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サンタクロース宅配便 [ファンタジー]

公園に突然、大きなモミの木が生えた。
「サンタクロースからの贈り物だよ」と町長さんが言った。
みんなでオーナメントを飾り、ピカピカの電飾を付けた。
最後に町長さんが、ひときわ輝く大きな星を天辺に付けた。

「ねえ町長さん、天辺の星は、どうしてあんなに輝いているの?」
「ああ、あれはな、灯台の役割をしているんだよ。どんなに高い空の上からだって、この星が見えるんだ」
「わかった。サンタさんの目印だね」
「まあ、そういうことかな」

子供たちは大さわぎ。
「この公園に、サンタクロースが来るってことじゃないか?」
「きっとそうだ。あの星めがけて来るんだよ」
「なあ、サンタさん、見たくないか?」
「見たい、見たい」
「24日の夜中に、こっそり集まろうぜ」
そしてクリスマスイブの夜、子供たちはそうっとベッドを抜け出して、公園に集まった。
つま先まで凍りそうな夜だけど、子供たちの好奇心は寒さになんか負けない。

午前1時を過ぎたころ、巨大な光が降りてきた。
「サンタクロースが来たぞ」
子供たちが身構えていると、降りてきたのはUFOみたいな大きな飛行船だ。
「サンタって、UFOで来るの?」
「橇じゃないの? トナカイは?」
「鈴の音も聞こえないよ」

船から数人の作業員が下りてきて、ベルトコンベアーで荷物を下ろし始めた。
もっともらしい赤い服を着ているけれど、サンタクロースには見えない。
大きな段ボールが、ツリーの周りに積まれていく。
「あれ、プレゼントかな」
「あの人たち、サンタなの?」
「サンタっていうより、宅配便のお兄ちゃんみたいだ」
「本当だ。運送屋みたいだね」
「想像と違うね」
サンタたちは、荷物を下ろして伝票をチェックすると、再び飛行船に乗り込んだ。
まるで次の配達先に急ぐように、空へと旅立った。

午前2時、「寒い寒い」と言いながら、大人たちがやってきた。
「おお、届いてるぞ、プレゼント。うちのはどれだ」
大人たちは名前を確認して、自分の子供宛のプレゼントを持ち帰った。

「あっ、パパだ」「うちのパパもいる」
「ねえ、あのプレゼントを、今から僕たちの枕元に置くんじゃない?」
「やば! 急いで帰ろう」
子供たちは、忍者のように裏道を抜けて親より早く家に帰った。
そして寝たふりをしながら、親がプレゼントを置いていくのを毛布の隙間からこっそり見ていた。

「やれやれ、すっかり身体が冷えちまった」
「ご苦労さま。去年まではサンタクロースが家まで届けてくれたのにね」
「働き方改革ってやつか?」
「感染症が怖いのかも。ほら、もうご高齢だから」
「ホットウイスキーでも飲んで寝るかな」
「あら、いいわね。チキンが少し残っているわ」

親が部屋を出て行ったあと、子供たちは思う。
「結局、サンタクロースって、いるの? いないの?」

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