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GO-TO鬼ヶ島 [コメディー]

どうも。鬼です。そうです。昔話に出てくる角が生えた鬼です。
私たちは昔、人間に退治されました。それ以来、人里離れた小さな島でひっそりと暮らしていたのです。
しかしあるとき、命知らずのユーチューバーがやってきて、私たちにカメラを向けました。
「伝説の鬼ヶ島は実在しました~!本物の鬼がいま~す」
そう言って、私たちの動画をネットで流したのです。

人間たちがうじゃうじゃやってきました。鬼ヶ島行きの定期船まで出る始末です。
私たちは戸惑って怯えました。
何しろ人間は怖いものだと教えられて育ちましたから。
しかし人間は、手土産に酒や食べ物をくれました。
それを目当てに独占インタビューに答える鬼も出てきました。
特に害はないので、これも時代かな~なんて思っていました。

ある日、大企業の営業マンがやってきました。
「この島に、鬼のテーマパークを造りませんか。たくさんの鬼の雇用を確約します。今よりずっと潤った暮らしが出来ますよ」
鬼たちのショータイム、鬼とのふれあいコーナー、インスタ映えする鬼スポット、鬼のコスプレ大会、鬼のジェットコースターなど、いろいろ提案してきました。
島が潤うのはいいことです。
鬼だってオシャレもしたいし、美味しい物も食べたいのです。

2月のある日、企業の重役たちが視察に来ました。
視察といっても家族連れです。妻や子どもや孫までいます。
まるで経費を使って旅行に来ているみたいでした。
本物の鬼に、子どもたちは大興奮。
重役たちも昼から酒を酌み交わし、リラックスムードでした。
ああ、鬼も人間も同じだな、としみじみ思いました。

しかしその夜のことです。
子どもたちがカバンの中から豆を取り出して、いきなり投げつけてきたのです。
「おには~そと」と言いながら、鬼に向かって投げ続けるのです。
大人たちは、止めるどころか笑っています。
「ああ、そうか。今日は節分か」
「本物の鬼に豆をぶつけるなんて、そうそうできるものじゃない」
「どうでしょう、鬼テーマパークで、節分アトラクションを作っては」
「楽しそうだな。早速案を練ろうじゃないか」
「逆オニごっこっていうのも面白くないですか? 人間が鬼をつかまえるんです。捕まえた鬼には豆をぶつけてもいい、とか」
「それなら罰ゲームをさせましょう。バンジージャンプとか」
「いいねえ」

私たちは、恐ろしくなりました。やはり人間は怖いです。
そのままそうっと抜け出して、鬼たちを集め、夜のうちに島を出ました。
重役たちが乗ってきたクルーザーにみんなで乗って、新しい島を目指しました。
今度こそ、誰にも見つからない平和な島で、静かにひっそり暮らしたいものです。
みなさん、どうか私たちを探さないでください。

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