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七夕ブルー [コメディー]

織姫ちゃんが遊びに来た。
七夕が近づくと、いつも来るの。
「ことちゃん、私、憂鬱なの。このまま彦星と付き合っていても、将来が不安だわ」
ほら来た。いつもの愚痴が始まった。

「だいたい年に一度しか逢えなくて、恋人って言える?」
やれやれ、自分たちが悪いくせに。
仕事もせずにいちゃついていたから離ればなれにされたんでしょう。

「ねえ、ことちゃん、彦星ってちょっと頼りないと思わない? 去年も一昨年も、デートのプランは私が考えたの。ノープランで逢いに来るなんて男としてどうなの?」
織姫ちゃんが我儘だからでしょう。彦星君は優しいからあんたに合わせているのよ。

「プレゼントはいつも花束。花を贈れば女は喜ぶと思っているのね」
織姫ちゃんってぜいたく。花をもらって嬉しくない女はいないわよ。それに、自分だっていつもプレゼントは手編みのマフラーじゃないの。季節感ゼロだわ。

「ねえ、ことちゃん、私って彦星以外の男と付き合ったことないじゃない。一度他の男と付き合ってみようかな」
出た!二股宣言。

「合コンやろうよ。宇宙飛行士なんかどうかな。宇宙船で天の川なんて、ひとっ跳びじゃない?」
無理だよ。人間にとって星なんて研究対象。恋愛対象になるわけないでしょ。

「あ~あ、明日は七夕か。面倒くさいな。ばっくれちゃおうかな」
織姫ちゃん、あんたの話聞いてる方が面倒くさいわ。
そろそろ〆るか。

「織姫ちゃん、あたしが代わりに行ってあげようか」
「え??? ことちゃんが、私の代わりに?」
「うん。あたし、彦星君のこと嫌いじゃないわ。花束も欲しいわ」
「いや、それはちょっと。ことちゃんも忙しいのに悪いわ。それに彦星はやっぱり私じゃないと」
「そんなことないわ。彦星君もあんがい織姫ちゃんに飽きてるかも」
「やめてよ。彦星はずっとずっと死ぬまで私が好きなのよ」
「でも、織姫ちゃんは逢いたくないんでしょう?」
「逢いたいに決まってるじゃん。ことちゃんのいじわる」
「じゃあ早く帰って、明日のためにお肌の手入れでもしたら?」
「言われなくてもそうするわよ。ふん、ことちゃんなんか、もう絶交よ」

やれやれ、やっと帰った。
絶交とか言って、来年また来るんでしょう。
ああ、うらやましい。

<一口メモ>
織姫は、こと座のなかで一番輝く星(ベガ)です。
こと座のことちゃんは、いつも織姫ちゃんを見守っているんです。
ちなみに彦星は、わし座の中で一番輝く星(アルタイル)です。
七夕の夜に、逢えるかな~。

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まるこ

おはようございます。

なんだかんだ言いつつ織姫はひこ星の事が
大好きなんだなーって言うのが伝わってきて、
ニマニマしながらも読みました(^w^)

ワタシの地域は晴天です。
今夜、ひこ星と織姫は再会出来そうです(^^)
by まるこ (2016-07-07 09:10) 

リンさん

<まるこさん>
ありがとうございます。
私のところも晴れてました。
なんだかんだ言いながら、きっといちゃいちゃしたと思います^^
by リンさん (2016-07-09 10:18) 

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