ゴールデンウィークの試練 [男と女ストーリー]
U子は、会社でいちばんの美人だ。ブランドの服に身を包み、すらりと伸びた長い足にハイヒール。
誰もが彼女に恋をした。
恋多きU子だったが、数人の男と付き合うものの、なぜか結婚までには至らなかった。
どんなにうまくいっていても、ゴールデンウィークを過ぎる頃に決まって破局するという、法則のようなものがあった。
だからゴールデンウィークを過ぎても、U子と恋人でいられた男が、彼女と結婚できる…そんな噂が流れていた。
そして、今年のU子の恋人は、この僕だ。
もうすぐやってくるゴールデンウィークを、何とか乗り切ろうと、計画を立てていた。
すると彼女から、「この連休は、私の実家に一緒に行って」と誘われた。
彼女の家族に会う。これは、一気に結婚まで進むのか?
ウキウキした気持ちで、U子といっしょに彼女の実家に行った。
のどかな田園地帯が、U子の生まれた町だ。
両親も快く僕を迎えてくれた。和やかな夕食。
少し故郷訛りで話す彼女も、かわいくて好きだった。
明日はドライブにでも行こうか、それとものんびりU子の故郷を散策しようか、などと考えながら眠りについた。
翌朝、まだ早い時間にU子に起こされた。
U子は、いつになくカジュアルな服装で立っていた。
「今朝はずいぶんカジュアルだね。まあ、そんな君も素敵だけど。それにしても、つばの大きな帽子だね。まるで…」
まるで農作業のおばさんみたいだ…という言葉を飲み込んだ。あまりに失礼じゃないか。U子はただ日焼けをしたくないのだ。美貌をいつまでも保つ為にちゃんと努力をしているんだ。
「出かけるわよ」
「どこに?」
「いいから、これに着替えて」
U子に出された服は、毛玉の付いたスエットだった。
いったいどこへ行くんだろう。
U子の後をついて行くと、どこまでも広い田んぼについた。
のどかな風景だ。
「ここで、何をするの?」
僕が聞くと、U子は振り向いて言った。
「田植えに決まってるべ」
「た、田植え?」
それから僕は、U子と、U子の両親の厳しい指導の下、3日間田植えを手伝わされた。
慣れない仕事で、肩も腰も痛くて、もうくたくただった。
ただ、昼飯や、夕飯はいつになくおいしく感じて、いつもの倍は食べたと思う。
夜は死んだように眠り、不思議と心は充実していた。
「今度の男はどうだべ?」
「ちょっと体力なくてヒョロヒョロしてるけど、まあ、使えるんでないか」
「去年の男は途中で帰っちまうし、おととしはぎっくり腰で役に立たなかったしなあ」
「じゃあ、今年の男はまあ合格ってことでいいけ?」
「ああ、オレが跡取りとしてしっかり鍛えてやっから安心しろ」
「よがった~。ご飯を残さず食べるところが、気に入ってたんだわ」
…なんて話が、ふすまの向こうで交わされていたなんて、まるで知らずに僕は夢中で眠っていた。
そして僕は、初めてU子とゴールデンウィークを乗り切った男として、社内で伝説になった。
今?今はもちろん、立派な農業の後継者として、修行中さ。
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誰もが彼女に恋をした。
恋多きU子だったが、数人の男と付き合うものの、なぜか結婚までには至らなかった。
どんなにうまくいっていても、ゴールデンウィークを過ぎる頃に決まって破局するという、法則のようなものがあった。
だからゴールデンウィークを過ぎても、U子と恋人でいられた男が、彼女と結婚できる…そんな噂が流れていた。
そして、今年のU子の恋人は、この僕だ。
もうすぐやってくるゴールデンウィークを、何とか乗り切ろうと、計画を立てていた。
すると彼女から、「この連休は、私の実家に一緒に行って」と誘われた。
彼女の家族に会う。これは、一気に結婚まで進むのか?
