SSブログ

子ネコのメモリー [ファンタジー]

「いい、人間の言うことをよく聞くのよ」
ママがそう言って、僕のからだをなめてくれた。
「いい子にしていたら、人間はいつも優しいわ」
どうしてそんなことを言うのかな。やっぱり僕、どこかにもらわれていくのかな。
そういえばこのまえ、僕たちを見に来た人がいたな。
僕たち5人兄弟を、代わる代わる抱っこして、「うーん」とか唸っていたな。
「この子に決めた」ってその人が言ったとき、ママは少し寂しそうだった。

もうすぐ迎えに来るんだね。あ、車の音が聞こえた。
「逃げちゃおうか」
ママが僕の耳元で言った。
「裏山に逃げたら、きっと見つからないから」
そうだね。それもいいかもね。

だけど、ママが本気じゃないことは、すぐにわかった。
だって外は怖いから行っちゃだめって、いつも言ってるもん。
車に轢かれたり、怖いノラ猫がいるって、いつも言ってるもん。
ママも僕も、外では生きられないってこと、ちゃんとわかるよ。

このまえの人が来た。
「レイちゃん」って僕を呼んだ。
それって僕の名前? そういえば、この家では名前がなかったな。
チビとか、ちっこいのとか呼ばれてた。
「レイちゃん、おいで」
新しい飼い主が僕を抱っこしてカゴに入れたら、ママはもう何も言わなかった。
僕だけが、ニャーニャー鳴いていた。

ママ、新しいおうちは快適だよ。
鳴くとすぐにごはんをくれるんだ。おやつも出るよ。
病院っていうところにも行った。
体重を計って爪も切ったもらったよ。
寝心地のいいお布団もあるよ。

ママ、ごめんね。ママのこと、たぶんもうすぐ忘れるよ。


こうして、レイちゃんはうちの子になりました。

KIMG1095.JPG

レイ(男の子)生後2ヶ月の甘えん坊です

KIMG1097.JPG
よろしくにゃん

にほんブログ村 小説ブログ ショートショートへ
にほんブログ村
nice!(8)  コメント(10)