チューリップとパンジー [ファンタジー]
ぽかぽかの春です。
花壇には、赤いチューリップと黄色いパンジーが仲良く並んでいます。
『いいお天気ね。パンジーさん』
『気持ちがいいわね。チューリップさん』
ニコニコと笑いあっています。
しかし、その心の中は・・・・・
『パンジーはいいわね。大地に守られて安定しているわ。それに比べて細くてのっぽな私は、少しの風でゆらゆらしちゃう。パンジーが羨ましいわ』
『チューリップはいいな。すらりと背が高くて。きっと私たちよりいい景色を見ているはずよ。ああ、チューリップが羨ましい』
ジョーロを持ったおじさんがやってきて、花壇に水をかけました。
もちろんおじさんは、まんべんなく平等に水をかけています。
しかし・・・・・
『おじさんったら、パンジーにばかり水をあげているわ。きっとあちらの方が可愛いのね。そりゃあそうよ。私たちよりずっと長く咲いているんだもの。愛着があるのね。だからって、えこひいきはダメよね』
『おじさんがチューリップを見る目が、私たちを見るときと違っているの。何だか愛おしそうに見るのよ。私なんか冬の寒い時から咲いているのに、チューリップが咲き始めてから、おじさんは変わってしまったわ。ひどい話よ』
ランドセルを背負った女の子が通りかかりました。
「おじさん、きれいなお花ね」
もちろん女の子は、チューリップもパンジーも同じくらいにきれいだと思いました。
しかし・・・・・・
『この女の子、パンジーばっかり見てるわ。可愛いものね。女の子は可愛いものが好きだもの。帽子もランドセルも黄色だし、きっとパンジーが好きなのね』
『この女の子、チューリップばっかり見てる。春の花といえばチューリップだもんね。どうせ学校へ行ったら歌を歌うんでしょ。さいた、さいた、チューリップの花が…ってね』
『ねえ、ちょっと君たち』
近くにいた草が話しかけてきました。
『君たちはいいよね』
『何がいいの?』
チューリップとパンジーが問いかけましたが、草は答える前にスポンと根っこごと引き抜かれてしまいました。
「雑草が出てきたな」とおじさん。
「おじさん、ここにも草があるよ。あ、ここにも」と女の子。
次々に抜かれていく雑草たちを見て、チューリップとパンジーは顔を見合わせました。
『ねえ、パンジーさん、私たち、けっこう幸せかも』
『ええ、私も今、同じことを考えていたわ。チューリップさん』
瀕死状態の草が、よれよれになりながら言いました。
『な、そうだろう』
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花壇には、赤いチューリップと黄色いパンジーが仲良く並んでいます。
『いいお天気ね。パンジーさん』
『気持ちがいいわね。チューリップさん』
ニコニコと笑いあっています。
しかし、その心の中は・・・・・
『パンジーはいいわね。大地に守られて安定しているわ。それに比べて細くてのっぽな私は、少しの風でゆらゆらしちゃう。パンジーが羨ましいわ』
『チューリップはいいな。すらりと背が高くて。きっと私たちよりいい景色を見ているはずよ。ああ、チューリップが羨ましい』
ジョーロを持ったおじさんがやってきて、花壇に水をかけました。
もちろんおじさんは、まんべんなく平等に水をかけています。
しかし・・・・・
『おじさんったら、パンジーにばかり水をあげているわ。きっとあちらの方が可愛いのね。そりゃあそうよ。私たちよりずっと長く咲いているんだもの。愛着があるのね。だからって、えこひいきはダメよね』
『おじさんがチューリップを見る目が、私たちを見るときと違っているの。何だか愛おしそうに見るのよ。私なんか冬の寒い時から咲いているのに、チューリップが咲き始めてから、おじさんは変わってしまったわ。ひどい話よ』
ランドセルを背負った女の子が通りかかりました。
「おじさん、きれいなお花ね」
もちろん女の子は、チューリップもパンジーも同じくらいにきれいだと思いました。
しかし・・・・・・
『この女の子、パンジーばっかり見てるわ。可愛いものね。女の子は可愛いものが好きだもの。帽子もランドセルも黄色だし、きっとパンジーが好きなのね』
『この女の子、チューリップばっかり見てる。春の花といえばチューリップだもんね。どうせ学校へ行ったら歌を歌うんでしょ。さいた、さいた、チューリップの花が…ってね』
『ねえ、ちょっと君たち』
近くにいた草が話しかけてきました。
『君たちはいいよね』
『何がいいの?』
チューリップとパンジーが問いかけましたが、草は答える前にスポンと根っこごと引き抜かれてしまいました。
「雑草が出てきたな」とおじさん。
「おじさん、ここにも草があるよ。あ、ここにも」と女の子。
次々に抜かれていく雑草たちを見て、チューリップとパンジーは顔を見合わせました。
『ねえ、パンジーさん、私たち、けっこう幸せかも』
『ええ、私も今、同じことを考えていたわ。チューリップさん』
瀕死状態の草が、よれよれになりながら言いました。
『な、そうだろう』
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2019-04-18 18:00
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コメント(8)
不幸な境遇の者を見て初めて自分の幸せを知る・・・・・あるあるでやすね(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2019-04-18 19:03)
人間のみがってが、よく判るショートショートですね。
雑草という植物はないのです。
人間にとって無用な植物が雑草といわれているのです。その植物が食べられるのであれば、雑草とはいわれません。よもぎやせりは雑草ではないでしょう。
by 雫石鉄也 (2019-04-19 14:34)
リンさん、こんばんは。
なんだか雑草処理できなくなってしまいました^^;
皆んなそれぞれ綺麗で、可愛いです。
もちろん雑草と呼ばれる草たちも
何か役目があるはず!!
雑草を食べ歩く芸能人、居たし(笑)
by まるこ (2019-04-20 21:10)
<ぼんぼちぼちぼちさん>
ありがとうございます。
自分がいかに恵まれているか、本人は意外とわからないものかもしれませんね。
by リンさん (2019-04-24 18:22)
<雫石鉄也さん>
ありがとうございます。
おっしゃる通りですね。
草にも名前があるのに、勝手に生えると抜かれてしまいます。
可哀想だけど、私も抜いています。
時には除草剤まで。。。
それでもまた生えるから、草は強いです!
by リンさん (2019-04-24 18:25)
<まるこさん>
ありがとうございます。
可愛い花を咲かせる草もあるけど、あまり背が高くなると見通しが悪くなって危険ですよね。
やっぱり草刈りも必要なものなのでしょう。
コンクリートのヒビから顔を出す草は、なぜか応援したくなりますが。
by リンさん (2019-04-24 18:30)
リンさんさん おはようございます。
なんと雑草さんが出てきて状況が一変です。なかなかの名作だと思います。
by SORI (2019-04-25 08:06)
<SORIさん>
ありがとうございます。
みんな花はきれいって思うけど、雑草はすぐに抜かれて可哀想ですね。と言いながら、私も抜いてしまいますが^^
by リンさん (2019-04-27 10:22)