女が振り向いてわたしを見た。
手を合わせて合唱。
他の生徒たちも手を合わせて、みんなで合唱。
え…? ショートカットの幽霊って…わたし?
ここに居ちゃいけないのは、わたしだったのね。
ピカピカの制服。
きっと、最期にパパとママが着せてくれたのね。
だからわたし、勘違いしちゃった。
バイバイ、ありがとう。
優しい光に包まれて、わたしはゆっくり天に昇った。
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2016-04-23 11:09
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コメント(14)
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割と早めに真相がわかってしまいますね。
お話の持って行き方で最後にどんでん返し、と言う風にできればよかったかも。
>ピカピカの制服。
>きっと、最期にパパとママが着せてくれたのね。
>だからわたし、勘違いしちゃった。
これはとてもいいですね。
迷ってしまう理由にもなっているし、悲しさも感じます。
また、この「ピカピカの制服」を伏線にすればいいかもしれませんね。
by 海野久実 (2016-04-23 11:23)
自分が幽霊だった というのは終わりに近づくまで
わかりませんでした^^; 想像力足りないかな(笑)
by みかん (2016-04-23 21:14)
早い段階で、「わたし」が幽霊であるとうことが、
想像がついたのですが、
>ショートカットの女生徒
>黒髪の少女
>わたし
の3つの表現があるので、
これはすべて同じ人か、それとも別の人なのか、
その点をがょっと疑問でした。
by カーミン (2016-04-24 12:55)
リンさんさん こんにちは
自分が幽霊だったのてすね。でも、みんなが見える幽霊て、すごくないですか。そしてみんなが死んだことを気づかせてくれる暖かいお話でした。
by SORI (2016-04-24 15:13)
あっしも私が幽霊だと早い段階で気づきやした。
ラストは悲しくも爽やかで涙ぐんでしまいやした。
by ぼんぼちぼちぼち (2016-04-25 14:01)
私も海野さんと同じく、早めにネタが判りました。
もうひとひねり欲しかったですね。
>青白い顔に長い髪
このフェイントは、いかにも幽霊っぽく良かったです。
実は、この作品と同じアイデアのハリウッド映画があります。
なんの映画かはネタばれになるからいいません。
ヒント、監督はアメリカ人ですが白人ではありません。主演はブルース・ウィリスです。
by 雫石鉄也 (2016-04-25 14:30)
みんなに気付かれてしまったなぁ。たぶんこれまでのパタァンがあったので想像できちゃったんだね。
by さきしなのてるりん (2016-04-27 12:47)
<海野久実さん>
ありがとうございます。
やっぱりわかってしまいましたか。
制服を伏線に…なるほど、最初にピカピカの新入生であることを強調して、生きているように書けばよかったかな。
なかなか難しいものですね^^
by リンさん (2016-04-27 15:25)
<みかんさん>
ありがとうございます。
みかんさんにはばれてなかった^^
よかった~(笑)
by リンさん (2016-04-27 15:26)
<カーミンさん>
ありがとうございます。
長い黒髪、ポニーテールと、わざわざ入れたのですが、肝心の主人公のショートヘアを最初に入れるべきでした。
紛らわしくてすみません^^
by リンさん (2016-04-27 15:30)
<SORIさん>
ありがとうございます。
同じクラスに3人も、霊感がある人がいるなんて不思議ですね。
穏やかに天に召されてよかったです。
by リンさん (2016-04-27 15:33)
<ぼんぼちぼちぼちさん>
ありがとうございます。
ぼんぼちさんも気づきましたか。
まだまだ修行が足りませんね^^
by リンさん (2016-04-27 15:34)
<雫石鉄也さん>
ありがとうございます。
ああ、その映画、すごく好きな映画です。
そのあとの、ニコール・キッドマン主演のホラー映画も面白かったです。
by リンさん (2016-04-27 15:36)
<さぎしなのてるりんさん>
ありがとうございます。
そうですね。みんなにわかっちゃいました。
小細工しないで書いた方がよかったかもしれませんね^^
by リンさん (2016-04-27 15:39)