一週間 [お話]
月曜日… 今日も部屋から出なかった。
もう数ヶ月、僕は自分の部屋から出ていない。
火曜日… 今日も部屋から出なかった。
家族は勝手に団欒している。僕には関係ない。
水曜日… 今日も部屋から出なかった。
居心地のよいこの部屋にいる限り、
誰も僕を傷つけない。
木曜日… 今日も部屋から出なかった。
生きてる意味って何だろう。
金曜日… 今日も部屋から出なかった。
土曜日… 朝から家族揃って出かけるようだ。
もちろん僕は行かない。
親の愛情を独り占めして育った妹が、僕の部屋の窓を見上げた。
妹は道に落ちていた蝉の抜け殻を拾うと、
僕の窓に思い切り投げつけた。
…抜け殻。どうせそうだよ。
日曜日… 今日も部屋から出なかった。
明日から、また新しい一週間が始まる。
僕にとっては、無意味な一週間だ。
***
月曜日… 僕は、木の幹にへばりついていた。
美味くもない樹液を吸って、ジージーと耳障りな声で鳴いていた。
僕は、蝉になっていた。
火曜日… 他の蝉は、林の中を自由に飛んでいるのに、
僕は飛ぶことが出来ない。
水曜日… 今日も同じ木で、同じように鳴いている。
木曜日… 今日も同じ木で、同じように鳴いている。
金曜日… 僕はふと思った。もうすぐ死ぬ。
蝉は7日間しか生きられないことを、今さらながら気づいた。
土曜日… 同じ一生なら、他の蝉のように飛んでみようか。
日曜日… 頼りない羽根で、僕は飛んだ。
案外と簡単だった。
だんだん意識が遠くなった。それでも僕は飛び続けた。
***
月曜日… 目覚めると、自分の部屋にいた。
網戸に張り付いた蝉が、朝から唸るように鳴いていた。
命の限り鳴いていた。
「おまえが夢を見させたのか?」
僕は部屋を出た。
明るい光の先で僕を迎えたのは、家族の笑顔と、妹が投げた蝉の抜け殻だった。
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もう数ヶ月、僕は自分の部屋から出ていない。
火曜日… 今日も部屋から出なかった。
家族は勝手に団欒している。僕には関係ない。
水曜日… 今日も部屋から出なかった。
居心地のよいこの部屋にいる限り、
誰も僕を傷つけない。
木曜日… 今日も部屋から出なかった。
生きてる意味って何だろう。
金曜日… 今日も部屋から出なかった。
土曜日… 朝から家族揃って出かけるようだ。
もちろん僕は行かない。
親の愛情を独り占めして育った妹が、僕の部屋の窓を見上げた。
妹は道に落ちていた蝉の抜け殻を拾うと、
僕の窓に思い切り投げつけた。
…抜け殻。どうせそうだよ。
日曜日… 今日も部屋から出なかった。
明日から、また新しい一週間が始まる。
僕にとっては、無意味な一週間だ。
***
月曜日… 僕は、木の幹にへばりついていた。
美味くもない樹液を吸って、ジージーと耳障りな声で鳴いていた。
僕は、蝉になっていた。
火曜日… 他の蝉は、林の中を自由に飛んでいるのに、
僕は飛ぶことが出来ない。
水曜日… 今日も同じ木で、同じように鳴いている。
木曜日… 今日も同じ木で、同じように鳴いている。
金曜日… 僕はふと思った。もうすぐ死ぬ。
蝉は7日間しか生きられないことを、今さらながら気づいた。
土曜日… 同じ一生なら、他の蝉のように飛んでみようか。
日曜日… 頼りない羽根で、僕は飛んだ。
案外と簡単だった。
だんだん意識が遠くなった。それでも僕は飛び続けた。
***
月曜日… 目覚めると、自分の部屋にいた。
網戸に張り付いた蝉が、朝から唸るように鳴いていた。
命の限り鳴いていた。
「おまえが夢を見させたのか?」
僕は部屋を出た。
明るい光の先で僕を迎えたのは、家族の笑顔と、妹が投げた蝉の抜け殻だった。
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2010-08-06 23:45
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コメント(10)
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ああ引きこもりさんのお話。
・・・・・・ええ、蝉!?
蝉にも引きこもりになれるの? と焦っていたら。
こういうことだったんですねw
妹、性格悪! とかも思ったんですが、今にして思えば良かったんですね。
飛べてよかったです。
格好悪くても手を離さないと、ですね。
しかし、一週間分の夢を見れるって凄いなあ。
私はいつも夢を忘れてしまって、見た実感はずっとないです。
by 愛輝 (2010-08-07 00:06)
月曜日はナンタラタララ~♪
チュラチュラチュララ~
・・・な構成ですねぇ!
残された時間がわずかだから蝉は一生懸命鳴いているのでしょうか。
部屋にこもっている人間も自分の寿命がはっきりわかったら、その残された時間で何をなすべきか考えるかもしれませんねぇ
by 矢菱虎犇 (2010-08-07 02:17)
<愛輝さん>
そうなんです。
きっと蝉が「もっと有意義に生きろ」と言ってたんですね。
私も、夢はほとんど憶えてないです。
夢中で寝てます(笑)
by リンさん (2010-08-07 17:29)
<矢菱さん>
そういえばあの歌も「1週間」っていうタイトルでしたね…^^
この時期は、死んでる蝉をあちこちで見ますね。
たかが1週間、だけど蝉にしてみれば一生なんですね。
by リンさん (2010-08-07 17:37)
とってもすばらしいです!
詩のリズム感もあって!
それでいて 生きることの意味を考えさせてくれます。
多くの人に読んで欲しいな・・そう思える作品です☆ (^-^)
by めりー (2010-08-07 21:55)
人間にとっては、一週間だけど、蝉にしてみたら一生ですもんね。
ってことは、1日がだいたい10年くらいの長さに感じてるのかなあ。
人間よりももっとずっと長生きする生物から見たら、
人間もかなり短い一生をセカセカやってるように見えるかもしれませんよね。
よーし、ボクも網戸にへばりつこっと!
by ヴァッキーノ (2010-08-08 10:19)
<めりーさん>
ありがとうございます。
生きる意味を考えてくれる人が、ひとりでもいたらいいなと思って書きました。うれしいです(^0^)
by リンさん (2010-08-09 10:45)
<ヴァッキーノさん>
蝉は土の中に何年もいるんですよね。
全部ひっくるめて一生なんですかね。
確かに亀とか長生きですものね。
友達が亀を飼っていますが、
「わたしより長生きするかも」って言ってました(笑)
by リンさん (2010-08-09 10:54)
考えさせられるお話ですね。
私が蝉だったら 子供に捕まってしまって「オラ!放さんかい!」
とかわめいてそう。(ーー;)
思い切ってすることって やってみると案外簡単だったりするんですよね。
がんばらなくちゃ!と思いました。
by もぐら (2010-08-11 16:06)
<もぐらさん>
そうですね。1歩踏み出す勇気があれば。
人生に無駄な時間はない、とは言うものの、後悔はしたくないですもんね^^;
by リンさん (2010-08-12 19:10)