愛をこめたチョコレート [男と女ストーリー]
生まれて初めて出来た彼女と、初めてのバレンタインデート。
だけど彼女は、なぜか不機嫌な顔で座っている。
そして不機嫌な顔のまま、リボンがついた箱を差し出した。
初めての本命チョコが目の前に…。
にやけそうになるのを抑えて、
「あ、そうか。今日バレンタインだったね」
などと、しらじらしいことを言ってみた。彼女はニコリとも笑わない。
「嬉しい?」
「うん、もちろん嬉しいよ」
「298円のコンビニチョコだよ。それでも嬉しい?」
「うん、ふつうに嬉しいけど」
「そこのコンビニでテキトーに買ったチョコだよ。それでも嬉しい?」
…何が言いたいんだろう。ちょっと怖い。
「嬉しいよ」と僕は答えた。
「じゃあ、ここで質問。次のチョコのうち、あなたが欲しいのはどっち?
1番、愛がこもっていない298円のコンビニチョコ。
2番、愛がこもったヤギのフン」
…え?なに、その二択。ヤギのフンよりはコンビニチョコのほうが…。
でも、なぜだろう。コンビニチョコって言ったら怒られそうな気がする。
彼女の目が、「2番だろ、2番」って言っている。
恐る恐る、僕は答えた。
「愛がこもった…ヤギのフン」
彼女が、今日初めて笑った。どうやら正解だったようだ。
**
私、神様も見放すほどの不器用なの。
だけど初めての彼氏だし、初めてのバレンタインだし、チョコを作ることにした。
だけどチョコを刻めば指まで刻むし、湯せんにかければ火傷をするし。
さんざん苦労して作ったチョコを見たパパがひとこと。
「なんだそれ。ヤギのフンを集めて丸めたのか?」
信じられない。食べ物をフンに例えるなんて。
サイテー。むかつく。明日の朝、髪の毛全部抜けろ!
…って呪ってみたけれど、よく見たら確かにヤギのフンだわ。
憂鬱な気持ちで待ち合わせのカフェに向かう。
途中のコンビニで、298円のチョコを買った。ヤギのフンよりマシだもん。
だけど彼が、298円のコンビニチョコをあんまり嬉しがるから、ちょっとフクザツ。
根性がねじ曲がっている私。彼に究極の二択よ。
「じゃあ、ここで質問。次のチョコのうち、あなたが欲しいのはどっち?
1番、愛がこもっていない298円のコンビニチョコ。
2番、愛がこもったヤギのフン」
彼がコンビニチョコって答えたら、パパと同じハゲの呪いをかけてやる。
彼は答えた。
「愛がこもったヤギのフン」
ああ、やっぱり素敵な人。パパと大違い。大好きだわ。
あなたは老人になっても髪はふさふさよ。保証するわ。
私は隠していた手作りチョコを、彼に渡した。
彼は「ありがとう」と言いながら包みを開けて、愛のこもったチョコを愛おしそうに眺めた。
「食べないの?」
「うん…。あのさ、素朴な疑問なんだけど、ヤギのフンって食べられるの?」
「……いいから食え」
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だけど彼女は、なぜか不機嫌な顔で座っている。
そして不機嫌な顔のまま、リボンがついた箱を差し出した。
初めての本命チョコが目の前に…。
にやけそうになるのを抑えて、
「あ、そうか。今日バレンタインだったね」
などと、しらじらしいことを言ってみた。彼女はニコリとも笑わない。
「嬉しい?」
「うん、もちろん嬉しいよ」
「298円のコンビニチョコだよ。それでも嬉しい?」
「うん、ふつうに嬉しいけど」
「そこのコンビニでテキトーに買ったチョコだよ。それでも嬉しい?」
…何が言いたいんだろう。ちょっと怖い。
「嬉しいよ」と僕は答えた。
「じゃあ、ここで質問。次のチョコのうち、あなたが欲しいのはどっち?