ウキウキした気持ちで、U子といっしょに彼女の実家に行った。
のどかな田園地帯が、U子の生まれた町だ。
両親も快く僕を迎えてくれた。和やかな夕食。
少し故郷訛りで話す彼女も、かわいくて好きだった。
明日はドライブにでも行こうか、それとものんびりU子の故郷を散策しようか、などと考えながら眠りについた。
翌朝、まだ早い時間にU子に起こされた。
U子は、いつになくカジュアルな服装で立っていた。
「今朝はずいぶんカジュアルだね。まあ、そんな君も素敵だけど。それにしても、つばの大きな帽子だね。まるで…」
まるで農作業のおばさんみたいだ…という言葉を飲み込んだ。あまりに失礼じゃないか。U子はただ日焼けをしたくないのだ。美貌をいつまでも保つ為にちゃんと努力をしているんだ。
「出かけるわよ」
「どこに?」
「いいから、これに着替えて」
U子に出された服は、毛玉の付いたスエットだった。
いったいどこへ行くんだろう。
U子の後をついて行くと、どこまでも広い田んぼについた。
のどかな風景だ。
「ここで、何をするの?」
僕が聞くと、U子は振り向いて言った。
「田植えに決まってるべ」
「た、田植え?」
それから僕は、U子と、U子の両親の厳しい指導の下、3日間田植えを手伝わされた。
慣れない仕事で、肩も腰も痛くて、もうくたくただった。
ただ、昼飯や、夕飯はいつになくおいしく感じて、いつもの倍は食べたと思う。
夜は死んだように眠り、不思議と心は充実していた。
「今度の男はどうだべ?」
「ちょっと体力なくてヒョロヒョロしてるけど、まあ、使えるんでないか」
「去年の男は途中で帰っちまうし、おととしはぎっくり腰で役に立たなかったしなあ」
「じゃあ、今年の男はまあ合格ってことでいいけ?」
「ああ、オレが跡取りとしてしっかり鍛えてやっから安心しろ」
「よがった~。ご飯を残さず食べるところが、気に入ってたんだわ」
…なんて話が、ふすまの向こうで交わされていたなんて、まるで知らずに僕は夢中で眠っていた。
そして僕は、初めてU子とゴールデンウィークを乗り切った男として、社内で伝説になった。
今?今はもちろん、立派な農業の後継者として、修行中さ。
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2010-04-29 17:58
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コメント(10)
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何ものにも打ち勝ってみせる、いい話だw
好きなら音を上げちゃ駄目ですよね。
by 愛輝 (2010-05-02 20:14)
<愛輝さん>
思いつきで書いたお話ですが、褒めていただいて嬉しいです^^v
U子さんの策略に、まんまと引っかかったかわいそうな僕…では終わらせたくなかったので、ハッピーエンドにしてみました。
by リンさん (2010-05-04 16:21)
田植え(笑)
U子さんのために頑張る僕、かっこいいですね☆
by シュシュ (2010-05-07 22:09)
>もうくたくただった。
ただ、昼飯や、夕飯はいつになくおいしく感じて、
この充実感が大事ですね^^v
by めりー (2010-05-08 11:11)
< シュシュさん>
まさか田植えとは!ですね。(笑)
愛は強いですね。
by リンさん (2010-05-09 22:06)
<めりーさん>
そうそう、若いうちはくたくたになるまで働くことも大切ですね。
ご飯がおいしいのはいいことです。
by リンさん (2010-05-09 22:08)
またまたいつものお願いです。
こちらの作品 さとる文庫で読ませていただきたいのです。
よろしくお願いいたします。m(__)m
by もぐら (2012-05-03 10:50)
<もぐらさん>
もちろんオッケーです^^
よろしくお願いします。
昨日は娘にパソコン独占されてたから、お返事遅くなっちゃいましたね^^
いつもありがとう♪
by リンさん (2012-05-04 06:40)
いつもありがとうございます。(^^)
よろしくお願いいたします。m(__)m
by もぐら (2012-05-04 13:08)
ありがとうございます。
さとる文庫 配信しました。
今回は故郷訛りが・・・( ;^^)ヘ..
どうでしょうか。
心配ー。
よろしくお願いします。
ありがとうございます。
by もぐら (2012-05-06 12:47)