ハロウィン仮装コンテスト：りんのショートストーリー：SSブログ

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ハロウィン仮装コンテスト　[ファンタジー] [編集]

ハロウィンの仮装コンテスト

「６番、秋山カエデ。えーっと、魔界から来ました。ビビビデバビデ…あれ？ビビデバブデ…」
ああ、緊張して失敗しちゃった。
お母さん、ごめんなさい。きっと、優勝は無理だ。
せっかくステキな衣装を作ってくれたのに。
古着のワンピースをアレンジしたドレス、手作りのマントと帽子。
帽子のふちとマントには、紫色のビロードのリボン。
うちはお父さんがいなくて貧乏だから、お金をかけずに工夫してくれた。
「お母さん、あたし絶対優勝して、賞品のお米もらってくるね」
「楽しみだわ。じゃあお米買わなくていいかしら」
夕べそんな約束をしたのに、これじゃあお米は無理だ。

きっと優勝は１２番のあの子だ。
すごい変装。だって本物の魔女みたいだもん。
「１２番、魔界から修行にきました。名前はリリ。修行っていうのは困っている人間を助けてあげること。これがけっこう難しいの。だって魔法を使っちゃいけないんだもの」
会場から笑いが起こった。
すごい。ステージに上がっても緊張しないで笑いを取るなんて。
堂々としている。きっとあの子が優勝だ。
お母さんごめんね。おかずが少ない時、自分の分をあたしのお皿に載せてくれたよね。
あたし役に立てなくてごめんね。

「優勝は、１２番のリリちゃんです。おめでとう！」
ああ、やっぱりあの子だ。
「賞品のお米５キロです。しっかり持ってね」
いいなあ。あたし、お米もらうつもりで大きなリュック持ってきたのにな。
あれ？１２番の子、ちっとも嬉しそうじゃないわ。
「重い！何これ？こんなもの持ってたら飛べないわ」
また笑いが起こった。魔女になりきっているのね。すごいわ。
あたしは、参加賞のお菓子を受け取って、とぼとぼとステージから下りた。

「ねえ、ちょっとあなた。へんな呪文を唱えてたあなた」
後ろから呼ばれて振り向くと、１２番の女の子が立っていた。
お米を引きずっている。
「食べ物を引きずっちゃダメよ」
「食べ物？これ食べ物なの？」
「そうだよ。すごく美味しいコシヒカリよ」
「わたしには、あなたが持っているお菓子の方がよっぽど美味しそうに見えるわ」
「ところで、何か用？」
「何だか困っているように見えたから声をかけたの。ほら、わたし修行中だから」
この人、まだ魔女になりきっている。徹底してるな。見習わなきゃ。
「別に困っているわけじゃないわ。ただ、お母さんにお米を持って帰る約束をしたから、ちょっとガッカリしているだけよ」
「じゃああなたは、このバカみたいに重い物が欲しいのね。うん、あげるわ」
「え？優勝もしていないのにもらえないよ」
「じゃあ、そのお菓子と交換。それならいいでしょう？」
「…本当にいいの？」
「もちろん。わたしもこれで魔界に帰れるし」

お母さん、そんなわけで、１２番の子がお米をくれたの。
すごくステキな子だった。
最後まで魔女になりきっていたのよ。おうちはどこって聞いたら、空の上って答えたの。
面白いでしょ。
「その子、本物の魔女だったんじゃないの？」
え？やっぱりお母さんもそう思う？

ハロウィンの夜、美味しいお米でごはんを炊いた。
あの子も、空の上でお菓子を食べているのかな。

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2013-10-27 21:02 nice!(10) コメント(6) トラックバック(0)

nice! 10

リンさん、こんにちは！
かわいくて、ジーンとくるお話でした。
リンさんのお話はどれも根底に愛が感じられ
安心して読めるから好きです☆
by MIHO (2013-10-28 12:43)

なんだか、一冊の童話を読むような感じで、絵を想像しながら読み終わりました。
主人公の名前「秋山カエデ」が秋っぽい（笑）
うーんしかし優勝の商品がお米５キロって。
一体どういう発想なんでしょう？
ハロウィンっぽくなくてそれがかえって面白かったですね。

by 海野久実 (2013-10-29 22:01)