1番、愛がこもっていない298円のコンビニチョコ。
2番、愛がこもったヤギのフン」
…え?なに、その二択。ヤギのフンよりはコンビニチョコのほうが…。
でも、なぜだろう。コンビニチョコって言ったら怒られそうな気がする。
彼女の目が、「2番だろ、2番」って言っている。
恐る恐る、僕は答えた。
「愛がこもった…ヤギのフン」
彼女が、今日初めて笑った。どうやら正解だったようだ。
**
私、神様も見放すほどの不器用なの。
だけど初めての彼氏だし、初めてのバレンタインだし、チョコを作ることにした。
だけどチョコを刻めば指まで刻むし、湯せんにかければ火傷をするし。
さんざん苦労して作ったチョコを見たパパがひとこと。
「なんだそれ。ヤギのフンを集めて丸めたのか?」
信じられない。食べ物をフンに例えるなんて。
サイテー。むかつく。明日の朝、髪の毛全部抜けろ!
…って呪ってみたけれど、よく見たら確かにヤギのフンだわ。
憂鬱な気持ちで待ち合わせのカフェに向かう。
途中のコンビニで、298円のチョコを買った。ヤギのフンよりマシだもん。
だけど彼が、298円のコンビニチョコをあんまり嬉しがるから、ちょっとフクザツ。
根性がねじ曲がっている私。彼に究極の二択よ。
「じゃあ、ここで質問。次のチョコのうち、あなたが欲しいのはどっち?
1番、愛がこもっていない298円のコンビニチョコ。
2番、愛がこもったヤギのフン」
彼がコンビニチョコって答えたら、パパと同じハゲの呪いをかけてやる。
彼は答えた。
「愛がこもったヤギのフン」
ああ、やっぱり素敵な人。パパと大違い。大好きだわ。
あなたは老人になっても髪はふさふさよ。保証するわ。
私は隠していた手作りチョコを、彼に渡した。
彼は「ありがとう」と言いながら包みを開けて、愛のこもったチョコを愛おしそうに眺めた。
「食べないの?」
「うん…。あのさ、素朴な疑問なんだけど、ヤギのフンって食べられるの?」
「……いいから食え」
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2015-02-14 10:12
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コメント(12)
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ラストの「いいから食え」って台詞が ぐっと縮まった二人の距離を物語っていて微笑ましいでやす(◎o◎)
by ぼんぼちぼちぼち (2015-02-14 17:32)
ああ、この彼女好きです。
でも料理がちゃんとできるのか、将来がちょっと心配(笑)
>「……いいから食え」
で吹き出してしまいました。
by 海野久実 (2015-02-14 21:55)
可愛い恋人たちですね。
不器用で手造りチョコに四苦八苦したとしても
いくら愛がこもっていると言われても「ヤギのフン」ではね。
でもここがいかにもリンさんらしくて可笑しいです。
ただひたすら彼女を信じ愛する彼に乾杯!!
by dan (2015-02-15 16:19)
リンさんさん おはようございます。
愛がこもったヤギのフンには素敵な話の続きがあったのですね。新鮮な初々しさが伝わってきました。
by SORI (2015-02-16 06:57)
うわっ、いいですね。これ。
これだから、りんさんのショートショートはやめられません。
この彼女、いいこです。こんな彼女で彼は果報者です。
彼女、大切に。
by 雫石鉄也 (2015-02-16 13:57)
ちょいちょい毒を吐くところ 笑っちゃいますね!
やりとりがどんな表情なのか想像して楽しみました(^◇^)
by みかん (2015-02-17 23:12)
<ぼんぼちぼちぼちさん>
ありがとうございます。
食べたら案外おいしいかもしれません^^
by リンさん (2015-02-18 10:41)
<海野久実さん>
ありがとうございます。
この女の子、可愛いですよね。
料理は、作っているうちに上手になるものです。
たぶん…^^;
by リンさん (2015-02-18 10:44)
<danさん>
ありがとうございます。
「ヤギのフンみたいなチョコ」って言えば、まだよかったですね。
「ヤギのフン」って言っちゃったもんね(笑)
そこが狙いなんですけど^^
by リンさん (2015-02-18 10:47)
<SORIさん>
ありがとうございます。
彼側と彼女側でそれぞれ書いたら、面白い話になりました。
書いていても楽しかったです。
by リンさん (2015-02-18 10:49)
<雫石鉄也さん>
ありがとうございます。
こういう女の子を書くのは楽しいです。
雫石さんにも好きになってもらえてよかったです^^
by リンさん (2015-02-18 10:51)
<みかんさん>
ありがとうございます。
こんなふうに飾らずに自分を出せる子っていいですよね。
きっと彼もそこが好きなのかも^^
by リンさん (2015-02-18 10:52)