おしゃべりな家電 [コメディー]
『おい、ババア、お湯が沸いたぞ。茶でも何でも淹れやがれ!』
タネさんは、よいしょと立ち上がり、
「わかったよ。うるさいねえ」とポットに向かって話しかけた。
一人暮らしのお年寄りが寂しくないように開発された、おしゃべり家電。
わたしは、それが有効に使われているかどうかを調査に来ていた。
「あたしが淋しくないようにって、息子夫婦が揃えてくれたんだよ。
だけどさあ、淋しいどころの騒ぎじゃないよ。
朝からうるさいの何のって」
そう言いながらも、タネさんは嬉しそうだった。
『洗濯終わったっつってんだろうがよ!早く干しやがれ!』
『おいおい、冷蔵庫のドア開けっ放しじゃねえか。食い物腐っちまうぞ!』
こうしているあいだにも、洗濯機や冷蔵庫が次々呼びかける。
「あの、タネさん、家電にこんな乱暴な言い方されて、頭にきませんか?」
「ああ、これね。いろんなパターンがあるんだよ。
最初は孫バージョンにしてたんだよ。
『おばあちゃん、お湯が沸いたよ』なんて可愛い声で言われるとさ、孫に会いたくなって悲しくて仕方ない。
それで次は、メイドバージョンにしたのさ。
『おくさま、お湯が沸きましたわ。ローズマリーのお茶はいかが?』なんて言うんだよ。
背中がかゆくなっちまうよ。
それで結局、この 『べらんめえバージョン』 に落ち着いたのさ」
「なるほど」
『10時になったって言ってんだろうが、このやろう』
と時計が言い、
『電源入れっぱなしにしてんじゃねえよ、このババア』
とマッサージチェアが言った。
そのたび、タネさんは嬉しそうに答えている。
ふ~ん…
「おい、ババア、お茶菓子くらい出しやがれ!」
今言ったのはわたしだ。
…ちょっと言ってみた。
タネさんは烈火のごとく怒り出し、わたしは追い出された。
「あたしにそんな口聞けるのは、家電だけなんだよ!」
なるほど。うまく使いこなしているようだ。
さて、帰ろう…
『鍵閉めろよ、このババア』
とわたしの背中で、セキュリティーが言った。
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タネさんは、よいしょと立ち上がり、
「わかったよ。うるさいねえ」とポットに向かって話しかけた。
一人暮らしのお年寄りが寂しくないように開発された、おしゃべり家電。
わたしは、それが有効に使われているかどうかを調査に来ていた。
「あたしが淋しくないようにって、息子夫婦が揃えてくれたんだよ。
だけどさあ、淋しいどころの騒ぎじゃないよ。
朝からうるさいの何のって」
そう言いながらも、タネさんは嬉しそうだった。
『洗濯終わったっつってんだろうがよ!早く干しやがれ!』
『おいおい、冷蔵庫のドア開けっ放しじゃねえか。食い物腐っちまうぞ!』
こうしているあいだにも、洗濯機や冷蔵庫が次々呼びかける。
「あの、タネさん、家電にこんな乱暴な言い方されて、頭にきませんか?」
「ああ、これね。いろんなパターンがあるんだよ。
最初は孫バージョンにしてたんだよ。
『おばあちゃん、お湯が沸いたよ』なんて可愛い声で言われるとさ、孫に会いたくなって悲しくて仕方ない。
それで次は、メイドバージョンにしたのさ。
『おくさま、お湯が沸きましたわ。ローズマリーのお茶はいかが?』なんて言うんだよ。
背中がかゆくなっちまうよ。
それで結局、この 『べらんめえバージョン』 に落ち着いたのさ」
「なるほど」
『10時になったって言ってんだろうが、このやろう』
と時計が言い、
『電源入れっぱなしにしてんじゃねえよ、このババア』
とマッサージチェアが言った。
そのたび、タネさんは嬉しそうに答えている。
ふ~ん…
「おい、ババア、お茶菓子くらい出しやがれ!」
今言ったのはわたしだ。
…ちょっと言ってみた。
タネさんは烈火のごとく怒り出し、わたしは追い出された。
「あたしにそんな口聞けるのは、家電だけなんだよ!」
なるほど。うまく使いこなしているようだ。
さて、帰ろう…
『鍵閉めろよ、このババア』
とわたしの背中で、セキュリティーが言った。
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2010-05-27 17:22
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コメント(15)
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あははと笑ってるけど私もタネさんみたいになるな、きっと。
いや、もうなってるかも。
私の携帯 かかってくると
「おい!電話!電話かかってるぞ!出ないのかよ!」って言うし、
メールがきたら
「おい!なんかメールが来てるぞ!」って言うんです。
ほかにもアラームとか いろいろ言うように設定してあります。
でも携帯あまりしゃべらないですけどね・・・。サビシー(・_・、)
by もぐら (2010-05-27 18:49)
なんて高性能!
