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オオカミ少年のエイプリルフール [名作パロディー]

小さな村に住む羊飼いの少年は、いつもウソばかりついていました。
「オオカミがくるぞ~」
いつもそんなことを言って、住人たちを困らせていました。

麗らかな春の牧場。
住人たちは静かです。
少年は、今日が4月1日であることに気が付きました。

「あ、今日はエイプリルフールじゃないか。
いつものウソではおもしろくない。もっと大きなウソをついてやろう」

と思いつきました。そして少年は大きな声で

「宇宙人が来たぞ~!宇宙人が侵略して来たぞ~!」

と叫びました。
静かだった村は、俄かにざわめき始め、数人の男が少年に近付いてきました。

(うそだよ~ん^^やーい、騙された)という言葉を用意していた少年でしたが、男たちに腕をつかまれ、声も出せないまま森に連れて行かれました。

「イタタタ…はなしてよ~。冗談だよぅ~」
と泣きそうな少年に向かって、男のひとりが言いました。

「おまえ、なぜ我々の正体を知っている?」
「は?」
「そうだ。我々は地球の調査にやってきた。うまく地球人に化けたと思っていたのに、正体を見破ったのはおまえが初めてだ」

よく見ると、男たちには表情がありませんでした。
ただ鋭い視線を少年に向けているだけでした。

「ねえ、おじさんたち、今日がエイプリルフールだからボクを騙してるんでしょう。ねえ、そうでしょう」
「エイプリルフール?何のことだ。おい、こいつの記憶を抹消しろ」

わかりました、と男たちは少年を羽交い絞めして森の奥にいつのまにか現れた得体の知れない建物の中に連れて行きました。

少年は、わけのわからない機械で全ての記憶を消された後、かわりに“自分は働き者で正直者の羊飼いだ”という記憶を埋め込まれました。

それからの少年は、ウソをつくこともなく、真面目な羊飼いになり、みんなの人気者になったそうです。

めでたし、めでたし。
(…それで、地球侵略はどうなったの?)

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めりー

結果オーライで
このほうが 幸せかもね^^
by めりー (2010-04-02 20:23) 

愛輝

うーん、
不幸中の幸いというか、幸い中の不幸というか。
何ともいえない後味ですねw
by 愛輝 (2010-04-04 00:59) 

リンさん

<めりーさん>
そうね。
少年がうそつきでオオカミに食べられるよりは、いいかな?
by リンさん (2010-04-05 12:00) 

リンさん

<愛輝さん>
めでたし、めでたし…でいいのか?って私も思いました(笑)
by リンさん (2010-04-05 12:03) 

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