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細かいことが気になる「桃太郎」 [名作パロディー]

「おじいちゃん、この本読んで」
「おお、桃太郎か。よし、読んであげよう」
『むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました』

「昔って、どのくらい昔?」
「そうだな。100年……200年くらい前かな」
「ふうん。じゃあ、あるところってどこ?」
「あー、そうだなあ、岡山とか、そのあたり……かな」

『おじいさんは山に芝刈りに、おばあさんは川に洗濯に行きました』

「ちょっとまって。ふたりとも出掛けたの?家を空けて大丈夫? 鍵は掛けた?」
「あー、昔は、鍵なんか掛けなくても大丈夫なんだよ」
「ふうん。平和なんだね。だけどちょっと心配だな」

『おばあさんが川で洗濯をしていると、大きな桃が流れてきました。おばあさんはそれを家に持って帰りました』

「大きいって、どのくらい大きいの?」
「うーん。直径1メートルくらいかな」
「おばあさんは、どうやって持って帰ったの?」
「そりゃあ、両手で抱えて持ち帰ったんだろ」
「洗濯物は? 川に洗濯をしに行ったんだろ。両手で桃を持ったら、洗濯物が持てないよ」
「たしかに。あっ、後で取りに行くんだ。じいさんとばあさんの洗濯物なんか、誰も持って行かないだろう」

『家に帰って桃を切ろうとしたら、中から元気な男の赤ん坊が出てきました。おじいさんとおばあさんは、桃太郎と名付けて大事に育てました』

「赤ん坊が入っていたのか。さぞかし重かっただろうね。で、洗濯物は取りに行った?」
「行ったと思うよ。乾いたかどうかは分からないけどね」

『桃太郎は、あっという間に大きくなって、ある日、鬼ヶ島へ鬼退治に行くことになりました』

「鬼退治?鬼って退治されるような悪いことをしたの?」
「村人の宝を盗んで、鬼ヶ島で悠々自適に暮らしていたんだ」
「ほら見ろ、僕の杞憂が現実になったね」
「杞憂?」
「さっき言ったじゃないか。出掛けるとき、鍵は掛けたのかって。鍵を掛けずに出掛けるから盗まれるんだ。鬼のせいばかりとは言えないね」
「そうだな。戸締りは大事だ」

『桃太郎はサル、イヌ、キジを家来にして、鬼ヶ島に向かいました』

「家来が動物と鳥? 意思の疎通は出来たのかな? あ、出来ない方が都合いいんだ。家来として使いやすいからね」
「そうかもしれんな」

『桃太郎は、見事に鬼を退治して、宝物をごっそり持って家に帰りました。めでたし、めでたし』

「宝物って何?」
「そりゃあ、金銀財宝だろう」
「今は金の相場が高いから、相当なお金になるね。鍵を掛けるくらいじゃだめだね。警備会社に依頼して、セキュリティを強化した方がいいよ」
「ああ、その通りだな」
「それから、村人にお金を返して余ったら、桃太郎は寄付をするべきだと思う」
「寄付? どこへだい?」
「動物愛護団体だよ。このままだと動物虐待で訴えられるよ」
「なるほど」

「おじいちゃん。次はこれ読んで。浦島太郎」
「もう勘弁してくれ」

※「細かいことが気になる浦島太郎」近日公開???

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先日、「林家たい平落語会」に行ってきました。
面白かったです。めっちゃ笑いました。
やっぱり笑いが一番ですね。

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