・・・・・・でも妙に寂しい気もします。
前も思ったんですけど、選挙の話だとか、
リアルでちょっと恐いですねーw
by 愛輝 (2010-05-27 18:49)
おしゃべり家電で老化防止よいアイデアかもしれませんね。
by ナビパ (2010-05-27 21:08)
ババアかどうか、それは他人が決めること
だと思ってるんですけど、機械がある程度、統計的に算出した結果
ババアって判断したのなら、諦めるしかないですね(笑)
ボクは煙草を吸わないんですけど、年齢認証を顔で判断する
煙草の自販機がありまして、それで、試しに実験してみたら
認識してもらえませんでした!
ボクはまだまだ少年なんですね、・・・・・・心が。
by ヴァッキーノ (2010-05-27 21:27)
ア~これも面白いですねぇ!
孫の声にすると寂しくなっちゃうっていう気持ち、わかるなぁ
日頃ゾンザイな感じでも肝心の所で優しくされると年寄りは弱いです。
・・・なんてこと言っちゃう僕は相当年寄りですね。
とどのつまり、僕はツンデレ系の家電が好みかもしれません(笑)
by 矢菱虎犇 (2010-05-28 00:34)
<もぐらさん>
へえ、もぐらさんのケイタイ面白い!!
「はいはい」って思わず返事しちゃいそう。
by リンさん (2010-05-28 16:46)
<愛輝さん>
確かに、ちょっと淋しいですよね。
人間より家電の存在の方が大きいなんて。
でも、本当にこんな家電が出来るかもしれませんよ。
by リンさん (2010-05-28 16:48)
<ナビパさん>
誰かと話すという事は、老化防止になりますね。
できれば人間がいいんでしょうけどね…
by リンさん (2010-05-28 16:50)
<ヴァッキーノさん>
ババアって言っていい人と悪い人がいますよね。
毒マムシさんなら許せる…とか。
家電に言われるのは私は嫌ですけどね。
ヴァッキーノさん、若いんですね。たばこ吸わないのに試すところも、なんか笑える…
by リンさん (2010-05-28 16:54)
<矢菱さん>
ありがとうございます。
ツンデレ系家電、いいですね~。
なんか人間の方が気をつかいそうです。
by リンさん (2010-05-28 16:57)
炊飯器くん、かわいい~^^*
画像もお話を盛り上げていますね!
by めりー (2010-05-28 20:34)
< めりーさん>
ありがとうございます。
ちょっと遊んでみました。
目と口をつけたら、本当にポットがしゃべりそうな気がしました。
by リンさん (2010-05-30 13:47)
りんさん またまた お願いです。
コチラの作品 さとる文庫で読ませていただきたいのです。
よろしくお願いします。
by もぐら (2011-05-12 11:49)
<もぐらさん>
もちろんOKです。
これ、朗読すると面白そうですね。
ぜひぜひ、聞いてみたいです。
よろしくお願いしま~す♪
by リンさん (2011-05-12 13:25)
ありがとうございます。
遅くなりました。
さとる文庫 配信しました。
またまた 私にぴったりの「べらんめぇ調」でしたがいかがでしょうか。
さとる文庫を始めた頃 この作品を何度も練習したんです。
なつかしいです。
ありがとうございます。
by もぐら (2011-05-15 13:12)